GLAY【グラマラス・ロック列伝】佐久間正英のプロデュースとバンドの “青臭さ” が結実!  国民的ロックバンドに成長したGLAYの基盤となった名盤「SPEED POP」

リレー連載【グラマラス・ロック列伝】vol.6- GLAY

デビューからわずか2年で国民的ロックバンドに急成長したGLAY

1988年にTAKUROとTERUを中心に結成されたGLAYは、1996年にリリースされたセカンドアルバム『BEAT out!』で初のオリコンチャート1位を獲得。同年にリリースされたサードアルバム『BELOVED』は150万枚を超えるセールスを記録。続く『pure soul』、そして『HEAVY GAUGE』は共に200万枚超え。

1994年5月25日のメジャーデビューからわずか2年で名実共に国民的ロックバンドへと急成長し、97年にリリースされた初のベストアルバム『REVIEW-BEST OF GLAY』は当時歴代レコードセールス最高である約488万枚を記録。この輝かしい記録は決して過去の栄光にはならず、バンドは現在も継続中だ。来たる5月29日にはデビュー30周年の記念シングル「whodunit -GLAY × JAY(ENHYPEN)- / シェア」をリリースする。

BOØWYが解散した1988年に結成

彼らの結成年である1988年は、東京ドームで2日間行われた『LAST GIGS』を最後にBOØWYが解散した年でもある。彼らの熱烈フォロワーであったGLAYがこの年に結成し、バトンを渡されたかと思うとなんとも感慨深い。

BOØWYには多種多様な海外アーティストからの音楽的背景があった。マーク・ボランのグラムロック的アプローチを基盤とする布袋寅泰のギターセンスやパンクロック、ニューウェイブ的なエッジの効かせ方、ホール&オーツを経由したモータウン的なダンサブルビート… 書き出せばキリがないのだが、そんな多彩な背景を持ちながら80年代に日本のロックの雛形を作り上げた。

しかし、GLAYの音楽性からはそういった洋楽的背景よりも “ニッポンのロックバンド” らしさを強く感じる。これは決して悪いことではない。いや、素晴らしいことだと思う。極端な言い方をしてしまえば、80年代も終わりに差し掛かれば、ロックバンドを始めるのに洋楽を聴く必要がなくなったということである。それだけ先人たちが築き上げた日本のロックシーンが熟成したということである。これをフォーマットにしてさらなるシーンの拡大に大きく貢献したのがGLAYである。

TERUのボーカルをより際立たせるために一意専心したバンドサウンド

GLAYは先述したBOØWYや1986年にメジャーデビューしたUP-BEATのスタイリッシュさを極めた真新しかったロックの様式美をより幅広く、90年代という時代に浸透させた。しかし、それは模倣ではなく極めて独自性の高いオリジナリティだった。

80年代のロックバンドと大きく異なるGLAYのオリジナリティは、TERUのボーカルありきの音の組み立て方だ。ボーカルが、ギター、ベース、ドラムと絡み合って生まれるグルーヴありきというバンドサウンドとは一線を画し、エモーショナルなTERUの個性をより際立たせるために一意専心したバンドサウンドが最大の特徴ではないだろうか。確かに初期の頃は、従来のグラマラスロック系の混沌としたダークな一面も垣間見られたが、マーケットが拡大されるにつれて、キャッチーで誰もが口ずさめるような楽曲が増えていった。

アンダーグラウンドな地下室の匂いが拭えなかったロックのパブリックイメージを青空のもとに連れ去り、1999年には、今や伝説となった幕張メッセの駐車場特設ステージで開催された『GLAY EXPO ’99 SURVIVAL』で20万人という観客を動員。この日の模様は音楽メディアのみならず、スポーツ紙、一般紙でも大々的に取り上げられ社会現象となる。

快進撃の基盤となっているメジャーデビューアルバム「SPEED POP」

このようなGLAYの快進撃の中で基盤となっているのが、95年にリリースされたメジャーデビューアルバム『SPEED POP』だろう。プロデュースは佐久間正英。80年代には、GLAYがフェイバリットとして挙げているBOØWYやUP-BEATを手がけ、シーンの開拓に大きく貢献した佐久間の手腕が、国民的ロックバンドへの階段を駆け上るGLAYの音楽性を開花させた。

本作には、ラウドなギターサウンド「HAPPY SWING」からピアノの旋律が美しいラブバラード「ずっと2人で…」、ダンサブルなビートでミクスチャー的要素を全面に打ち出した「LOVE SLAVE」などバラエティに富んだ楽曲が収録されているが、佐久間は見事なまでにアルバムとしての統一感を持たせ、TERUのボーカリストとしての個性を全面に打ち出している。TERUのボーカルは、時にはエモーショナルに、時には繊細に、感情の起伏を見事に具現化させ、聴き手の心に余韻を残す。

そして、そこには誰もが青春時代を思い出す “青臭さ” が内包されている。これがGLAYの一番の魅力なのかもしれない。どんなにシングル、アルバムが売れて国民的バンドに成長しても、手が届きそうな場所に居てくれる “青臭さ” がファンを魅了しているのだ。それは彼らが本来持ち得ている優しさかもしれない。国民的バンドGLAYはメジャーデビュー30周年を迎え、さらなる飛躍を期待されながら、今もファンの手に届くような存在なのだ。

カタリベ: 本田隆

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