ロシア、戦術核兵器の演習を予定 西側の「脅し」に対応と

ロシア当局は6日、ウクライナとの国境に近い地域で、戦術核兵器の使用を想定したミサイル訓練の準備を開始したと発表した。西側諸国の「脅し」への対応だとしている。

タス通信によると、ウラジーミル・プーチン大統領が戦術核兵器の訓練を指示した。

訓練は「近い将来」に実施される予定で、空軍、海軍とミサイル部隊が参加するという。

戦術核兵器は、戦場での使用や限定的な攻撃を目的とした小型の核弾頭と運搬システムを指す。放射性物質を広範囲にまき散らすことなく標的を破壊する目的で開発された。

これに対して、戦略核兵器は大型で、大陸間など長距離の攻撃向けに作られている。ロシアはそれら戦略核兵器の訓練を定期的に行っている。

ベラルーシで長年、政権を握るアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は先月、同国に「数十発」の戦術核兵器が配備されていると述べている。

英仏の発言に反発

ロシアは今回の訓練の背景に、英仏の発言があるとしている。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は先週、ウクライナから要請があった場合として、同国にフランス軍を派遣する可能性を否定しなかった。イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相も先週、ウクライナにはロシア国内への攻撃でイギリスの武器を使う権利があると述べた。

クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は、英仏のこれらの発言は「まったく新しい緊張のエスカレーション」を招いたと述べた。

ロシア外務省は6日、キャメロン氏の「敵対的な暴言」は、イギリスのこれまでの姿勢と矛盾すると主張。ウクライナに供与した長距離ミサイルがロシア領内で使用されることはないと、イギリスは保証していたとした。そして、キャメロン氏の発言は、イギリスが「紛争の当事者」であることを意味すると述べた。

同省はまた、イギリスの兵器を使ったウクライナの攻撃に対しては、ウクライナ領土内外にある英軍の施設や設備を標的にして対応を取る可能性があるとした。

一方、マクロン氏の発言についても、「ロシアとの直接対決の準備ができている」ことの表明とみなされうるとした。

英仏両国の駐モスクワ大使は同日、ロシア政府に呼び出された。

NATOは警戒感示す

ロシアの訓練に関する発表について、ウクライナ軍情報機関の報道官は「核の恐喝」だとし、取り合わない姿勢を示した。

一方、北大西洋条約機構(NATO)のファラ・ダクララ報道官は「危険で無責任」だと批判。NATOとして引き続き「警戒」していくとした。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、パリでマクロン氏と中国の習近平国家主席と会談後、ロシアの「無責任な」核の脅威を習氏が和らげることを望むと述べた。

ロシアでは7日に、プーチン氏の5期目の大統領就任式が開かれる。

ウクライナ外務省は、同国はもはやプーチン氏を合法的な大統領とみなさないとし、他国や国際機関にも同じことを求めるとしている。

しかし、ロイター通信が仏外交筋の話として伝えたところでは、仏大使は式典に出席する見通しだという。

ドイツなどいくつかの欧州の国は、使節団の派遣を見送った。

(英語記事 Russia to hold nuclear drills following 'threats' from West

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