予算3,000円以内でできるグッズ修理!「サイバーフォーミュラSIN」の高額トイ「凰呀AN-21」を自力でパーツ複製してみた

(C)SUNRISE

みなさんは大切なコレクションが破損してしまい絶望した経験はありませんか?

人気アニメシリーズ「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」に登場するレースマシン「凰呀AN-21」が完全変形トイとしてメガハウスからリリースされたのですが、ディスプレイ台を移動させようとした際、うっかり手を滑らせてしまって落下。「ヤベっ!」と思った瞬間にはすでに先端部分がポッキリ逝っていました。

メーカー修理に出そうにも、どうやらこの商品は修理の受付をしていない様子。4万円近い商品が哀れな状態です。

しかしナイト・シューマッハもTVシリーズで言っていましたよね。「レーサーがマシンを降りるのはチェッカーを受けた後だ」と。そう、諦めたらそこで試合終了です!

そこで本稿では「低予算で誰でもできる修理術」をテーマに、過去、実際に筆者がおこなった修理の様子をレポート。お役立ち情報としてその手順や注意点を解説したいと思います。

今回の修理で使用した工具と材料

・真鍮線……余り素材(おそらく150円程度)

・型取くん……880円

・プラリペア……1760円

◆実際におこなった作業は、パーツの複製

修理の対象となったのは、メガハウスが2021年に発売し、2024年1月に再販したばかりの「ヴァリアブルアクション Hi-SPEC 新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN 凰呀AN-21」です。

メガハウスでは「ヴァリアブルアクション」シリーズにて、変形機構やブースト形態をパーツの差し替えで再現する「サイバーフォーミュラ」シリーズを展開していますが、「ヴァリアブルアクション Hi-SPEC」シリーズではワンランク上のギミックを実装。完全変形モデルとして、差し替えなしのギミックを実現しました。

修理の対象となったHi-SPEC版の凰呀も見事な変形機構を備えており、サーキットモード、ミラージュ・ターン・モード、エアロモード、エアロ・ブーストモード、スーパー・エアロ・ブーストモードの5つを完全再現。高額トイらしく各部に金属パーツを使用して、手にズシリとくる感触も楽しめます。

無残にクラッシュしてしまった凰呀

やってしまったのは前輪の前に取り付けられたフロント部分。その根元にあるピンと、パーツ移動させるためのアームが綺麗に折れていました。

どちらもただ接着すれば済むという問題ではありません。パーツ移動を考慮し、ある程度の強度を確保する必要があります。

ピンは横の力に対して耐性があれば十分なので、とりあえずピンバイスを使って中に真鍮線を埋め込むことに。これでこの部分の修理は完了です。

問題は折れたアーム。瞬間接着剤では耐久度的に不十分ですし、真鍮線を埋め込むにしては十分なスペースがありません。そこで思い切ってパーツそのものを複製することにしました。

実際に作業した部分の記録写真

使用したのは、パーツの型を取るための「型取くん」と、複製パーツの素材となる「プラリペア」の2つ。どちらも武藤商事が販売しているもので、補修材として家電量販店などでも扱っています。

実際の商品画像。武藤商事より発売中

手順は簡単。

1.破損したパーツを瞬間接着剤で元の形状に戻す。

2.複製元となるパーツの型を「型取くん」で取る。

3.型に「プラリペア」を流し込んでパーツを複製。

4.硬化するのを待った後、型から取り出して整える。

「型取くん」の扱いも簡単で、お湯で柔らかくしてパーツに押し当てるだけ。粘土のように自由に形状を変えられますから、細かなモールドでも比較的はっきりと再現できます。

「型取くん」で複製用パーツの型を取ったところ。塗料皿を使い、しっかりと型が取れるようにしています

あとは完成した型に「プラリペア」の混合用リキッドを流し込み、そこに粉状の補修材をふりかけるだけ。これで複製は完了。こちらも初心者が扱える簡単さです。

※ただし匂いが強いので、よく換気しながら作業してください。歯医者の詰め物のような匂いがします。

「プラリペア」の混合用リキッドと粉状の補修材。この液体と粉を混ぜることでパーツができあがります
このような感じでリキッドをそそぎ、補修材の粉をふりかけるだけ。粉が溶けきらないほど山盛りにします

