「富士山」を見るために登る「絶景ハイキング&登山」ルート5選!

釈迦ヶ岳の山頂から望む、御坂山脈(みさかさんみゃく)と富士山(撮影:河野美花)

日本が世界に誇る世界遺産、富士山。都心のビルや移動中の車窓などから、わずかでもその姿を認めると、不思議と幸せな気持ちになる。そんな人も多いのではないだろうか。

また、全国各地に「富士見」と付く地名が多くあるのも、昔から日本人が富士山に憧れを抱いていた表れでもある。近年では、海外旅行客からの富士山人気も凄まじい。週末ともなれば、富士五湖周辺の観光名所には、海外からのツアー客を乗せた大型バスがひっきりなしに出入りするほどだ。

そこで今回は、日本のシンボルとして広く愛されている富士山の勇姿を、山頂で心ゆくまで堪能できる5つの山を紹介したいと思う。登頂した先には、平地から見る山容とは全く異なる、大迫力の富士山が待っている。

■大平山(山梨県南都留郡山中湖村) 眼下に山中湖が広がる富士ビュースポット! 夕日による赤富士にも期待!

標高:1,296m
標高差:368m
歩行距離:5.6km
コース時間:150分

富士山北東部、山中湖畔に位置する標高1,296mの大平山(おおひらやま)。富士山頂との直線距離が16.7kmと近く、大平山山上からは、裾野まで見渡せる富士山と山中湖とのコラボレーションが楽しめる。

長池親水公園(ながいけしんすいこうえん)の無料駐車場を利用し、湖沿いのマリモ通りから、グランピング施設や別荘の立ち並ぶエリアの舗装された坂道を40分ほど進むと登山口に着く。

登山口から山頂まではおよそ50分の道のりだ。分岐点には標識があるので、迷う心配はないだろう。途中、長池山(ながいけやま)と飯盛山(めしもりやま)の2つのピークを越えるが、道中は緩やかなアップダウン程度なので安心だ。時折、山中湖と富士山が見え隠れするが、大平山の大展望が待っているので先を急ごう。

山頂には東屋が設けられているので、腰を下ろして絶景をゆっくり楽しみたい。正面に雄大な富士山、眼下に山中湖が広がる。帰路は、直接山中湖に下りる道を使おう。山頂から長池親水公園までは約3㎞、60分ほどで到着できる。富士山と山中湖の景色を楽しみながら下山しよう。

【周辺の観光スポット】
・水陸両用バス(KABAバス)
・花の都公園(5月〜6月ネモフィラが見頃)
・忍野八海(おしのはっかい)
・ハンモックカフェ(PICA山中湖内)

■杓子山(山梨県富士吉田市) 関東富士見百景にも選出されている山梨百名山

標高:1,597m
標高差:895m
歩行距離:8.6km
コース時間:270分

山梨県富士吉田市にある杓子山(しゃくしやま)は、関東富士見百景にも選出される、富士見登山の人気スポットだ。山頂と富士山との間には忍野(おしの)の村が広がっており、遮るものがない。山頂へのコースは大きく分けて2つあり、1つは二十曲峠(にじゅうまがりとうげ)から3つのピークを越えるコース。

もう1つは鳥居地峠(とりいちとうげ)から高座山(たかざすやま)を経て山頂に至るコース。両方とも片道約2時間~2時間半ほどではあるが、後者のほうが総じて歩きやすく、また道中の景色も良いのでおすすめだ。なお駐車場はどちらにもある。

今回は後者の、鳥居地峠からのコースを紹介したい。登山口の鳥居地峠から、標高1,304mの高座山までは約1時間、ススキの間を縫うように歩く登山道は気持ちがよく、振り返ると富士山が見られるという贅沢極まりないコースだ。ただし、途中ロープを伝って登る箇所もあるので、富士山に見惚れて注意を怠ることのないようにしてほしい。

高座山から大権首峠(おおざすとうげ)を経て、杓子山までは1時間半ほどを見ておこう。途中、富士山に向かって飛んでいくように設置されたハンググライダーの離陸場があるので見学してみよう。

山頂には、6人掛けのテーブルとベンチが3組設置されている。杓子山の山頂にある名物「天空の鐘」を厳かに打ち鳴らし、登頂を祝おう。なお、帰路は登ってきた道を引き返すピストン山行となる。登山口の鳥居地峠までは、富士山を眺めながらの約2時間の道のりだ。往復5時間弱の行程だが、その苦労に見合う絶景が待っているので、ぜひチャレンジしてほしい。

【周辺の観光スポット】
・道の駅 富士吉田(モンベルショップや地物野菜の直売所)
・山梨県立 森の中の水族館(忍野村内にある淡水魚の水族館)

■釈迦ヶ岳(山梨県笛吹市) 御坂山地越しに望む富士山は「最高」のひと言!

