太りやすい更年期 体重を減らすことよりも大切な食事の鉄則3つとは 栄養士に聞いた

お腹周りが気になることも(写真はイメージ)【写真:写真AC】

若い頃は食べすぎても体重がすぐに戻ったのに、更年期になったら太りやすく痩せにくくなったと感じている人がいるかもしれません。なぜ太りやすくなるのでしょうか。普段の食生活で工夫できることとは? 更年期に太りやすい理由や、心がけたい食事の鉄則について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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更年期に太りやすい理由

閉経前後の10年ほど、女性の誰もが経験するのが更年期です。個人差はありますが、更年期になると太りやすくなるとされる原因には、大きく2つが考えられます。

1つめの原因は、加齢に伴う筋肉量の減少です。筋肉量が減ると1日の基礎代謝量も低くなります。基礎代謝とは、「人が生きていくうえで必要最小限のエネルギーで体温を維持し、臓器を働かせるために消費されるカロリーの量」です。基礎代謝量は2歳をピークに、年齢を重ねるとともに減少するといわれています。年を重ねると筋肉量も減り、基礎代謝量が低くなるので、同じ量を食べても以前より太りやすくなってしまうのです。

2つめの原因は、女性ホルモンの減少です。女性ホルモンのエストロゲンは、さまざまな作用を持っていますが、脂質代謝に関連しコレステロールを調節する働きがあります。エストロゲンが減少する更年期は、悪玉コレステロールが上昇しやすく、内臓型肥満になりやすい時期。お腹周りの脂肪が気になってくるのは、このためです。

また、エストロゲンは脳の満腹中枢の調節にも関わっています。エストロゲンが減ると調節がうまくいかず、食欲のコントロールが効かなくなり、食べすぎから肥満につながる可能性も指摘されています。

更年期は「筋肉量」と「女性ホルモン」を意識した食を(写真はイメージ)【写真:写真AC】

更年期の太る原因をカバーする食事の鉄則3つ

誰もが太りやすくなる更年期では、適度な運動や睡眠はもちろん、食事の面でも心がけておきたいことがあります。よく、「体重を減らすために食べない」と食事を極端に制限しようとする人がいますが、おすすめできません。

更年期の食事で大切なのは、健康的な体を維持するために、バランスの良い食事から必要な栄養素をしっかり摂取することです。体重を減らすというよりも、筋肉をつけて余分な脂肪を落としていくことが大切になります。太りやすい原因として挙げた「筋肉量の減少」と「女性ホルモンの減少」を補うための食事の鉄則3つを、まずは心がけて食生活を整えましょう。

鉄則1 朝食にたんぱく質をとろう

たんぱく質は、筋肉を作る材料となり、ホルモンの調整にも欠かせない栄養素です。たんぱく質を構成する化合物のひとつ「トリプトファン」は、朝に摂取すると夜には睡眠を促すホルモン「メラトニン」に変化し、よく眠れるようになることが期待できます。質の良い睡眠は代謝アップにもつながり、太りにくい体作りをサポート。朝食には、積極的にたんぱく質をとりましょう。肉、魚、卵、納豆、豆乳、豆腐、牛乳、ヨーグルト、など、動物性と植物性のたんぱく質をさまざまな食材からとるのが理想です。

ただし、たんぱく質は大量にとったからといって体に貯蓄されるわけではありません。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、女性(18歳以上)のたんぱく質の1日の推奨量は、50グラムとなっています。適量をいただきましょう。

鉄則2 大豆製品を積極的に食べよう

女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをする成分として、エクオールが注目されています。エクオールとは、大豆製品に含まれるイソフラボンの成分が、腸内細菌によって代謝されて変化してできた成分です。エストロゲンが急激に減少する更年期には、大豆製品を積極的に食べることが望ましいとされています。ただし、腸内でエクオールを産生できるのは、日本人女性の2人に1人といわれ、自分がエクオールをつくる腸内細菌を持っているかどうかを知るためには、尿検査をする必要があります。

1日あたりのエクオールの目安は10ミリグラムで、大豆製品でいえば豆腐で3分の2丁、豆乳であればコップ1杯、納豆なら1パックが目安です。いずれにしても大豆製品は低エネルギーで、イソフラボンのほか、たんぱく質、ミネラル、ビタミンなど栄養成分が豊富なので、太りやすい更年期には積極的に食べたい食材です。

鉄則3 食べる順番も意識

近年、食後の血糖値の上昇をゆるやかにすることが太りにくい体作りにつながると期待されています。つまり、血糖値の上昇をゆるやかにするようなものから食べていくことが大切です。副菜→主菜→主食の順番で食べるようにすると、血糖値の急上昇を防ぎ、炭水化物や脂肪を吸収しにくくなります。またゴボウや海藻類など食物繊維を含むものから食べると、血糖値の急激な上昇を防げるでしょう。食事の満足感を得るために、よく噛んで食べることは基本です。

忙しい毎日の中で、すべての食事の栄養バランスを完璧にしようとするのは大変です。まずはこの3つを意識してみましょう。

和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。

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