昆夏美×大原櫻子×海宝直人×村井良大SP座談会 ミュージカル『この世界の片隅に』を通じ「戦争下を生きた人々の美しい日々を音楽の力を借りて届けたい」

昆夏美さん、大原櫻子さん、海宝直人さん、村井良大さんら実力派キャストが、ミュージカル『この世界の片隅に』の魅力をアピールしました。

【写真6枚】ミュージカル界屈指の実力派が“居場所”を紹介

5月9日~東京・日生劇場で上演されるミュージカル『この世界の片隅に』。こうの史代さんによる同名のコミックが原作で、太平洋戦争下の広島県呉市に生きる人々のつつましくも美しい日々が丁寧に描かれた物語です。

脚本・演出を上田一豪さんが手がけ、音楽は、2014年に渡米し、ミュージカル音楽作家として10年ぶりに再始動するアンジェラ・アキさんが担当。

出演は、絵を描くことが大好きな主人公・浦野すずに昆夏美さんと大原櫻子さんがWキャストで、すずが嫁ぐ相手となる北條周作を海宝直人さんと村井良大さんが、こちらもWキャストで演じます。

このたび、昆さん、大原さん、海宝さん、村井さんが出演するにあたっての心境や、アンジェラ・アキさんが紡ぐ珠玉の音楽への期待を語りました。

<昆夏美×大原櫻子×海宝直人×村井良大 座談会> <昆夏美×大原櫻子×海宝直人×村井良大 座談会>

――まずはこれまでの共演経験から聞かせてください。

:海宝さん、村井さんと共演経験があって、私個人としては仲良くしていただいているつもりなので(笑)、またお二人とご一緒できると聞いて、すごく心強いなって思いました。

お二人がとてもしっかりされているのに対し、私はちょっとポンコツ(笑)。すずと周作の関係性に似ている気がするので、“夫婦”として作品をつくっていけたらいいなと思います。

大原:昆さんと海宝さんとは『ミス・サイゴン』のお稽古だけご一緒していて(新型コロナウイルスの影響で2020年は全公演中止)、村井さんとは今回が「はじめまして」です。

知っている方がそばにいるとすごく心強いですし、ビジュアル撮影やプロモーション映像の撮影でたくさんサポートしていただいたので、安心感であふれています。

海宝:村井くんとは2018年の『「TENTH」ネクスト・トゥ・ノーマル』というコンサート以来です。そして、昆ちゃんと組むとだいたい、その役柄が死んじゃったり、片思いだったりが多く(苦笑)、今回ようやく夫婦になれるので、新鮮で楽しみです。

大原さんからは、音楽に対してもお芝居に対しても絶えずハングリーに前進しようという気概を感じるので、今回もたくさんの刺激を受けることになりそうです。

村井:以前、共演させていただいたときの昆ちゃんは圧倒的に強い役を演じていましたが、今回はそのときとは違う関係性の役柄を演じられるので、楽しみにしています。

櫻子さんとはビジュアル撮影で初めてお会いしたのですが、1カットを撮影するにしても「こうしたほうがもっとよく見えるんじゃないか」などと追求されていて、プロ意識が高い方だなと感じました。

アンジェラ・アキが紡ぎ出す珠玉の旋律 アンジェラ・アキが紡ぎ出す珠玉の旋律

――本作をストレートプレイではなく、ミュージカルとして届けることにどのような意義を感じていますか?

海宝:漫画やアニメを見たときもそうでしたが、具体的に「何に感動した」や「何に泣けた」という感覚ではなく、全体を通して言語化しづらい感動が伝わってきたんです。

今回はミュージカルということで、音楽の力でさらに表現を深めていくと思いますが、他の作品のように壮大なナンバーで歌い上げ、盛り上げる形にはならないと思うので、そこが大きなハードルになりそう。

だからこそ、ずっとミュージカルをつくっている作曲家にはない感性をお持ちのアンジェラさんが作品に携わってくださるのはピッタリだなと思いました。

大原:今作の楽曲を初めて聴いたとき、感動して泣いちゃったんです。海宝さんがおっしゃったように、言語化できない魅力があって、アンジェラさんの音楽の力を感じました。

戦時中というシリアスな時代のお話ではありますが、音楽があることによって受け取りやすくなるのは、ミュージカルならではの素敵な部分だなと思いました。

:お二人が言ってくださったことがすべてです。私は原作に温度をすごく感じていて、決して沸点が高いお湯ではないのですが、つつみ込むようなまろやかな温度。それが、その当時を生きてきた人たちが見つけたささやかな幸せに重なってくると思ったんです。

ミュージカルになることで作品の印象が変わってしまうのではないかと心配している方がいるかもしれませんが、作り手の皆さんが原作へのリスペクトをもって向き合ってくださっていると感じたので、私も原作に寄りそった温度感でお届けしたいです。

村井:日本人の気質として、その場では言えなかったけど実はこんな本心を抱えていたということが多いと思うのですが、今作の楽曲は心の声のような歌詞だなと感じました。

ミュージカルになったことで、内に秘めた思いがより伝わりやすくなるかなと。なんと表現していいのかわかりませんが、こみ上げてくる感情をストレートに表現することができ、かつ、原作の雰囲気を保ったまま、お届けできるのではないかなと思いました。

