スキンヘッドを叩いて演奏 異色ユニット「BOZESTYLE」がバズるまで【インタビュー前編】

BOZESTYLE(左からニコラス・ケイ、小林直人、合津亮也)

【銀の盾に聞いてみた】坊主頭に装着したスイッチを〝連打〟し、流行りの楽曲を演奏する動画を見たことはあるだろうか。そんな独特な演奏法「ヘッドパーカッション」で人気を集め、今月ユーチューブ登録者数10万人を達成した音楽ユニットが「BOZESTYLE」だ。メンバーであるニコラス・ケイ氏、小林直人氏、合津亮也氏に、これまでの道のりについて話を聞いた。

――ユニットを結成した経緯は

ニコラス・ケイ氏(以下 ニコラス) 一番最初はバンドマン同士の飲み会から始まったんです。頭髪の薄い人が何人かいて、「ハゲ同士で何かやればいいじゃん」という話になって。どこにでもあるようなエピソードなんですけど。

小林直人氏(以下 小林) どこにでもあるようなエピソードじゃないだろ…!

ニコラス いやいや、そういう〝ハゲユニット〟って多いと思うんですよ。ハゲてる同級生で集まりました、みたいなこともあると思うし。ただそれがうちの場合はミュージシャンの集まりだった、ということだったのかな、と。

――別々のバンドで活動していたそうですね

ニコラス そうですね、活動拠点が近いバンドの人たちが垣根を越えて集まった形です。皆作曲もできるし演奏もできるから、最初から「ハゲの曲」でライブしようという話はしていました。

――もともと演奏していた楽器は

ニコラス パートでいうと僕はギターで。

合津亮也(以下、合津)僕もギターでしたね。

ニコラス 小林は後から加入したんですけど、元々は俳優です。

――俳優からなぜ音楽ユニットに?

小林 元々ギタリストと組んで、演技と音楽を合わせてどんな表現ができるか、みたいなチャレンジはしていたんですよ。そのギターの方に「ハゲが面白いことやってるからやってみれば?」って言われて。じゃあ1回会ってみるわ、となって。そのまま加入したんですけど、当時のBOZE(STYLE)はまだハゲをテーマにした曲を中心にやっていましたから、踊ったり、ボーカルをちょっと担当したりしていました。

――〝BOZE〟として活動していますが、スキンヘッド歴は?

合津 僕は21年くらいになりますね。20代半ばからハゲ始めて、スキンヘッドにしたのはちょうど30歳くらいの時です。育毛剤にも頼ってみましたけど全然ダメで、60万ドブに捨ててしまったので。潔くスキンヘッドにしました。

小林 僕も30歳くらいだと思いますね。舞台では色んな役を演じる必要がありますけど、ハゲてると全部「ハゲ役」になっちゃうじゃないですか。だから剃るわけにはいかない! としがみついていたけれど、限界が来て30でズバッと…。

ニコラス 僕も剃ったのは30歳の時だと思いますね。何だか皆似たような時期に始めているな。

――頭にスイッチをつけるアイデアはどこから

ニコラス 最初はハゲのオリジナル曲でライブをやっていたんですけど、なかなか大きくバズらないなという感覚があって。その後ユーチューブでは有名な曲をカバーしながら、歌詞だけハゲのネタに変える〝脱毛カバー〟を始めたんです。そうしたら、オリジナルよりも反応も再生回数もあって。あともう一押しという時に、「頭を叩いて音が出たら面白くない」ってアイデアが会話の中で出てきたんです。

――大胆な方針転換ですね

ニコラス これまでもハゲはいろんな芸人さんが扱っていたし、世の中の皆さんがちょっとハゲに慣れているなという感覚はあったんですよ。「どうせハゲをネタにするんでしょ」みたいな〝壁の高さ〟も感じましたし。それでも頭から音を出す人は見たことがないし、やってみようと一念発起しました。

――案が出た時は盛り上がった?

合津 いや、盛り上がったという程ではないですね…。

小林 どうやって音を出すんだろう、っていう疑問が先に湧いちゃったというか。

ニコラス 正直それまでもいろんな方向性を試してはいたんです。冷たい海に5、6人で潜って、頭で「ブイ」のまねをするっていう動画を撮って、全然再生回数が伸びなかったり(苦笑)。いくつも撃沈した中での「頭叩き」だったので、実現したらすごいかもね、くらいの空気感ではありました。

――スイッチにも歴史がある

合津 それこそ最初期のスイッチは自分たちで作っていましたからね。

小林 旧式は叩くとはんだで付けた部分が壊れちゃったんですよ。ライブでお客さんの前で披露しようとしても、リハでは出ていた音が本番出なくなったりして。その度に中を開けて修理していました。

――新式はそうではないと

ニコラス 新旧でシステムから違うんですよ。以前のスイッチは上から垂直に押す仕組みなので、横から押しても反応しなかったんです。

小林 だから命中率を求められるんですよね。テンポが速い曲だと、スイッチには手が当たっていても音が出ない、なんてこともあって。

ニコラス 今のスイッチはボタンの傘がシリコンになっていて、どの角度からも、どんな強さでも音が出る仕組みになっています。これに関しては専門家の方に頼んで作ってもらいました。

小林 最近演奏している曲は、難易度的にもう今のスイッチなしにはできないですね。

――演奏中に頭を叩かれて痛くないですか?

合津 旧式を使っていた頃は痛かったですけど、今は全然痛くないですね。

小林 自分で担当するパートがない時は、頭への振動が心地よくて眠くなるくらいです。もし痛くなるとしたら腰とかになるのかな…?

ニコラス 動画で映えるように遠くにスイッチを配置して、無理に叩いたりするんです。だから今は正しい姿勢で頭を叩く練習をしていますね。まだまだ活動を長く続けたいので、体を壊さないための基礎知識を今になって勉強しています。

――活動に手ごたえを感じた時期は

ニコラス コロナ禍前にやったストリートライブですね。少しずつヘッドパーカッションはライブハウスで披露していたんですけど、外に出て反応を見てみようということになったんです。実際叩き出したらめちゃくちゃ人が集まって。

――効果てきめんだった

ニコラス その後「(お客さんの関心を)つかんだ!」と思ってオリジナル曲を歌ったら、皆帰っていくんですよ。ある種すごく分かりやすいリサーチができて、もうこれからはヘッドパーカッション一択だろうとなりました。ただその後に新型コロナが流行して、オリンピックも延期になってしまったじゃないですか。次は外国人観光客の前で演奏しようとも話していましたけど、まずはインドアでSNSを中心に動くことになったんです。

合津 TikTokに関しては、ストリートライブの少し前から投稿していたんだよね。

ニコラス そこで1本目から動画も当たっていたので、ストリートの反応とSNS人気は連動するだろうとは思っていました。

(後編では正確な演奏を支える下準備や選曲の裏側、将来の目標について聞きました)

☆ぼーずすたいる 頭髪の薄いミュージシャンを主体として、2010年に結成された音楽ユニット。スキンヘッドに装着したスイッチを叩いて演奏する動画が人気を集め、ユーチューブチャンネルの登録者は10万人を突破した。現在はプロデューサーの枕本トクロウ氏、パフォーマーのニコラス・ケイ氏、小林直人氏、合津亮也氏の4名を中心に活動する。

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