半数以上の小規模事業場はストレスチェック未実施!東京労働局「メンタルヘルス対策等自主点検実施結果」

2024年3月16日、東京労働局は「メンタルヘルス対策等自主点検実施結果」(以下、自主点検結果)を公表しました。
これは職場におけるメンタルヘルス対策などの自主的な取組を促すために実施しているもので、東京労働局管内における従業員数10人以上の事業場のうち、670事業場から有効回答を得ています。

また、東京労働局では、2023年3月8日付で「第14次東京労働局労働災害防止計画」(計画期間2023年4月~2028年3月。以下、14次労働災害防止計画)を策定、「労働災害防止対策」「健康確保対策」「健康障害防止対策」などの観点から計画目標となるアウトプット指標を設定しました。
このうち、「健康確保対策」については、各アウトプット指標を各事業場が実施した結果として期待されるアウトカム指標として「自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスがあるとする労働者の割合を2027年までに50%未満とする」を定めています。

以下では、自主点検結果について、14次労働災害防止計画のアウトプット指標(健康確保対策)と照らし合わせながら解説していきます。

9割近くの事業場がメンタルヘルス対策に取り組んでいる(アウトプット指標:2027年までに80%)

まず、全体的なメンタルヘルス対策です。
14次労働災害防止計画では、アウトプット指標として「メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を2027年までに80%以上とする」と定めています。
自主点検結果によると、全体の89.4%がメンタルヘルス対策に取り組んでおり、上位3つは「相談体制の整備(82.4%)」、「医療機関等へ取り次ぐ体制の整備(76.4%)」、「メンタルヘルス推進担当者を選任している(73.3%)」でした(複数回答可)。

いわゆる「パワハラ防止法」により、2022年4月以降はすべての企業でハラスメント用の相談窓口設置が義務づけられています。
今回の自主点検結果は、あくまで「メンタルヘルス対策」の視点ではありますが、相談体制、相談窓口に関してはハラスメントとメンタルヘルス双方に対応している企業も多く、それゆえこのような結果になったのではないかと考えられます。

小規模事業場のストレスチェック実施率は47.2%(アウトプット指標:2027年までに50%)

続いて、ストレスチェックの実施率です。
14次労働災害防止計画では、アウトプット指標として「50 人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合を2027 年までに50%以上にする」と定めています。
自主点検結果によると、全体でのストレスチェック実施率は70.1%でした。
内訳としては、50人以上の事業場が実施率96.8%、50人未満の小規模事業場は47.2%でした。

ストレスチェックについては、従業員50人以上の事業場で実施が義務、また50人未満の小規模事業場でも実施が努力義務とされていますが、事業場の規模にかかわらず、従業員のメンタルヘルス対策の観点から実施が望まれます。
また、ストレスチェックを実施にとどまらず、結果にもとづいた集団分析、および手段分析を活用した職場環境改善へとつなげていくことが求められています。

9割近くの事業場が、必要な産業保健サービスを提供している(アウトプット指標:2027年までに80%)

最後に、従業員への産業保健サービスの提供状況です。
14次労働災害防止計画では、アウトプット指標として「必要な産業保健サービスを提供している事業場の割合を2027年までに80%以上 とする」と定めています。
自主点検結果によれば、なんらかの産業保健サービスを提供している事業場が全体の87.8%を占めていました。

このうち、取り組み内容として最も多いのは「定期健康診断結果に基づく保健指導の実施(77.0%)」でした。
また、「治療と仕事の両立支援(51.0%)」は、近年の大きなテーマであり、厚生労働省からも「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」が公表されています。
現時点では対象者がいない事業場でも、余裕を持った体制整備をしておくのが望ましいでしょう。

今回は、東京労働局の自主点検結果について、14次労働災害防止計画のアウトプット指標と照らし合わせながら見ていきました。
すでに多くの事業場では「メンタルヘルス対策」や「産業保健サービス」の提供が行われていることがわかりましたが、一方でそれぞれ1割以上の事業場において未実施・未提供であることがわかります。
働いている事業場の規模にかかわらず、働く人すべてに必要なサービスが提供される社会を願ってやみません。

<参考>
・ 東京労働局「メンタルヘルス対策等自主点検実施結果について」
・ 東京労働局「Safe Work TOKYO~労働災害防止のための取組を推進中です~」
・ 厚生労働省「治療と仕事の両立について」

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