「プロレス界全体で力を合わせてこれか?無理してやる必要無いよ」ガラガラだったALL TOGETHERの開催意義をタイチが問う

6日、東京都・日本武道館にて『ALL TOGETHER~日本プロレスリング連盟発足記念・能登半島復興支援チャリティ大会~』が開催された。

2020年に馳浩衆議院議員(現:石川県知事)が会長となり『超党派 格闘技(プロレス・総合格闘技等)振興議員連盟総会』が設立。世界中がコロナ禍に見舞われた際に団体間で結束しようとしたものの、プロレス界の意見を集約する既存の業界団体が無かったことから政治の力を借りて難局を乗り切った過去がある。
今回の連盟は、坂口征二氏が会長となり、新日本プロレスリング株式会社が事務局となる形で発足。新日本、スターダム、全日本、NOAH、DDT、ガンバレ☆プロレス、東京女子、大日本、DRAGON GATEの9団体により業界団体が設立された。

プロレス業界共通の課題の解決に向けて意見交換・情報交換を行える場所を確保して業界の持続的発展を図っていく他、国内のみならず海外に向けて日本のプロレスの現状を発信、プロレスラーならびにプロレス興行会社の社会的地位向上、選手の健康・安全(ネットリテラシーを含む)のための統一的な仕組み作り、負傷したレスラーの支援興行などの企画といった活動内容が語られていた。

今大会はプロレス界にとって特別な意味が込められた『ALL TOGETHER』の名を冠するものであったが、日本武道館という大会場での開催であることを考えるとさみしい客入りに。

この日、試合を終えたタイチは、「こんなこと言ったら怒られるかもしれねーけどよ、今日何人入ってんだ?オールスター戦みたいなもんじゃねーのか?ナントカカントカプロレスリングナントカ、立ち上げたんだろ?武道館札止めになってんのか?プロレス界全体がここに集まって何人入ってんだ?そんなんだったら無理してやる必要無いんじゃないか。チャリティだって別の形で出来るし。全団体が来て力を合わせて、この結果はなんだよ。プロレス界全体の力がこれか?全員揃ってこれって、全員の顔が潰れるよ。新日本プロレス1つでやってた方が入ってたんじゃねーのか?ちょっと考えたほうがいいぞ」とこの日の客入り及び『ALL TOGETHER』という大会の意義そのものについて言及した。

今大会では、新日本、スターダム、DDT、NOAH、DRAGON GATE、大日本の6団体から出た選手で全8試合を構成。
かつてはプロレス界のそこかしこに“禁断の扉”が存在し、扉が1つ開いただけで皆が一喜一憂してきた。しかし、現在は業界全体で団体間・選手間の交流を推進していく流れが出来ており、至るところで開けっ放しにされるようになった扉はかつての価値を失っている。

この日は各試合後にほぼすべての選手がバックステージでのインタビューに応じていたが、連盟の発足や能登半島地震のチャリティについて、さらにALL TOGETHERというイベントそのものについて言及した選手はごく少数。ほとんどの選手が自身の次なる対戦カードについてや、自団体の次期大会シリーズへの“煽り”としてのコメントを残していた。

そんな中で、特にALL TOGETHERへの思いを強く語ったのは高橋ヒロムとMAOの2名。

ヒロムは「チャリティはいい。ALL TOGETHER、いいよ。言葉の響きは素晴らしい。能登の皆さんの前で試合を見せたいよね。今はまだ出来ないけど、無料興行とか、無料ALL TOGETHERとかやって力を与えたいじゃないですか!今俺たちレスラーはお客さんから力をもらってばっかりですよ!返さないと!それを!」と語って使命感と焦燥感を示し、もっと能登の人々に直接的に元気を与える機会を求めた。

また、宮城県出身のMAOは当時中学生であった2011年に起きた東日本大震災で被災した過去がある。
MAOは「宮城の中学生だったときに地震大変だったんですけど、あのとき僕はALL TOGETHERで夢を見て、こうやって今日ALL TOGETHERに立つことが出来てメッチャ嬉しいです。続けてればいいことあるぜ。いつか、このALL TOGETHERを見て勇気付けられたってガキンチョが大人になってレスラーになって僕たちの前に立ってくれたら……嬉しいよね」と『ALL TOGETHER』という大会の精神を体現するコメントを残した。

この大会ではプロレス界の“未来”が強調されていたが、有名無実化した“過去”の成功例たる『ALL TOGETHER』という大会に固執する必要はないのかも知れない。

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