一杯の茶に職人の心をこめる若き製茶師 中国・杭州

一杯の茶に職人の心をこめる若き製茶師 中国・杭州

西湖竜井茶の「茶炒り」を披露する張芸乗さん。(資料写真、杭州=新華社記者/段菁菁)

 【新華社杭州5月5日】中国浙江省杭州市竜塢茶(りゅううちゃ)鎮桐塢(とうう)村。二十四節気「穀雨」(今年は4月19日)が過ぎると多忙を極めた春茶の季節も終わりに近づくが、製茶師の張芸乗(ちょう・げいじょう)さんは休む暇がない。彼が創設した「新茶人創業実践基地」は茶を愛する若者の集いの場となっている。

 村を訪れると、起伏に富む茶畑が視界を覆う。2000年代生まれの張さんは地元の出身ではない。18年に母親と同地に移り住み、茶文化に魅了されて製茶師を志した。

一杯の茶に職人の心をこめる若き製茶師 中国・杭州

樊生華さん(右)と張芸乗さんの手。(資料写真、杭州=新華社記者/段菁菁)

 竜塢茶鎮には樊生華(はん・せいか)という中国緑茶の代表銘柄・竜井(ロンジン)茶作りの名人がいる。国の無形文化遺産に指定される「西湖竜井の茶摘み・製茶技術」の省級伝承者で、彼が炒った茶葉は入手が困難とされる。張さんは移住した年、まだ高校生だったが樊さんの門を叩き最年少の弟子になった。

 大学入試後の夏休みに竜井茶作りを本格的に学び始めた。熱中症を避けるために毎日午前4時に起きて茶園に行き、4時間茶葉を摘んだ。一連の製茶作業で習得が一番難しかったのは大きな鍋で茶を炒る「茶炒り」で、温度が200度を超える鍋の中に手を入れる恐怖を拭い切れず、師匠に掴まれた手を鍋に入れられた時には熱さと情けなさで涙が出たという。今ではやけどの跡だらけの手のひらを見せ「これが茶職人の勲章だ」と笑顔を見せる。

 西湖竜井茶の主要産地では、毎年春に「茶炒り王大会」が開かれる。十数年前には一人で参加していた樊さんも今は多くの弟子がおり、2022年には張さんが期待に応え「新鋭部門」で優勝した。

 同年、西湖竜井茶は「中国伝統製茶技術とその関連習俗」の一部として国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に登録された。張さんは責任の重さがより増したことを実感した。

一杯の茶に職人の心をこめる若き製茶師 中国・杭州

樊生華さんの下で「茶炒り」を学ぶ張芸乗さん。(資料写真、杭州=新華社配信)

 張さんは現在、製茶企業を設立し、西湖竜井茶文化の融合と革新、販売促進に取り組んでいる。「茉莉九曲紅梅」「桂花九曲紅梅」など若者受けする茶を次々に売り出したほか、ブラインドボックスやタロット占いなどの販売手法がヒットし、茶葉ブランドの新たなトレンドを作り出した。

 今年は新たなメンバーも加わり、研究と普及を強化することでより多くの人に茶文化の歴史や精神、現代的価値を伝えている。茶文化の伝達方式も絶えず刷新し、科学技術も取り入れ、茶文化がより生き生きとし、奥深くなるよう努めている。(記者/段菁菁)

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