会話がない、空気が重い 夫婦関係の険悪ムードを抜け出すには? 「自分で考えて」はNGワード

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会話不足から夫婦関係が険悪なムードになってしまうことは少なくありません。しかし、ちょっとしたコミュニケーション術で、状況は打破できるもの。夫婦問題の課題解決型メディア「リコ活」に登録する夫婦カウンセラー4名が、関係改善方法の極意について語ります。カウンセラーたちによると、実は夫婦間では言ってはいけない「NGワード」があったりするのだとか。振り返ってみて、あなたは大丈夫ですか?

険悪ムード脱出のカギは…

――夫婦間の会話がなく、なんとなく険悪なムードが続いている場合はどうしたらよいでしょうか?

大野:よくペットや子どもがいることで、再び会話が盛り上がるという家庭はありますよね。あとは美味しい食べ物を用意するとか。人でダメなら物でチャレンジしてみるというか、少し視点を変えていく。割と単純なところで人は心を開くことがあるのかなと思いますね。

険悪な時って小細工すると相手にわかってしまうんですよね。「謝ってほしいからこうしているんだろうな」と感じ取ってしまう。

そうではなく、シンプルに単純に相手が喜ぶことをバンッと提示すると、笑いあえたり和やかな気持ちになれるのかなと思います。

――緊張が相手に伝わるように、感情は伝播しますよね。

すみよし:笑顔になれないじゃない? でも相手がニコニコしていれば怒りにくくないですか? だから、おかしくなくても嬉しくなくても自分から笑いましょうよと。笑顔でいると言葉や態度がやわらかくなるから。

渡辺:それをお伝えすると「なんで私からやらなければいけないんですか?」と言う方もいませんか?

一同:よくある(笑)。

大野:特にサレた側の奥さんの場合は大体言われます。

すみよし:「急に私からは変われない」「今さら変われない」という方は多いです。

渡辺:よくあるフレーズですよね。でも、自分から言動を変えることはチームをよくするため、つまり自分のためなんですよね。

すみよし:「いい女になりたくないですか? あなたがいい女になれば家族みんなが幸せになるよ」とお伝えしています。

渡辺:「そんなことできません」という方には、栄養ドリンクに「おつかれさま」と書いたフセンを貼るとか、そういう形でもいいのかなと。

高草木:こちらがアクションを起こしたら負け、というような認識があるのかもしれません。

大きな問題があればその原因を作った側に非がある関係性ができてしまいますが、どちらが原因かわからないような、些細なことから口をきかなくなってしまったような夫婦の場合は「このままではマズい」と感じ、先に動いた者勝ちだと思った方がいい。

「相手のために」と思うと、どうしても動きたくない心理が働きますが、結局は自分に返ってくるから「自分のため」なんですよね。

本当は喋りたくないし、腹が立っていても普通に話しかけることがトラブルが長引かずに済むコツなんじゃないかな。

すみよし:負けたフリみたいな。

大野:負けるが勝ちだよね。

家族というチーム運営のNGワードは「自分で考えて」

――あえて自分が負けて歩み寄ったとしても、相手にスルーされるということもありそうです。

渡辺:すごく多いのは、伝えたつもりで伝わっていないということ。

こちらは伝えたつもりでも、怒りながらワーッと言っても向こうが聞いていなければ伝えていないのと同じです。伝え方はすごく大事。

すみよし:相手も耳にしたくないからね。

渡辺:子育てと同じですよね。「片付けろ」と何度言っても、子どもはなぜ片づけなければいけないのかよくわかっていないというような。

すみよし:妻はガチャガチャ音を立てながらお茶碗を洗っているけれど、夫は手伝った方がよいのか、それとも違うことをした方がよいのか、何が正しいかわからない。だから何もできずにゲームをして、妻はさらに怒る(笑)。

「私は洗い物をしているから、あなたは子どもにご飯を食べさせて」とか、「子どもを着替えさせて」とか、具体的に伝えたら丸く収まるはずです。

高草木:妻側はそうやって具体的に伝えればいいし、夫側もわからないなら聞けばいい。

渡辺:わかりやすい会話を心がけるのが大事です。

――すみよしさんは男性の相談者が多いとのことですが、男性から「なぜ妻が怒っているのかわからない」というような相談を受けた場合、どのように答えるのですか?

