【NHKマイルC みどころ】史上空前の豪華メンバーで迎える真のマイル王決定戦

2歳王者ジャンタルマンタル・2歳女王アスコリピチェーノ (C)SANKEI

「雌雄を決する」――

決着を付けるという意味でつかわれる慣用句だが、近年でこの表現が最も当てはまるGⅠレースと言えば、NHKマイルCではないだろうか。

3歳春に開催される芝のマイルGⅠ。かつてはクラシックに出走できない外国産馬のためのレースとして開催され、マル外ダービーと称されたのは今や昔の話。

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ここ数年ではスピード豊かな実力馬たちが集まり、未来の名マイラーを輩出するレースとなっているが、その中でも印象深いのが牡馬と牝馬との直接対決である。

過去10年で179頭が出走した中で牡馬は8勝、牝馬は2勝しているが、2着はともに5回と牡馬と牝馬の差はごくわずか。

牡馬と牝馬で1、2着となった年は5度あるが、そのうち2回はタイム差なしの接戦に。

2021年のNHKマイルCではシュネルマイスターがハナ差でソングラインを下してマイル王に君臨。その後2頭はマイルGⅠで良きライバル関係として競馬界を盛り上げた。

こうした牡馬vs牝馬の最も熱いガチンコバトルが見られるレースとなった近年のNHKマイルC。今年も2歳王者と2歳女王がともにエントリー。真のマイル王の冠を争うことになり、他にも空前の豪華メンバーが集まった。

そんな今年のNHKマイルCの主役はもちろん2歳の王者と女王。まずはジャンタルマンタルから紹介しよう。

アメリカのダートGⅠで2勝を挙げた新種牡馬パレスマリスを父に持っているため、デビュー前は芝よりもダート向きではという評価もあったが、フタを開けてみればパワフルな先行力を武器にしてデビューから堂々の2連勝。

重賞初制覇となったデイリー杯2歳Sでは好位から抜け出して先頭に立つと、2着馬に軽々と2馬身差を付けて勝ち切るなど、素軽いスピードと2歳馬離れしたレースセンスが印象に残った。

そうして迎えた朝日杯FSではどこかフワフワとしている馬体が頼りなげに映ったが、それはレース前まで。

実際に走ると弾むかのようなしなやかなフットワークを見せて他馬を圧倒するというハイパフォーマンスを見せて快勝。文句なしの走りで無敗の2歳王者の座を射止めてみせた。

素軽いスピードに大人びたレース振り、そしてこの完成度の高さを見て誰もが翌春のクラシックでの活躍を期待したが、年明け緒戦の共同通信杯では中団から伸びてくるも先に動いたジャスティンミラノを捕らえられずに2着完敗。

スローな流れが響いたとはいえ、らしくない敗戦は無敗の2歳王者という看板にキズが付くものだった。

叩き2戦目となった皐月賞は共同通信杯と同じ轍は踏まないとばかりにい一度は先頭に立って抜け出すも、残り200mを過ぎたところで失速し、再びジャスティンミラノに屈して3着に。

完璧なタイミングで抜け出して一度は先頭に立つなど、あと少しというところで滑り落ちてしまった皐月賞のタイトル。あの圧倒的な強さを見せた2歳王者として負けはもう許されない。本来の得意条件であるマイル戦で意地を見せたい。

そんなジャンタルマンタルを破り、マイル女王として確固たる地位を築きたいのがアスコリピチェーノだ。

ダイワメジャーの産駒らしく、豊かなスピードを持ち味とした彼女はデビュー戦、新潟2歳Sとも後方から脚を伸ばしてきて一気に差し切って2連勝。

豊かなスピードを生かして、早めに押し切るという父のレース運びとは異なるものだが、そのスピードはレース終盤に見せるキレのある末脚で引き継がれた。

ジャンタルマンタルと同じ、2戦2勝で迎えた2歳女王決定戦の阪神JFは休み明け、そして阪神どころか右回りも初経験という厳しい条件だったが、中団で脚を溜めて流れに乗ると、直線では早めにスパート。

すると内外から迫ってきた馬たちを競り落として勝利。勝ち時計はレースレコードとなる完勝で無傷のヒロインとなった。

父同様に豊かなスピードを備え、それでいて末脚のキレも備えた女王は桜の舞台でも変わらずに輝くだろう――

そう思われていた中で迎えた桜花賞は中団に付けて流れに乗ると、いつものように外から進出していったが、阪神JFとは異なり先に動いたステレンボッシュを追いかける形になり2着惜敗。

一度破った相手に思わぬ形で脚を掬われる形となった。

叩き2戦目、そして舞台は東京マイル。万全を期すためか、鞍上を北村宏司からデビュー勝ちの時のパートナー、クリストフ・ルメールにスイッチ。

ドバイで落馬し、療養から帰ってきたルメールにとっては復帰戦となるGⅠだが、過去に2勝を挙げている得意レース。完璧なエスコートでマイル女王へと導きたい。

2歳王者・女王決定戦の舞台に縁がなかった素質馬、ボンドガールも虎視眈々とこのレースを狙っている。

アスコリピチェーノと同じ、ダイワメジャーを父に持つ彼女だが、デビュー前の評価はむしろ彼女の情報が上。

その期待通りに2歳戦開幕週の東京でのデビュー戦を快勝すると、ひと夏を越して迎えたサウジアラビアRCでは出遅れながらも直線で猛追して2着。

末脚の切れには見どころがあるとして注目されたが、その激走のダメージが大きすぎたか、阪神JFには間に合わず。

アスコリピチェーノらが覇権を争う中、黙って見つめていることしかできなかった。

明け3歳。春こそは女王に君臨するとして桜花賞を目指したが、3分の2の抽選を突破できないという不運。

やむなく挑んだ復帰戦のニュージーランドTでは内から並びかけるも勝ったエコロブルームに競り負けて2着。惜しくも勝ち切れなかったが、休み明けでも力を見せた。

小回りの中山から広い東京コースに替わるだけでも大きなプラスとなる今回。これまで不運に見舞われた分、NHKマイルCの舞台では爆発したい。

2歳王者と女王の一騎打ちか、それとも第3の馬たちの台頭か――

今年のNHKマイルCは未来のマイル界を占う上でも見逃せないレースとなりそうだ。

■文/福嶌弘

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