標高:1,641m
標高差:426m
歩行距離:4.1km
コース時間:160分

山梨県笛吹市(ふえふきし)にある釈迦ヶ岳(しゃかがたけ)は、標高1,641mの山梨百名山の1つだ。登山口である「すずらん群生地駐車場」までは、河口湖ICより車で約40分。約50台の無料駐車スペースが利用できる。

駐車場からの歩き始めは30分ほど続く急登だが、分岐点から先は気持ちの良い尾根道歩きが楽しめる。山頂直下の岩場を越えると、2体のお地蔵様がにっこりと出迎えてくれる。分岐点から山頂までは、府駒山(ふこまやま)を経て約60分の道のりだ。スタート直後の急登を除けば、比較的アップダウンの少ない道が続くので安心。

山頂では南アルプスや八ヶ岳までも見渡せる、360度の大パノラマが待っている。岩肌剥き出しの山頂から望める、青々とした山容の御坂山地(みさかさんち)と、富士山のくっきりとしたシルエットが特に美しい。

釈迦ヶ岳の絶景を堪能したら、来た道を戻ろう。行きと同じく、府駒山を経由してすずらん群生地駐車場に戻るコースだ。帰路のコースタイムはおよそ70分だ。

【周辺の観光スポット】
・大石公園(河口湖沿いにある、ハーブや芝桜が見もの)
・河口湖 音楽と森の美術館(アンティークオルゴールの博物館)
・富士急ハイランド(絶叫系マシン多数の遊園地)

■パノラマ台(山梨県南都留郡富士河口湖町) 富士山の大きさを改めて感じる近さ! 大室山を抱くような子抱き富士

標高:1,328m
標高差:483m
歩行距離:4.6km
コース時間:130分

富士五湖で最も小さい精進湖(しょうじこ)の西岸に位置する標高1,328mのパノラマ台は、登山デビューに最適の山として取りあげられることが多い、絶景富士見ビュースポットだ。

精進湖の「パノラマ台駐車場」に隣接するパノラマ台下登山口から、根子峠(ねことうげ)まで約50分。根子峠からは約20分で「パノラマ台山頂」に着く。

山頂では、目の前いっぱいに広がる大迫力の富士山はもちろん、裾野に広がる青々と茂った富士の樹海や、手前にある大室山(おおむろやま)を抱いたように見える、「子抱き富士」を見ることができる。

下山路は、来た道を引き返すピストンになる。一度通った道なので、安心感がある。山頂からの下山、パノラマ台駐車場までは約1時間の行程となる。

【周辺の観光スポット】
・鳴沢氷穴(神秘的な溶岩洞窟)
・道の駅 なるさわ(富士山を見ながら入浴できる温泉が人気)

■竜ヶ岳(富士河口湖町・身延町) 山裾まで見渡せる圧巻大パノラマが魅力! 冬はダイヤモンド富士が人気!

標高:1,485m
標高差:620m
歩行距離:5.7km
コース時間:240分

竜ヶ岳(りゅうがたけ)は、山梨県南巨摩郡身延町(みなみこまぐんみのぶちょう)と富士河口湖町の境に位置する。年末年始にはダイヤモンド富士が見られる山としてハイカーから人気を集めている。なだらかで歩きやすく標識も豊富なため安心して登れる、富士山西麓を代表する山の1つである。

駐車場のある本栖湖キャンプ場へは、中央自動車道・河口湖ICから30分ほど。登山口のある本栖湖キャンプ場登山口から「見晴台」までは2.5km、約100分の道のりだ。熊笹の間を縫うように走る登山道がとても気持ちよく、顔をあげると富士山がぴったりと寄り添ってくれるように感じられる。「見晴台」からは富士山のほか、南アルプスや富士の樹海、大室山を見ることができる。

「見晴台」からの絶景を堪能したあとは、山頂に向かおう。「見晴台」から山頂まではおよそ50分の道のり。山頂は広々としており、富士山を眺めるためだけに用意された舞台のようで、思う存分富士山と向き合うことができる。

太陽が山頂と重なった瞬間に輝く現象「ダイヤモンド富士」が見られる有名スポットでもあり、元旦には大変多くのファンが山頂に集まる。ちなみに筆者もそのひとりである。なお、下山には周回コースが使用できる。山頂から分岐点まで戻り、湖畔登山口方面へ下山。本栖湖キャンプ場まで90分の道のりだ。

【周辺の観光スポット】
・ふもとっぱらキャンプ場(広大な敷地の人気キャンプ場)
・道の駅 朝霧高原(あさぎりこうえん)
・まかいの牧場(ソフトクリームが絶品の牧場。餌やり体験もできる)

■まとめ

登山の道中、綺麗な花や動物との出会いを楽しみにしている人も多いことだろう。それと同じように富士山の絶景にこだわった山登りもある。天候や雲の様子はもちろんだが、登る山によっても富士山は違った様相を見せてくれる。富士山の本当の大きさは、平地から知ることはできない。

まずは自身の体力に合わせた「富士見スポット」からチャレンジしてほしい。そこにそびえる富士山から、圧倒されるほどの衝撃と感動が得られるはずだ。あなたの楽しみにしている登山が、良い天候と素晴らしい景色に恵まれることを願っている。

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