ベトナムの12歳少女「海外で演奏したい」 邦人商社マンらがユース楽団、日韓ロの団員も

指揮者の後ろでVYOの練習を見守る木ノ下忠宏さん(奥右)=2024年3月、ベトナム・ハノイ(共同)

 ベトナムの小学生や大学生らが所属するベトナムユースオーケストラ(VYO)が首都ハノイを中心にコンサートを開いている。設立したのは現地で長く仕事をする日本人指揮者や商社マンら。両国の外交関係樹立50周年を記念した公演では、世界的指揮者佐渡裕さん率いる小中高生の弦楽団と共に演奏し、友好の架け橋になりつつある。(共同通信=松下圭吾)

 1月、ハノイの音楽ホールで佐渡さんが指揮棒を振ると、VYOと日本のユース弦楽団のメンバーが行進曲「威風堂々」を演奏。はつらつとしたハーモニーが会場を包み、両国の聴衆が惜しみない拍手を送った。

 VYOは大手総合商社・双日の木ノ下忠宏さんとベトナム国立交響楽団(VNSO)の音楽監督兼首席指揮者を務める本名徹次さん、ベトナムの証券会社トップの3人が企画した。ベトナムは経済発展が著しい一方で、音楽を楽しむ心の豊かさに課題があるとの考えで一致。言葉を超えて各国と交流できる人材を育成しようと、2022年に設立した。

 団員はオーディションを勝ち抜いた9~22歳の約90人。ベトナム人が中心だが、日本人や韓国人、ロシア人も在籍している。指揮者は気鋭のベトナム人音楽家で、VNSOの奏者らが講師を務める。2023年には2カ月に1回ほどコンサートを開催。年末には日本とベトナムの文化交流公演に参加し、演奏を披露した。

 コンサートミストレスのチュオン・バオ・アインさん(12)は、各国の団員や木ノ下さんらとの交流で刺激を受けていると強調。将来的には「海外で演奏したい。音楽を通じて各国と交流を深めたい」とほほ笑んだ。

 佐渡さんは「若い世代が楽器を使って自分を表現するのは大きな宝物を手に入れることだ」とVYOの活動の意義を強調。「機会があれば、指揮や指導をしたい」と交流継続に期待を示した。

ベトナムの首都ハノイで、VYOの練習を見つめる指揮者の本名徹次さん(左)=2024年3月(共同)
ベトナム・ハノイ
ベトナムの首都ハノイで、練習後に談笑する木ノ下忠宏さん(右)とVYOのチュオン・バオ・アインさん=2024年3月(共同)
ベトナムの首都ハノイで、VYOや日本の弦楽団の指揮をする佐渡裕さん(中央)=2024年1月(共同)
ベトナムの首都ハノイで、取材に応じる指揮者の佐渡裕さん=2024年1月(共同)

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