【タイ】花王が環境に優しい包装材[製造] ダウ、SCGとタイで共同開発

花王の製品はタイ社会に浸透している=2日、タイ・バンコク(NNA撮影)

花王のタイ子会社、花王インダストリアル(タイランド)がESG(環境・社会・企業統治)活動を強化している。タイの素材最大手サイアム・セメント(SCG)の化学品子会社SCGケミカルズと米化学大手ダウ・ケミカルのタイ法人ダウ・タイランド・グループとリサイクルに適した包装材の開発を進める。衣料用洗濯洗剤など自社の日用品に活用することで、タイで循環型社会の実現を目指す。

花王インダストリアル(タイランド)は花王初の海外拠点として1964年に設立。今年は60年目にあたる節目の年だ。

花王インダストリアル(タイランド)は現在、タイで10ブランド・500アイテムの日用品を販売している。住居用洗剤「マジックリン」と家庭用漂白剤「ハイター」は、タイで長年シェアトップの座を維持。洗濯洗剤「アタック」や紙おむつ「メリーズ」などのその他のブランドも3位もしくは5位圏内に位置する。年間の売上高は約600億円。花王インダストリアル(タイランド)の清水祐二社長は「『花王』という会社名は知らなかったとしても、花王のブランド名はしっかりとタイ社会に浸透している」と話す。

花王インダストリアル(タイランド)は、タイで販売する製品の8割を東部チョンブリ県にある工場で生産している。同社は昨年12月、ESG活動の一環として、環境負荷の少ない容器包装を目指し、SCGケミカルズとダウ・タイランド・グループと共同でリサイクルに適した包装材の開発を進めると発表した。清水社長は「2027年をめどにタイで生産する全ての商品をリサイクル可能な包装材に切り替えたい」と意気込む。

タイの化学業界の関係者によると、タイのプラスチックの消費量は年間200万~400万トンに達し、今後も増え続ける見通しだ。英調査会社のテックナビオは、タイのプラスチック市場は24~28年の5年間に規模が107億5,000万米ドル(約1兆6,000億円)ほど拡大すると推測する。一方で使用済みプラスチックのリサイクル比率は現在20%と、先進国の40~50%と比べて低い水準にとどまる。

花王インダストリアル(タイランド)はSCGケミカルズ、ダウ・タイランド・グループとリサイクルに適した包装材の開発を進める(花王インダストリアル提供)

■再生プラを使用

花王インダストリアル(タイランド)は、SCGケミカルズとの協力を通じて、包装容器のプラスチックを既存のプラスチックからのリサイクル材料で製造した「ポストコンシューマーレジン(PCR)プラスチック」に置き換えることで、石油由来のポリエチレンやポリプロピレンを原料とするバージン(新品)プラスチックの使用量の削減につなげる。SCGケミカルズは、回収したプラスチック廃棄物を分別・洗浄し、プラスチックペレットに再生する技術を持つ。ただ一方で、PCRの含有率を100%にするのは技術的なハードルが高く、容器の製造コストもかかる上に、外観の透明度も高くないといった克服すべき課題もある。花王インダストリアル(タイランド)は、植物由来の成分を使ったバイオプラスチックへの切り替えも並行して進めていく。

■詰め替え材もエコに

花王インダストリアル(タイランド)はこれまで、液体洗剤や住居用洗剤などは詰め替え用パック(フィルム容器)の普及を通じて、バージンプラスチックの使用量を減らしてきた。しかし、詰め替え用パック自体は、再生利用に向かないという課題を抱える。湿気や紫外線などから中身を守ったり、光や空気を通さないようにしたりするために、複数の性質の異なるプラスチックを重ねた「多層構造」になっているためだ。詰め替え用パックをリサイクルに適したものにするには単層化・単一素材化する必要があるが、「技術的な難易度は高い」(清水社長)という。そこでフレキシブルフィルム包装材の製造を手がけるダウと手を組んで、これらの技術的な課題を克服していく考えだ。

「2027年をめどにタイで生産する全ての商品をリサイクル可能な包装材に切り替えたい」と意気込む清水社長=4月22日、タイ・バンコク(NNA撮影)

■蚊よけ商品好調

花王インダストリアル(タイランド)はESG活動の一環として、タイで昨年感染者数が急増したデング熱対策にもこれまで以上に力を入れる。忌避成分を抑えながら、蚊が止まりにくい状態に肌を整える新しいタイプの蚊よけ商品「ビオレガード モスブロックセラム」のヒットに続き、今度は蚊を駆除するスプレーをアース製薬と共同で開発した。7月からの発売に向け、きょう7日に首都バンコクでお披露目する予定だ。

ビオレガードについては、すでにシンガポールとマレーシア向けに輸出しており、インドネシアやベトナム、ブラジルなど仕向け地を拡大する。夏にタイを訪れた日本人観光客が購入するというインバウンド需要も拡大しているという。

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