リキッドと補修材の粉を混ぜる必要もありません。粉がリキッドを吸い上げてくれるので、基本的にリキッドの上にふりかけるだけで完了です。気を付けるとしたら、粉をやや多めに盛ることくらいでしょうか。そこは多少余るくらいがちょうどいいです。

完成した複製パーツの色に若干のムラが出るので心配する人もいるでしょうが、その状態でも問題ないのでまったく気にする必要はなし!リキッドに粉をふりかけたら、型のフタ部分をかぶせて5分ほど放置すれば硬化完了。はみ出た部分をカットして整えれば、パーツの複製は終わりです。(室温25度目安)

型から抜いたばかりの状態がこちら。ピンの穴もちゃんと形状が出ていますね。今回はリキッドが溢れていますが、これは筆者が不器用なだけです

そのあたりの細かい手順やコツは武藤商事の専用サイトで詳しく解説しているので、もっと知りたいという方はそちらもご覧ください。

◆やはり凰呀は良いものだ!

実は記事としてこれ以上書きようがないほど簡単なのですが、少しだけコツや補足することがあるとしたら、それは作業しやすくすることと強度でしょう。

今回複製した部分のパーツは頻繁に可動させることになるため、ある程度の強度がないとまた破損してしまいます。「プラリペア」を使ったのはその強度がある程度信頼できるからで、もしあまり強度を求めていなければUVを当てて硬化させる補修材でも大丈夫でしょう。

また型取りをする際は、型の上下で合いやすいよう、ガイドとなる凹凸を作っておくと位置決めが楽で作業しやすくなります。筆者は一方にワリバシで穴をあけた後、もう一方に3つほど凸を作り、それからパーツに押し当てました。

型取り用の工具も様々ありますが、模型店や大型量販店のプラモデルコーナーにはだいたい工具と補修材がまとまって棚に並んでいたりするので、そこで扱いやすそうなものを見繕うと良いでしょう。そのほか意外と知らなかった工具や塗料に出逢えたりもします。

そうして複製したパーツを本体に組み込んだところ、どうにか元の変形機構を復活させることができました。

修理済みの凰呀。サーキットモードへの変形も問題ありません

凰呀は「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」シリーズの5作目「新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN」に登場する主人公マシンです。

それまでは風見ハヤトとAIのアスラーダが物語の主役でしたが、「SIN」ではハヤトの兄貴分でありライバルでもあるブリード加賀が主役に。絶対王者として君臨するハヤトに立ち向かうため、加賀は“いわくつき”のマシンである凰呀の助けを借ります。

加賀にとってハヤトは弟のような存在であり、かつて失くした自分の「半身」であり、「そうなりたかった自分」のような存在でもありました。

そのハヤトが仲間に囲まれ、アスラーダというパートナーを得て、かつて加賀が恐怖した知覚の限界領域「ゼロの領域」をモノにしている。所属するアオイがサイバーフォーミュラを撤退することが決まった時、加賀はハヤトに最後の勝負を仕掛けることで自分を取り戻そうとしました。その手助けをしたのがこの凰呀です。

アスラーダとは異なるコンセプトで生まれた、アスラーダの派生型プロトタイプ。

アスラーダと似た外観をしつつも、ブーストも含めれば5つの形態を持つ特殊機構。

ギミック好きのハートをガッチリと掴む変形機構と物語における活躍。

「ヴァリアブルアクション Hi-SPEC」では先に「スーパーアスラーダ01」が完全変形モデルとして立体化されていますが、これだけ複雑な構造をしていながらダブルワンよりも先にラインナップに加わるという人気ぶり。

最近のフィギュアやトイは予約数に応じて生産するのが一般的で、なかなか再販などかかりません。それだけに修理ができて本当に良かったです。(後に再販されましたが……)

破損するといえばアンテナ類などがその最たる例ですし、もし壊れて放置しているコレクションがあるなら、このゴールデンウィークに修理してもう一度愛でてみてはいかがでしょうか?

形状が大胆に変わるスーパー・エアロ・ブーストモード。こちらの形状も問題なく変形できました

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