役柄に共感する部分や自身との共通点を紹介 役柄に共感する部分や自身との共通点を紹介

――役柄に共感する部分や印象、自身との共通点があれば聞かせてください。

海宝:周作ってすっとしているように見えて、思うようにうまくいかなかったり、カッコつけてはいるけれど、実は嫉妬していたりする人間くささがある。

原作にはあるものの、アニメでは描かれなかったシーンなのですが、屋根の上で「どうせわしは暗いんじゃ」と拗ねるところがあって、たまに見せる弱さと素直さのバランスがとても可愛らしいキャラクターだと感じました。

:私は不器用なところがすずさんと似ていますね。着物を裁ち間違えるなど、「あちゃーっ」っていうことをすずさんはよくやっていて、なんかわかるなって(笑)。

大原:すずさんはどちらかというと柔らかく温かい人柄で、私自身は結構はっきりしている性格なので、「ここが似ている」と明言はできませんが、女性としての強さや明るい部分に共感しますし、しいてあげるなら前向きなところは似ているのではないでしょうか。

村井:周作は、よかれと思って行動したことが裏目に出てしまうことが多く、やさしすぎてすずさんが抱えているものを受け止めきれていない部分がある。

いわゆる“男たるもの”という雰囲気ではない周作のような人は珍しい時代だったと思うのですが、戦時中だからこそ必要な感情をもった周作は、男性として大事な存在だったのではないかなと思います。

この時代を生きた人たちの日常を淡々と描いているところが魅力 この時代を生きた人たちの日常を淡々と描いているところが魅力

――それぞれが自分の居場所を模索する物語ですが、皆さんが普段感じている“居場所”について聞かせてください。

村井:僕はうちの事務所ですね。居心地がよくてしょうがありません(笑)。

大原:私は舞台やイベントなどに出演したとき、お客様がいるステージこそ私の居場所だと感じましたね。

:私の場合は家族です。昨年、お休みをいただいて実家に帰ったときに、舞台のパンフレットや新聞記事の切り抜きなど家族が飾ってくれているのを見て、自分が元気にお客様の前に立てるのは、家族というかけがえないない場所があるからこそだと感じました。

海宝:僕はミュージカル以外にバンドをやっていたり、ソロでコンサートを開催したりしていますが、なれ合いだけではなく前に進むため、時には厳しい意見も言い合える場にいると、自分の居場所はここだと感じることが多いです。

村井:さっきの僕の発言をなかったことにしてもらっていいですか(笑)。

海宝:いや、事務所が居場所っていいことだと思うよ。

――公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

村井:こうの先生が「今後も戦争の話を書く予定があるんですか?」と聞かれ、おっしゃっていたことですが、「そういう話は例えば被爆者の方であるとか、実際に体験された方が伝えていけばいいという考えをもったままでは、その人だけに任せてしまうことになる」と。

「我々は全員、戦争について語る義務と権利があるから、いろいろな人に発信してほしい」という言葉を聞いて、僕たちは戦争を体験していないけれど、作品として世に発信することが自分たちの義務であると念頭におきながら向き合わなければいけないと感じました。

戦争を前面に押し出した作品ではありませんが、戦時中の日本を知っていただくために、真摯な思いをもって舞台に立ちたいと思います。

大原:戦時中のお話ではあるけれども、当時を生きた人たちが現代を生きている私たちと同じように日々の苦難、人間関係での悩みなどに対峙している様子に向き合ってみて、抱えているものはいつの時代でも同じなんだと感じました。

テーマを一言で表現するのは難しいですが、人は何かと戦い、もがき、苦しみながらも前向きに生きている。そんな姿をお届けしたいです。

:戦争下が当たり前の中で生きた人たちの日常を決して劇的にではなく、淡々と描いているのがこの作品の魅力だと思います。戦争を題材にしたこれまでの作品とは明らかに違うものを感じているので、その確信した思いを観ていただきたいです。

海宝:原作やアニメを見たとき、登場人物の実在感をすごく感じたんです。当時を生きた人たちが僕たちと同じように悲しんだり、苦しんだり、家族になっていく過程でぶつかる困難、その中にある生々しさを音楽の力も借りながらお届けしたい。

音楽があることでお客様は物語に入り込みやすいと思いますので、そんな部分をたいせつにしながら作品と向き合っていけたらという心境です。

撮影:河井彩美

<公演概要> <公演概要>

ミュージカル『この世界の片隅に』

【東京公演】5月9日日(木)~30日(木)日生劇場

【北海道公演】6月6日(木)~9日(日)札幌文化芸術劇場hitaru

【岩手公演】6月15日(土)・16日(日)トーサイクラシックホール岩手 大ホール

【新潟公演】6月22日(土)・23日(日)新潟県民会館 大ホール

【愛知公演】6月28日(金)~30日(日)御園座

【長野公演】7月6日(土)・7日(日)まつもと市民芸術館

【茨城公演】7月13日(土)・14日(日)水戸市民会館 グロービスホール

【大阪公演】7月18日(木)~21日(日)SkyシアターMBS

【広島公演】7月27日(土)・28日(日)呉信用金庫ホール

公式サイト:https://www.tohostage.com/konosekai/

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