『カイジ』『こち亀』『ドカベン』『美味しんぼ』……漫画史上に残る最も「嫌な上司」といえば?

■新社会人にとって、嫌な上司といえば?

新社会人にとって、鬼門といわれるのが5月。ゴールデンウィークの連休中に「会社に行きたくない」と感じてしまうことが例年多いようだ。「仕事に行きたくない」と感じる理由は様々だが、その最たるものが「上司」との関係ではないだろうか。

「親と上司は選べない」という格言もあるように、誰に当たるのかは、「運」の要素が大きく、性格や考え方が合わない人物の下で働くことは、大きなストレスになってしまうことがある。漫画の世界にも「嫌な上司」が登場する。今回はその一部と行動を紹介したい。

大槻班長『カイジ』

温和で人の良さそうな顔をしている大槻だが、実はかなりの極悪人。酒やタバコの販売で金を儲けて私腹を肥やしているほか、カイジが初任給をもらった際には、ビールやおつまみを購入することを我慢するカイジに「良い人」を装ってビールを差し入れ、欲望の沼に落とす。我慢しきれずビールやおつまみを次々に購入し、欲望の沼に落ちていくカイジを見て「バカだからね」と笑う性格の悪さを見せたている。

人あたりの良さそうな顔と雰囲気を出しながら、実は部下を落とし入れようと企み、私腹を肥やしている。すべてが発覚すれば、一般企業ならクビになることもあるだろうが、抜群のコミュニケーション能力で情報漏れを許さない。たとえ味方につけていても、油断ならない男である。

土井垣将『ドカベン』

そんな土井垣だが、1年生ながら超高校級の打撃力とキャッチャーとしても高い能力を見せる山田を認め、ポジションを譲っている。また、敬語が使えず、采配を批判することもあった岩鬼正美のことも受け入れていた。「人間としての度量」はあるのかも。

大原部長『こちら葛飾区亀有公園前派出所』

『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で両津勘吉の上司を務めていた大原大次郎部長。両津にひどい目に遭わされることが多いが、それでも両津のことを気にかけている描写もあり、「部下想いの上司」と語られることも。

一方で「部下想い」が暴走し、「ありがた迷惑」になることが多々あった。そのなかでも最も「迷惑」な行動が、両津の貯金を勝手に自分の口座に送金するという、昨今話題になった事件に通じる行動だ。

大原は両津が自堕落な生活をしていることを心配し、中川圭一の協力で両津の部屋に強制貯金システムを導入。部屋の出入り、テレビの電源オンなどを行う際、貯金箱にお金を入れなければいけないというものだ。

その後、両津がネット配信などで自分の月給より多い収入を得ていることを知った大原は強制貯金システムの金を自身の口座に送金し、盆栽や鯉など自分の趣味に流用する。事実に気がついた両津が問い務めると「ワシがやった、文句があるか」と開き直った。強制貯金システムはあくまでも両津を思っての行動だったが、嫉妬心から犯罪に手を染めた大原。部下の両津からすれば、溜まったものではない行動だが、両津を思う心だけは本物だろう。

富井副部長『美味しんぼ』

居酒屋が牛皿の提供を狂牛病問題で中止していた際には、居酒屋のテーブルに立ち上がり「牛皿を食わせろなんて言った私が悪うござんしたね、バーロイ。BSEが怖くて衛星放送が見られるかってえんだ」と叫び、たまたまその場にいた帝都新聞の記者に掻き立てられてしまう失態を犯した。

また、ふくよかな女性に「産みの苦しみを味わってくださいよ」と男性が声をかける様子を見て、妊娠しているものと勘違いした富井副部長が「やはり子持ちの腹は三段腹ってやつですな。たっぷり栄養つけて元気な子どもを産んでくださいよ」と発言したこともあった。
このほかにも数多くのトラブルや部下への嫌味を繰り返していた富井副部長。それでもトラブルが起こるたびに山岡士郎や谷村部長に助けられ、部長代理に昇進している。物語には出てこない「良い部分」があるのかも。

漫画に出てきた嫌な上司たち。なにかと叩かれがちではあるが、実は良い部分も持っている。悪いところばかり見るではなく、良い部分にフォーカスを当ててみると、違う一面が見えてくるかもしれない。

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