理系女子(5月5日)

 パステルカラーの愛らしい電動工具で箱を組み立てる。知育玩具などを扱う東京のメーカーが数年前に発売し、工作好きの女子の心をとらえた。「ドライバーで遊んでみたかった」。担当者は反響の大きさに驚き、小さな客の笑顔を思い浮かべた▼大手広告代理店が一昨年行った保護者の意識調査で、「性別を理由に子どもが欲しがる商品を購入しなかった経験がある」との回答が24.5%に上った。特に玩具や衣類で目立っていた。親の固定観念に子どもを押し込めてしまってはいまいか。わが身を振り返れば、そんな反省も湧いてくる▼「理系女子(リケジョ)」を応援しようと、福島大は来春の入試で「理系教育女性人材育成枠」を新設する。会津大でも検討中だ。大企業も熱意ある人材の背中を押す。ソニーグループは奨学金制度を創設し、在学中に年間最大120万円を給付する▼先の玩具メーカーは商品開発の意識を改めたという。「子どもの好奇心にふたをしてはいけない」と。自由な発想から、みずみずしい工作者は生まれてくるのだろう。きょう5日は「こどもの日」。かわいい道具箱には、何色にも染まっていない無限の夢が詰まっている。<2024.5・5>

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