すみよし:聞いてみたら? と伝えています。「手が空いているけれど自分にできることがあれば教えて」と妻に伝えてみてはと。

高草木:そして妻にそれを言うと「見ればわかるでしょ!」と言われる。

一同:(笑)。

すみよし:あとは「自分で考えろ」と。夫の方は本当にわからないんだよね。だからきちんと聞いた方がうまくいくケースもあるんですよ。

渡辺:聞けずに妻の顔色を伺ってビクビクしている……。お互いに言い方、聞き方を意識するといいのかも。

大野:うまくいっていない夫婦は常にパワーバランスが崩れていて、平等ではなくなっているんですよね。

高草木:結局、「自分で考えろ」というのは一番効率が悪いんです。

夫が考えて妻の期待通りにできればいいのですが、そんなことをしてくれる夫はいないから(笑)、「こうしたらいいと思う」「こうしてね」と伝えれば確実に通じるし、時間のムダにもなりません。チームですからね。

大野:夫婦間だと当たり前のことができなくなってしまうんですよね。

渡辺:かえってややこしくなってしまうこと、多いですよね。

すみよし:「自分で考えて」なんてツンケンした態度、会社でも同じことしてる? と聞くと、「していません」と言うんですよ。職場ではしないことを夫婦の間ではしているんですよね。

渡辺:距離が近い分、甘えが出てしまうのでしょうね。

高草木:何度も同じことを言わせないでほしいという気持ちもわかりますけどね(笑)。

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◆高草木 陽光(たかくさき・はるみ)夫婦カウンセラー/「リコ活」専門家
これまで9,000人以上のカウンセリングを行い、夫婦問題・家族問題で悩む人を解決に導くお手伝いをする夫婦カウンセラー。美容師、育毛カウンセラーを経て、結婚して専業主婦となるが、夫の束縛や価値観の押し付けに違和感を覚え「結婚生活とは何か」ということを深く考え始める。書籍に「なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか」(左右社)、「心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK」(左右社)、メディア実績にNHK総合「あさイチ」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、テレビ朝日「羽鳥慎一 モーニュングショー」、「ABEMA Prime」などがある。

◆渡辺里佳(わたなべ・りか)夫婦カウンセラー/「リコ活」専門家
30代半ばで離婚を経験し、子どもたちが成人する頃に「夫婦関係や離婚に悩む人の助けになりたい」「人の役に立ちたい」という想いが膨らみ、2011年、夫婦問題研究家・岡野あつこ主宰の「離婚カウンセラー養成スクール」に通学。 夫婦問題に特化したカウンセリングを学び、同年9月「離婚カウンセラー」資格を取得、52歳でカウンセラーに。
心理を深く学ぶため、日本プロカウンセリング協会認定「心理カウンセラー2級」資格を取得。現在、法務省認証の民間調停機関「家族のためのADRセンター」主催の「パパとママの離婚講座」の講師を担当。ライター、エディターとしても活動している。

◆すみよしひさこ 夫婦カウンセラー/「リコ活」専門家
子どもの成人を待って48歳で熟年離婚を経験。結婚前はピアノ調律師、結婚や出産を経て専業主婦ののちに医療事務の勉強、いくつかのクリニックと精神科クリニックでも受付と医療事務の仕事を経験。2年ほど生命保険のセールスレディも経験。2011年に夫婦問題に特化したカウンセリングの勉強をして夫婦問題相談室「リカプル」を開業。2015年からは匿名電話相談サイトでの専門カウンセラーとしての仕事も開始、さまざまなお悩みのご相談もお受けして経験を積んでいる。

◆大野まり子(おおの・まりこ) 夫婦カウンセラー/「リコ活」専門家
2013年~現在 夫婦問題カウンセラー、ファイナンシャルプランナー(AFP)として活動中。2012年 弁護士をつけずに調停離婚を経験。2013年 NPO法人日本家族問題相談連盟認定離婚カウンセラー資格取得「さいたま夫婦問題カウンセリングセンター」運営 。2019年 2級ファイナンシャルプランニング技能士/AFP資格取得。2020年 夫婦のご縁とお金の円をトータルサポートする「オフィスえん」設立。埼玉県男女共同参画推進センターにて県共催事業で「後悔しないための離婚講座」セミナー主催、家族のためのADRセンター離婚テラスにて「パパとママの離婚講座」講師、他講師実績多数。

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「リコ活」は、夫婦問題の課題解決型メディアです。夫婦関係のトラブルや離婚で悩む人に、専門家とのマッチングの場を提供するとともに、家族のカタチが多様化する時代にあわせた最新情報を発信しています。

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(まいどなニュース/リコ活)

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