【ミャンマー】少数民族「軍政打倒」作戦、政変前から準備[政治]

ミャンマーの少数民族武装勢力「アラカン軍(AA)」の幹部は、同勢力を含む3勢力による国軍への一斉攻撃「作戦1027」の準備に「約5年かかった」と明らかにした。軍政打倒などを掲げて6カ月以上前に開始した作戦だが、軍事クーデターが勃発した2021年2月より前から計画が始まっていたこととなる。背景には、長年続く民族紛争や各民族内の権力闘争がある。

各民族の主張を伝えるビルマ・ニュース・インターナショナル(BNI)が運営する「ミャンマー・ピース・モニター」が4月30日に発表した報告書によると、アラカン軍のニョトゥンアウン副司令官がインタビューに応じ、「大規模な『作戦1027』の準備に約5年かかった」と打ち明けた。3勢力の調整は、新型コロナウイルス禍により遅延したという。

同作戦はアラカン軍とミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)、タアン民族解放軍(TNLA)の3勢力で構成される「兄弟同盟」が23年10月27日、北東部シャン州北部で開始した。3勢力は同作戦開始時の声明で、軍政打倒や、中国政府が問題視する国境地域の特殊詐欺への反対などを盛り込んでいた。

ニョトゥンアウン氏は「(少数民族武装勢力が乱立するミャンマーで)『作戦1027』は史上初めて複数の勢力が連携して国軍を攻撃したものになった」と話した。コーカン民族勢力であるミャンマー民族民主同盟軍は、同じくコーカン民族で国軍に協力的な勢力が支配していた、中国国境沿いのコーカン自治区を「奪還」。アラカン軍は11月に西部で攻撃に出て、北西部チン州パレワや西部ラカイン州の複数の郡区を占拠している。

中国の介入によりシャン州北部では一時停戦に至ったが、国軍の弱体化を印象付け、他地域における国軍と抵抗勢力との戦闘激化をもたらした。アラカン軍はラカイン州を中心とする攻撃が単独作戦であり停戦の対象外だとして、攻撃を続けている。

報告書では、国軍幹部による独裁体制の排除がミャンマー国民の悲願であり、「作戦1027」はクーデター後に生まれた「民族革命勢力(ERO)」の支持を得たと説明した。「民族革命勢力」は、民主派武装組織などを含む軍政への抵抗勢力の総称として使われるようになってきている。ただ、報告書では、各民族が平等に政治参加できる国家を確立するためには長い交渉が必要だと指摘している。

報告書は、中国がどう介入してくるかが状況を左右するとも指摘し、「中国は国軍と抵抗勢力のどちらを選ぶか」と疑問を呈した。国軍、中国政府の影響力が強いとされる兄弟同盟の3勢力、民主派政治組織「挙国一致政府(NUG)」など各勢力はそれぞれ、中国の動向を警戒しつつも秋波を送っている。

© 株式会社NNA