【社説】こどもの日 社会の宝、未来につなげ

 2024ひろしまフラワーフェスティバル(FF)が5年ぶりの通常開催となり、広島市の大型連休を彩っている。子どもの笑顔は人々の心を明るくすると改めて思う。きょうは「こどもの日」。子どもが伸び伸びと成長できる環境をつくっていかねばならない。

 人口が減り続け、政府は2030年までを「少子化を反転させるラストチャンス」とする。昨年4月にこども基本法が施行され、こども家庭庁が発足して1年が過ぎた。うたい文句を口先だけでなく政策として実行する時だ。

 こども基本法は、全ての子どもや若者が将来にわたって幸せな生活ができる社会の実現をうたう。子育てに夢を持ち、喜びを感じられる社会をつくることなどを基本理念に盛り込んだ。日本が批准して30年たつ国連の「子どもの権利条約」を土台にした。

 子どもを巡る現状は問題が多い。不登校の小中学生が増え続けている。文部科学省の調査で、22年度は全国で29万9千人と過去最多を更新した。児童生徒が孤立しないよう、居場所や学習の機会を提供しなければならない。いじめの認知件数も10・8%増え68万2千件に上った。必ずしも学校に行く必要がないという認識が広まったことも要因とはいえ、見過ごせる数字ではない。

 貧困率も依然高い。厚生労働省は昨夏、21年の17歳以下の貧困率を11・5%と発表した。中でも、ひとり親世帯は44・5%だった。家族の世話に追われるヤングケアラーの存在も明らかになっている。

 岸田政権は「こども・子育て政策」を主要政策と位置付けている。30年代に入ると若年人口が今より急速に減り、少子化に歯止めがかからなくなるためだ。

 素早い対応が求められる中、少子化対策の財源の柱となる「子ども・子育て支援金」の説明が国会で十分になされていないのは残念だ。公的医療保険料に上乗せする形で幅広い世代に負担を求める制度だが、「実質負担はない」との説明が分かりにくく、野党が批判している。法案は衆院を通過しており、参院で言葉を尽くしてほしい。

 政府は、こども基本法に基づく指針「こども大綱」を昨年末に策定した。6月ごろに実行計画を決める。「こどもまんなか」が、かけ声倒れになってはならない。

 世界に目を向けると、子どもにとってあまりにも過酷な地域がある。イスラエルの攻撃を受けるパレスチナ自治区ガザは人口の半分を子どもが占め、死者は1万2千人を超えるという。国際社会で一刻も早く停戦を実現したい。

 東西を問わず、子どもは社会の宝であり、未来そのものである。子どもを増やすのは社会や経済を維持するためではない。子どもを持ちたい人が安心して子どもをもうけ、育てられる世の中こそが、国民の幸福につながるはずだ。子どもを育てたいと思える社会を築くという点では、世界平和の実現や自然環境の改善なども、広い意味で少子化対策になるだろう。

© 株式会社中国新聞社