相場展望5月6日号 米国株: 戻り歩調だが、バフェット氏は米国株投資から離れる傾向 中国株: 過剰生産能力が適正規模まで縮小するまで苦難が続く 日本株: 揺らぐ日経平均、3本柱に変化の兆し

■I.米国株式市場 ●1.NYダウの推移 1)5/2、NYダウ+322ドル高、38,225ドル 2)5/3、NYダウ+450ドル高、38,675ドル

●2.米国株 : 米国株は戻り歩調にあるが、インフレ再燃のリスクが残る 米著名投資家バフェット氏は米国株投資から離れる傾向 1)NYダウは当面の底値でダブルトップを付け、戻り高値をチャレンジ中 ・NYダウの推移 3/28 39,807ドル 4/15 37,735 4/30 37,815 5/03 38,675

2)5/3雇用統計で雇用者数が大きく減少し、金利低下で株高へ ・米国の4月雇用統計で雇用者数が3月から大きく減退した。このため、利下げ期待が再燃に、長期金利は先安見通しが発生し低下。割高感が薄れたハイテクや半導体株が買われ、米国株は大幅高。 ・ただし、その他の経済指標の多くがインフレ再燃を示唆し、金利低下が続くか注視したい。

3)著名投資家バフェット氏率いるバ―クシャ社は手元資金3月末で約29兆円過去最高 ・アップル株を1~3月期で保有高の▲22.3%売却。アップル株保有残高 12月末 1,743億ドル ⇒3月末 1,354 ▲389億ドル減少 ・膨大な現金残高は、3カ月物債券で運用し、年率5%程度の利益をあげている。 ・この動きは、魅力的な投資案件が乏しいということを表している。アップル株の売却も、将来における成長鈍化を見込んで手放し、現金運用の方が確かだと判断したのだろう。

●3.ボウマンFRB理事、現在の政策スタンスを支持、インフレリスクは残る(ロイター) ●4.シカゴ連銀総裁、米雇用はなお堅調、景気過熱していないと確信(ロイター) 1)年内の利下げ確率についてはコメントを避けた。

●5.米4月ISM非製造業総合景気指数が49.4と、予想52から大きく下回る(ブルームバーグ) 1)この落ち込みは、4年ぶりの水準。 2)新規受注は2カ月連続で低下、仕入れ価格指数は3カ月ぶりの高水準。仕入れ価格指数は59.2と、前月の53.4から大幅上昇し、今後のインフレ見通しにとって気懸りな兆候を示した。(ロイター) 年内の政策金利の引下げについては、物価上昇率をFRB目標の+2%に鈍化させる道のりが停滞しており、疑問視する見方が依然としてある。

●6.米4月雇用統計で非農業部門雇用者数は17.5万人増と、予想24.3万人から鈍化(ロイターより抜粋 1)過去1年間の月間平均である24.2万人を下回った。

2)失業率は3.9%と、3.8%からわずかに上昇。

3)時間当たりの平均賃金は前年比で+3.9%上昇で、3月の+4.1%上昇からは鈍化。

4)「FRBの利下げを促すような低調な労働市場と呼ぶには程遠いが、十分な労働力と雇用と賃金の伸びの鈍化はインフレ抑制の一助となり、利下げの鍵となる」との声があった。

●7.米金利先物は、雇用者数の伸び鈍化で、9月利下げ確率が78%に上昇 (ロイター) ●8.米・先週分新規失業保険申請件数は20.8万件と、予想21.1万件を下回る (フィスコ) ■II.中国株式市場 ●1.上海総合指数の推移 1)5/2、祝日「労働節(メーデー)」で休場 2)5/3、祝日「労働節(メーデー)」で休場

●2.中国株:自動車・鋼材の過剰生産能力が適正規模まで縮小できるまで苦難が続く 1)自動車などの安値輸出攻勢で、欧米先進国との摩擦増加⇒貿易制限を招く ・世界市場へのデフレ輸出となり、欧米各国との貿易摩擦が増加⇒関税引上げ検討。 ・中国車の洪水的な輸出急増の要因は、政府からの補助金をベースにした不当な安値攻勢とみなされ、欧米諸国は関税引上げの方向で調査を始めた。 ・中国は、欧米諸国の関税引上げの状況を受け、アジア諸国などに輸出攻勢をかけ始めている。

2)中国が安値輸出をする要因は、過剰生産能力を維持したまま稼働率を確保するため ・自動車の生産能力は4,000万台まで増やしたが、中国国内の販売台数は2,200万台と大幅な過剰生産能力となっている。また、自動車メーカーが約400社と乱立したのも過剰生産に拍車をかけた。 ・中国国内でも自動車メーカーは値引きして販売している。このため、中国の自動車生産会社は、販売利益率低下と生産コスト高に見舞われ経営が厳しくなっている。 ・乱立した自動車メーカーが適正規模まで自動車生産能力を縮小するまで、この騒ぎが続くと思われる。

