『アンメット』井浦新が見せるダークな横顔 杉咲花の治療をめぐって若葉竜也と敵対関係に

『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)第4話は、病院内外の対立が浮き彫りになった。

三瓶(若葉竜也)を信頼して脳の検査を受けたミヤビ(杉咲花)だったが、結果は記憶障害の原因が存在しないという意外なものだった。頭を抱える三瓶。ミヤビからそのことを聞いた大迫(井浦新)は、旧知の三瓶について「軽々しく患者に希望を見せる危険な医者」と語る。

第4話では、大迫に注目が集まった。大迫と川内家の絆は14年前にさかのぼる。大迫はミヤビの母·あかり(黒沢あすか)の手術を担当し、医師を目指すミヤビの成長を見守ってきた。三瓶は婚約者であるミヤビの記憶障害を治すため、海外で経験を積んで日本に戻ってきた。ミヤビは三瓶に強く勧められ、大迫の後押しもあって医師に復帰できた。三瓶は過去に大迫に指導を受けていたことがある。旧知の仲にもかかわらず、三瓶と大迫の間にはよそよそしい空気が流れていて、ミヤビをめぐって二人の不協和音は大きくなる。

患者を治療する医師として、三瓶と大迫のポリシーは対照的だ。そのことは、7歳の少年・翔太(宮崎奏佑)の治療をめぐって表面化する。脳の松果体にできた腫瘍を、無理に取らないほうがいいと大迫は言う。放射線治療によって腫瘍は癒着しており、全摘出は危険であること、一部を残しても生存率は高いことがその根拠である。対する三瓶は、全摘出を目指すべきと譲らない。三瓶の主張は渡米時の経験に基づいていた。

有無を言わさずにメスを執った三瓶に、大迫は「君がしているのは医療じゃない。自己満足だ」と言い、患者の家族に「安易に希望を持たせたこと」を許せないと責める。三瓶がしたことは、本来なら許されないことだ。結果的に手術は成功したが、もし失敗したら大きな問題になる。積極的に病巣を除くことで完治を目指す三瓶と、患者の命を最優先にする大迫のスタンスの違いは、ミヤビの治療方針にも当てはまる。記憶障害の原因を解明しようとする三瓶は、最終的にミヤビの記憶を取り戻したいのだろう。大迫が反対したのは、治療によってミヤビにかかる負荷を軽減するためと思われたが……。

三瓶、大迫に加えて、もう一人、忘れてはならない人物がいる。大迫と同じ関東医大に所属する脳外科医の綾野(岡山天音)は、ミヤビから脳動脈瘤の患者の相談を受けた。ミヤビが担当した加瀬誠(前原瑞樹)には未破裂の脳動脈瘤があった。破裂するリスクは年間1%だが、開頭手術をすれば50%以上の確率で重度の障害が残り、最悪の場合、死に至る。開頭手術とリスクの小さいカテーテル手術のどちらを採用すべきか、悩んだ末にミヤビはカテーテルの専門医である綾野に相談した。

綾野はミヤビに好意を寄せており、そのことを知る三瓶との恋のさや当ての予感もあるが、綾野は西島医療グループの令嬢である麻衣(生田絵梨花)と婚約中で、波乱の気配はそこまでない。それよりも麻衣の暗躍が気にかかる。綾野との政略結婚に応じた麻衣は、綾野がミヤビと会っていると知り、心中穏やかではない。ミヤビのカルテを見せてほしいという三瓶の頼みを勝手に断ったり、ひそかにミヤビと接触するなど、人間関係をかき回しにかかる。裏には祖父である西島秀雄(酒向芳)と大迫の影があった。

記憶のないミヤビは毎朝、日記を読み返すことで過去の軌跡をたどる。そこから得た知識を元に、まっさらな状態から人間関係を築く。記憶が上書きされないことは、日々の生活に新鮮な驚きを与える一方で、周囲の人間からすれば、それまで築いてきた関係がリセットされることに、歯がゆさを覚えることもあるはずだ。ミヤビを受け入れる仲間の優しさが胸に沁みるが、記憶がないのをいいことにミヤビを利用しようとする人間がいてもおかしくない。脳をめぐるミステリーにサスペンス要素も加わった『アンメット』から目が離せない。

(文=石河コウヘイ)

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