登山ルートの悩み「ピストン・周回」どっち!? 「高尾山」での「メリット&デメリット」実体験レポ

ピストンするか周回するか(撮影:品川晋作)

登山を続けていると、お気に入りで何度も登る山がある。筆者にもいくつかあって、初めて登った山から最近になってリピートしている山までさまざまだ。

そんなお気に入りの山々での登山計画で迷うのが、ルート選定である。なかでも意外と悩むのが、「ピストン」にするか、「周回」にするか。ピストンと周回にはそれぞれ異なった魅力がある。

今回は筆者がこれまでの登山経験で感じた魅力だけでなく、ルート選定におけるピストンと周回のメリットとデメリットを解説する。ここでは初心者でも登りやすい東京の高尾山を例に解説するので、山行計画の一助としてもらえたら幸いだ。

■ピストンと周回、それぞれのメリットとデメリット

ここで紹介するルート選択におけるピストンと周回のメリットとデメリットは、あくまでも筆者の経験則による個人的見解であり、全ての山に当てはまるというわけではないことに留意して頂きたい。

高尾山の登山地図。赤線が1号路、緑線の稲荷山へ周回も可能(国土地理院地図より引用)

まずは登山でのピストンと周回について説明すると、ピストンは上り下りどちらも同じルートを歩くこと。つまり山頂と同じ道を往復する行程となる。

一方の周回は、上りと下りで異なる登山道を歩くことになる。ピストンと周回いずれもスタートとゴールは同一地点である。

●ピストンのメリットとデメリット

高尾山6号路は山頂付近までほとんど分岐がない

一番のメリットはシンプルであること。上りと同じ道を使って下山するので、登山計画を作り慣れていない人でもシンプルな一本道を設定すればよく、ルート選定における悩みは少なくなる。そのため移動時間が予測しやすく、道迷いのリスクも低い。

また、登りでガレ場、鎖場、ハシゴなどがあれば、下山時に注意すべき箇所としてチェックしておくことができる。

一方のデメリットは、上りの際にあった注意箇所を回避することができないこと。同じ道を戻るため、注意箇所をもう一度通ることになる。

また、景色を楽しみたいという方にとっては、下山時も同じ景色なので魅力に欠けると感じるかもしれない。さらに人が多い山域では、混雑緩和のためにルートが一方通行になっている場合もあり、ピストンしたくてもできないケースがあるので注意が必要だ。

●周回のメリットとデメリット

1号路と5号路、4号路が交差する地点

上りと下りで異なったルートを歩く周回では、往復するピストンよりも景色の変化を楽しむことができる。

また、自分の体力に合わせたルート設定ができるため、距離や傾斜の状況を把握したうえで、危険個所の回避が可能である。

しかし、計画よりもペースが遅くなったり、天候不良などのアクシデントがあった際には、周回を変更するか、計画通り進むべきかの判断に迫られる。さらに上りと下りで違う道を歩くため、道迷いのリスクも「ピストン」よりは高いといえる。

■初心者や初めての山はピストンがおすすめ

筆者がピストンと周回の魅力を紹介するために高尾山を訪れたのは、山頂までのルートが複数存在し、初心者でもピストンと周回のどちらかを選びやすく、楽しめるからだ。

高尾山の主流アクセスとなっている高尾山口駅をスタート&ゴール地点に設定すると、山頂までの登山コースは大きく分けて3つある。「1号路」、「6号路」、「稲荷山ルート」だ。

ピストンは山の雰囲気を知ることができ、シンプルで計画しやすいので初心者には特におすすめしたいルート設定だ。

また、地図やネットの情報だけでは把握できないことがあるので、筆者は初めて登る山ではピストンを選択することが多い。例えば、地図上で見た地点を実際に歩いてみると「当日の体調や装備によって」計画通りに歩けないこともある。「当日までの天候による足場の状態」「同行者のペースによるコースタイムへの影響」といったことも含め、実際に歩いてみないとわからないことが出てくる。

高尾山のようにルートが複数ある山なら、周回すれば景色を含めたさまざまな変化を楽しむことができる。例えば、ピストンでも季節ごとにルートを変えて夏は沢沿いの比較的涼しい「6号路」を歩き、冬は日差しの差し込みやすい南側の稲荷山を歩くのもおすすめである。

■登り慣れた山の「周回」ルートで登山に必要な力を養う

高尾山の地図を見ると、「1号路」から枝分かれしている「2号路」「3号路」「4号路」があり、山頂の周囲を周遊する「5号路」は稲荷山ルートと合流している。

「ピストン」に慣れたら、これらをつないだ「周回」に挑戦してみると楽しい。筆者のおすすめは「6号路」か「稲荷山ルート」を登り、「1号路」で下山する「周回」ルートだ。このルートはケーブルカーなどでエスケープしやすく、「1号路」にはお店があるので食事を楽しんで帰ることもできる。

少しずつルートをつなげて行動範囲を広げていくなかで、筆者は登山計画の大切さを実感した。

分岐点で何も考えずに初めてのルートを進み、道迷いとなった経験がきっかけだった。整備された登山道と道標がある山域でも人間は過信して失敗をするのだと身をもって知ったのだ。

その経験から事前に計画を立て、地図とコンパスでしっかりと現在地を確認する癖がついた。歩き慣れた山でも行き当たりばったりで行動せず、計画を練り、地図を確認する癖をつけて読図スキルも養っておくことをおすすめしたい。

ほとんどど人と会わなかった2号路と3号路は、静かに歩きたい方におすすめの周回ルートだ

地図と計画を確認しながら登山すると、自分の歩くペースや体力がよく分かるのでコースタイムが予測しやすく、登山中にしっかりと休憩や食事をとり、時間的にも余裕を持って下山できるようになった。

■ピストン・周回どちらも山の魅力は感じられる

初心者だからといってルート選びがピストンでなければダメということはない。大切なのは自分のスキルや体力に合ったルート選定をすることだ。

筆者のおすすめは、最初はピストンで山の雰囲気や状況を知り、その後にルートをつないだ周回である。
周回で自分が歩ける範囲を広げるのも登山の楽しみ方の一つなので、ピストンと周回どちらか一方しか経験がないという方は、ぜひお試しあれ。

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