■カヤック購入! しかし、収納の誤算
訳あり価格で手に入れるチャンスに恵まれ、mont-bellショップで見つけた2.5人乗りのカヤック。友人に感化され、欲しくてたまらなかったこともあり、筆者はすぐに全長と横幅を確認し、自宅カーポートの天井に置くイメージで即決断した。
しかし、自宅にカヤックを持ち帰り、カヤックのカタログ値の高さと愛車セレナの車高からカーポートの天井までの高さを測り、改めて固定方法の確認をしようとしたとき、背筋が凍り付いた。
購入する前に、カーポートから愛車の車高を差し引いた高さと、カヤックの高さの比較を忘れていたのだ。車庫のど真ん中に置いたとして、カーポートの天井からセレナの最大車高までは約40cm。購入したカヤック「Perception トライブ13.5」の高さは、35.6cm。その差は約4cm。常に車をカーポートの真中に正確に駐車できれば置けなくはないが、現実的ではない。
カーポートの一番高い位置にロープで縛り付ける案も考えたが、ピッタリ天井に縛り付けられたとしても、車の屋根から数cmしか余裕はなく、総重量36kgのカヤックを毎回確実に縛り付ける自信もなく、途方に暮れてしまった。
■3つの収納案を検討した結果、たどり着いた収納方法
今回カヤックの収納の具体的な問題点について掘り下げて考えてみると、複数の課題が明確になった。
・重量とサイズ:カヤックは大きく重いため、一人で持ち上げて車庫に収納するのは非現実的。 ・天候への配慮:カヤックを雨や日光から守る必要があり、適切な収納方法が求められる。 ・コスト効率:収納用の設備やアクセサリーの費用を抑えつつ、効果的な収納を実現する必要がある。 ・出し入れのしやすさ:カヤックを頻繁に使用する場合、出し入れが簡単で効率的であることが重要。
そこで、各アイデアを明確に整理し比較するため、トレードオフ表に書き出し検討した。思考の整理と決断を支援するこの手法は、悩みや迷いを軽減し、効果的な解決策を見出すために非常に役立った。
●案1 カーポートの高さを改造する
カーポートの高さを変更するためには支柱に手を加える必要があり、構造的に容易ではないことは明らか。また、カーポートの天井にカヤックを引き上げることも一人では困難。「カヤックの収納スペース」はクリアするが、「実現の難易度」と「収納のしやすさ」は今ひとつ。「対策費用」も高額のため、総合評価はNGとした。
●案2 レンタル倉庫を利用する
自宅近くにレンタル倉庫があり、当初は最も簡易的で妥当な案に思えた。カヤック収納スペースについては、倉庫に入れ込むため「外的環境」、「実現の難易度」も契約のみでクリアとなる。しかし、管理費が毎月4万円以上と高額で、レンタル倉庫の最上段(二段コンテナが積み上げられた二段目)にカヤックを移動させる場合、カヤックを引き上げる手段と労力の問題が浮上し、総合評価はNG。
●案3 隣家との間のスペースを利用し、カヤックを横置きにする
狭いスペースではあるが、カヤックを立てて置くことで収納スペースの横幅はクリアする。奥行きも十分であるため「カヤック収納スペース」もクリア。「外的環境」については、屋根がなくカヤックはむき出しとなるが、日陰という点と防水シートを使えば、直射日光や雨や雪からカヤックを守ることは可能だろう。ただし、このスペースに大きなカヤックを一人で収納するのはNGではないが、なかなか骨が折れる。
いずれの案も、デメリットがあり簡単ではないが、案3がもっとも実現性の高いアイデアとなった。そして「収納のしやすさ」について思い悩んでいるとき、職場の現場で見かける奥行40~50cmで、横幅が90cm、高さは100cm程度の計測器や製品などを置く、移動できる什器を思い出した。
カヤックが収納できる移動棚のような台車を自作すれば、費用対効果が高く、収納場所のアクセスも容易になるはずだ。
自宅近くのホームセンターには、移動棚が複数存在していたが、カヤックを横置きにして安定的に固定できるものはなかった。インターネットで収納台車や移動棚を販売しているサイトも確認したが、筆者の購入したカヤックが置けて、隣家との間のスペースに入る横幅の収納台車や移動棚はない。
結果、木材で組み上げ、キャスターを付けた収納台車を自作することにした。
■自作のカヤック収納台車の設計と製作
早速、収納スペース、許容可能なコスト条件を整理し、収納台車の設計図作成に取り掛かった。
1.収納台車に必要な機能、性能を明確にする。カヤックのサイズ、重量、移動の容易さなどを考慮。 2.カヤックの安定性と移動のしやすさを確保するための重心位置と形状を決定し、使用するキャスターや 部材を選定。使用する部材から収納台車の具体的な寸法を決める。 3.詳細設計を基に、台車の完成図を作成し、製造に移る。
収納台車は、隣家との間の狭いスペースに収容するために次の3点が重要な条件となる。
・カヤックを安定して置けること ・倒れないような構造であること ・隣家の狭いスペースでの容易な出し入れが可能であること
台車は正面から見て凹の字の形とし、カヤックを正面から載せて押し込み、重いカヤックを持ち上げることなく安定して置ける構造とした。
キャスターはこの木枠の前後と中間の6か所に設置。収納台車の前方、後方の下面に引っ掛かりを設け、収納時と、隣家とのスペースへの引き込み&取り出しの場合は、ガレージを下げる際に使用するひっかけ棒を活用する構造とした。
ホームセンターで必要な部材を購入。木材はホームセンターで加工し、自宅でナットとボルトで組み立てる作業のみとした。
電動ドリルを使用することにで穴空けはそれほど苦労なく加工でき、組立はほぼ半日程度(4時間)で完成した。木材のため、白で全塗装し、水分による腐食を防ぐ処置を行った。ついにカヤック収納台車が完成した。
防水と直射日光の対策としてカヤックをシートで巻き、収納台車の上に載せてみた。重心は想定通りカヤックと収納台車接点に集まり、倒れることなく安定している。ひっかけ棒で隣家のスペースへの引き込みや引き出しも容易にできた。
■収納の課題を乗り越えて
カヤックに乗りたいと思い至り、収納という重要なポイントを充分検討しないまま購入してしまったが、収納台車という解決策で乗り越えることができた。
これからカヤック購入を予定されている方には、収納に関して熟考いただくことを提起したい。以下にカヤック収納のための筆者の成果をポイントとして紹介する。
●カヤックを収納するための要点
カヤックのサイズと収納スペースの比較を重視する。収納場所が限られている場合は、スペース効率の高い収納方法を検討する。カヤックの保護と耐久性を考慮する。
●収納台車の設計・製造の要点
台車がカヤックを安定して支え、移動しやすい構造であることが重要。耐久性を確保するために適切な材料を選択し、しっかりした組立を行う。収納台車が狭いスペースで容易に出し入れできるよう、キャスターなどの車輪等により稼働が自由な機構を考慮する。
カヤックを購入する際、収納は大きなポイント。収納場所のサイズや形状、保管方法を事前に把握し、カヤックが安全に収納できることを確認しよう。さらに、今回筆者の経験として示した収納台車や防水カバーなどカヤック収納と保護に必要なアクセサリーもぜひ検討してほしい。
マイカヤックを所有するという喜びと楽しさだけに囚われてしまい、十分な準備もせずに購入してしまった。この経験から学んだ教訓は非常に大きく、今までのアウトドアライフに対する考え方を根本的に変えることになった。
今後は、購入前にはじっくりと調査するとともに、自身のライフスタイルや環境に適した装備を選択することを心がけたい。