3)不動産バブル崩壊で、鋼材も需要が減少したため安値輸出が急増 ・鋼材メーカーは不動産業界からの需要減少で鋼材が過剰在庫となっている。生産量は維持し続けているため、過剰在庫は適正規模にならないだろう。 ・鋼材メーカーも値引きとコスト高で企業利益は減少し、企業の体力を失っていく。

●3.中国企業5,200社合計で5年ぶり減益、不動産が初の赤字(日経新聞) 1)中国の上海や深淵など中国本土市場の上場企業の業績が悪化している。約5,200社の2023年12月期の純利益は前期比▲3%減少した。減益は5年ぶり。不況の続く不動産が赤字に転落し、鉄鋼や建材などに波及した。好調な業種は自動車など一部にとどまった。デフレ圧力が強まる中国経済を反映しており、米欧は鉄鋼や車などの安値輸出に神経を尖らしている。

●4.中国製鋼材、安値で1~3月輸出量が+30.7%急増も、価格は▲33.4%下落 (東洋経済) 1)ダンピング輸出の要因は鋼材消費が減退 ・不動産業の投資縮小が続く。 ・地方政府の公共インフラ投資の計画遅延が目立つ。

2)課題は、鋼材メーカーが生産を維持し、鋼材在庫が減少しない ・ダンピング輸出が止まらない。

■III.日本株式市場 ●1.日経平均の推移 1)5/2、日経平均▲37円安、38,236円 2)5/3、祝日「憲法記念日」で休場

●2.日本株 : 揺らぐ日経平均、3本柱に変化の兆し 1)揺らぐ日経平均、3本柱に変化の兆し ・3本柱 (1)半導体関連企業は業績期待を上回る株価から株価修正に転換 ・主要な半導体関連株の株価推移 最高値 5/2株価 下落幅 下落率 ・信越化学 3/22 6,874円 ⇒ 5,989円 ▲885円 ▲12.8% ・アドバンテスト 3/04 7,380 ⇒ 5,107 ▲2,273 ▲30.8 ・スクリーン 3/06 20,045 ⇒ 16,640 ▲3,405 ▲16.9 ・東京エレクトロン3/06 39,600 ⇒ 35,010 ▲4,590 ▲11.5

(2)円安⇒円高へ、1週間で8円超える円高 ・円相場の推移 4/29 160円台 ⇒5/3 一時151円台後半(終値は152.83円) ・円高要因 ・米4月雇用統計発表で、雇用者数が+17.5万人増と予想以上に鈍化し、失業率が3.9%に上昇した。これを受け、米金利が低下し、日米金利差が縮小したことによる円高。 ・日本銀行が介入(合計で8~9兆円規模)を行ったとの観測。もっとも、日銀の為替介入の効果は一時的であり、大勢に影響はない。巨大な為替市場に飲み込まれるだけで、日本の国富を失うだけ。日米金利差の縮小や、国内の低金利資金が金利の高い米国に流れる条件の改善など本質にかかわる政策が必要と思われる。 ・ただし、日米の金利差が再拡大すると、再び円安に転換する可能性がある。 (3)米国株価がピークを迎えた可能性 ・NYダウの推移 下落幅 下落率 ・3/28 39,807ドル ⇒ 5/3 38,675 ▲1,132ドル ▲2.8% ・直近の米国株は4/15を底に、もみ合いを経て反発し戻り歩調にある。 ・しかし、チャートを中長期目線でみると、下落基調に転じたなかでの一時的反発とみることもできる。 ・日本株は、米国株に連動する傾向が高いため、米国株価の動向に注目したい。

●3.村田製作所、2023年3月期通期は減収減益、営業利益は前年比▲27.8%減(EE Times) 1)2025年3月期計画の営業利益は+39.2%増の3,000億円

●4.三菱商事、2024年3月期純利益は前年比▲18.4%減の9,640億円、石炭悪化(時事通信) 1)2025年3月期純利益は前年比▲1.5%減の9,500億円、液化天然ガスの市況悪化

●5.日本航空、2024年3月期最終利益は955億円黒字と前年比2.7倍(NHK) 1)2025年3月通期の最終利益は1,000億円と増益を見込む。

●6.日本郵政、米アフラックを持分法適用会社に、純利益500~600億円押し上げ(共同通信) 1)日本郵政は収益源確保のため、全国郵便局でアフラックがん保険を取り扱っている。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします) ・2685 アダストリア 業績堅調 ・3141 ウエルシア 業績堅調 ・3865 ブロードバンドタワー 黒字化 ・4523 エーザイ 業績好調

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