夫婦の半数がセックスレス 背景に女性の経済力アップも 宋美玄医師「夫婦間において”プランB”が出てくる」

夫婦生活円満は難しい? ※画像はphotolibartary

若者の草食化、恋愛・結婚離れが叫ばれる昨今。この流れは、結婚後の夫婦生活にまで及んでいるという。夫婦生活の消極化を示す「セックスレス」が増えているというのだ。日本家族計画協会が3月に男女3000人を対象に行なった『男女の生活と意識に関する調査』によれば、夫婦間で性交渉が1か月以上ない、いわゆるセックスレスの夫婦は年々増え、もはや半数近くになるという。

同調査の結果を見ると、夫婦間の「セックスレス」は、前回調査(2016年)を1.1ポイント上回る48.3%と過去最高をマーク。04年は31.9%だったのが、10年には40.8%と40%を超え、この20年間で16.4ポイント増となっている。

なお、理由として男性では「相手が応じてくれない」が最多の24.0%。「出産後なんとなく」(14.7%)、「面倒くさい」(12.0%)が続く。女性は「面倒くさい」(22.6%)「仕事で疲れている」(20.8%)、「妊娠中、出産後すぐだから」(13.2%)という順だ。

さて、セックスレス夫婦の割合が増えている背景には何があるのか。産婦人科医で『娘に伝えたい 性の話』(小学館)などの著書もある宋美玄(そん・みひょん)医師に、話を聞いた。

なぜ夫婦間のセックスレスが増えているのかについて、宋医師は「時代の流れとして、“お互いが性交渉に同意してこそ”という風潮が根付いてきたのでは」という見解を示す。

「女性も経済力をつけたことで、男性に対して”NO”と言える時代になりました。要は、夫と妻両方のポジティブな条件がそろわないとセックスはしないというわけです。セックスレスの理由として、女性側が”仕事で疲れている”が20%を占めるように、女性が社会に出るようになって、生活時間のすれ違いという側面も出てきているのでしょう。

また、今は女の価値=男に求められること、という時代でもない。時代とともに女性の価値観が変わってきているのだと思います」(宋医師)

■不倫や浮気はあふれているのに

法律上、婚姻関係にある夫婦は互いに配偶者以外の人と性交渉をしてはいけないという“貞操義務”がある。しかし、夫婦間はセックスレスでも、男女問わず不倫や浮気といった話題には事欠かない。現に4月25日には『週刊文春』(文藝春秋)で女性問題が報じられた、宮沢博行前防衛副大臣(49)が議員辞職をしたばかり。”夫婦”の関係に変化が起きているのだろうか。

「昔は“結婚するまではセックスはしない”という人もいましたが、今はさまざまな価値観があり、パートナーシップも多様化している。そもそも人生をともに歩むライフパートナーだけがセックスパートナーというのも、理想論がすぎるのかもしれません。

不倫は夫婦間において不貞行為だし、手放しに賛成するものではまったくありません。しかし、妻が”無理、やりたくない”と言ったときに、夫がずっと我慢しなきゃいけないのも非現実的。男女問わず、一方に”NO”という権利が浸透してくると、他方がヨソで処理をする“プランB”が出てくる感じになってくるのかなと思います」(宋医師)

折しも時代はマッチングアプリやSNSなど、“プランB”に出会う手段が豊富な社会。夫婦間のセックスレスが必ずしもプランBに直結するとは言わないが、性交渉を取り巻く価値観が変化しているのは確かなようだ。

宋美玄(そん・みひょん)
産婦人科医 医学博士、丸の内の森レディースクリニック院長。1976年兵庫県神戸市生まれ、大阪大学医学部医学科卒。妊娠出産に関する数多くの著書を出版。“カリスマ産婦人科医”としてメディアへの出演、医療監修の他、女性のカラダの悩み、妊娠出産、女性の性など積極的な啓蒙活動を行なっている。2児の母。

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