中国の推理作家、ミステリー専門書店にかける思い 上海市

中国の推理作家、ミステリー専門書店にかける思い 上海市

自身が経営する書店「謎蕓館」の入り口に立つ推理作家の時晨氏。(4月18日撮影、上海=新華社記者/有之炘)

 【新華社上海5月7日】中国上海市楊浦区に推理小説に特化した書店「謎蕓館(ミステリーブックス)」がある。オーナーは1987年生まれの中国の推理作家、時晨(じ・しん)氏で、開業して1年余りがたった。

 真っ白な外壁にグレーのコンクリート床。謎蕓館のシンプルなたたずまいは、推理小説の神秘性と絶妙にマッチしている。60平方メートル足らずの店内には、エドガー・アラン・ポー、アガサ・クリスティ、東野圭吾、綾辻行人、馬伯庸(ば・はくよう)、孫沁文(そん・しんぶん)ら世界の推理作家の作品が、国別に分類されて並ぶ。中には時氏の代表作も見られる。

 時氏がミステリー文学に目覚めたのは中学2年の頃。分厚い「シャーロック・ホームズシリーズ」で探偵小説の魅力にはまった。

 大学時代には作品の投稿に挑戦し、初めての短編を推理雑誌に発表した。以来、相次いで作品を執筆し、推理小説界で徐々に名が知れ渡っていった。これまでに長編推理小説15作品を世に出している。

中国の推理作家、ミステリー専門書店にかける思い 上海市

「謎蕓館」の棚に並んだ推理小説。(4月18日撮影、上海=新華社記者/有之炘)

 推理作家が開いたミステリー小説専門書店は、瞬く間にネット上で話題となった。謎蕓館の来店客のうち最年少は中学生だが、1970年代生まれの「古参読者」も少なくない。

 時氏は人気作品の傾向について、松本清張や江戸川乱歩などの「日本推理文壇の巨匠」であれ、東野圭吾や島田荘司といった現代の巨匠であれ、謎芸館で一番需要があるのは、常に日本の本格推理小説だと紹介した。

 しかし、時氏が最も広めたいのは中国本土の推理小説だ。中国本土の小説家はますます成熟し、オリジナルの推理小説の中から中国独自の文化的な味わいに富んだ作品が次々と登場しているという。

 「文学の創作や書店運営、ポッドキャスト制作、異業種コラボなどさまざまな形式を通じて、より多くの読者に中国本土の推理小説を好きになってもらい、さらに多くの中国の推理小説家が人々の目に触れるよう、全力を尽くすことが私の夢だ」と時氏は語った。(記者/有之炘、佘霊)

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