【介護初心者のお悩みQ&A】親の介護が始まる前にやっておくべきことは?

突然やってくる親の介護。初めてとなればわからないことだらけ。介護が始まる前に心得ておいたほうがよいことは? 介護について誰に相談すればよいの?……そんな不安だらけの介護初心者のために、介護の基本を専門家に伺いました。

<お話を伺ったのは>
株式会社NSFエンゲージメント シニア介護コンサルタント
川上由里子さん

かわかみ・ゆりこ●ケアマネジャー、看護師、産業カウンセラー。13年間看護師として勤め、その後、高齢期の暮らし全般のコンサルティング、講演、執筆活動、仕事と介護の両立支援を行う。働きながら父の遠距離介護を体験。

Q 親の介護が始まる前に、やっておくべきことは何でしょうか?

元気だと思っていた親の介護が突然始まり、慌てたという声をよく聞く。親が何歳くらいになったら、介護を意識したらいいのだろう。

「70代は元気で自立した生活を送っている方も多いですね。でも後期高齢者といわれる75歳になると、要介護率がぐんと上がり、30%を超えてきます。個人差はありますが75歳になったら介護を意識していただきたいです」と、川上由里子さん。

まずは「親の暮らしに関心をもつことが大切です」と言う。

「よく『介護は突然』といいますが、介護につながる変化が徐々に出ている場合があります。定期的に声をかけて上の表の項目を親子で確認しながら、支援が必要かどうかを見ていきましょう。具体的に考えることで頭の中が整理され、やみくもに心配せずにすみます」

お金のことを聞き出すのはなかなか難しいが、経済状況は介護にどれくらいお金をかけられるのかに大きく関わってくるので重要だ。

「親自身が、どこでどのような介護を受けたいと思っているのか、延命治療はどう考えているのかなども確認を。趣味の仲間や友人などとの交流を聞いておくこともとても大切です。そして、それを一つでも二つでもいいので継続できるように応援するのが子の役目だと思います」

作成/川上由里子

Q 親が入院。退院後は介護が必要になりそう。どこに相談したらいいですか?

突然のケガや病気で介護が必要になった場合、親子ともに要介護認定や介護サービスについての知識がないと、どう対処したらいいのか途方に暮れることも。

「医師や看護師は医療についての相談のみで、『退院後のことは家族で考えて』と言われ困ってしまった方のお話を伺うことがあります。多くの病院にはMSW(医療ソーシャルワーカー)がいて、退院後の生活、介護保険のこと、心理的な問題、経済的なことなどについて相談に乗ってくれます。MSWがいるかどうか、まずは病院に聞いてみてください。MSWなどの相談員がいなければ、親の住民票がある地域の『地域包括支援センター』に相談しましょう。市区町村の福祉窓口でもいいのですが、医療福祉の専門職が対応する、地域包括支援センターがおすすめです」

退院後、介護保険によるサービスを受けるためには要介護認定が必要となる。要介護認定の申請から判定が出るまでは約30日かかるので、MSWや担当医に相談のうえ、治療後、容体が安定してからなど、時機を見て申請をしよう。

一般病棟から地域包括ケア病棟に移り、在宅復帰支援を行う病院もある。要介護認定のことは地域包括支援センターでも相談、申請ができる。

Q 地域包括支援センターとは、どういうところですか?

「地域包括支援センターは、介護、介護予防、医療、日常生活支援など、高齢者に関わる困りごとの総合相談所。センターへの相談は、介護のファーストステップと考えてください」

地域包括支援センターは市区町村が主体となって設置。対象地域に住む65歳以上の高齢者やその家族などが無料で相談できる。保健師(看護師)、社会福祉士、主任ケアマネジャー(介護支援相談員)などが相談に乗り、行政機関や医療、介護、福祉他、必要なサービスにつないでくれる。

「要介護認定の有無にかかわらず相談できます。要介護なら居宅介護支援事業所の選び方などもアドバイスしてくれます。要支援の方の介護予防のケアプランの作成は、地域包括支援センターが行います。来訪前に電話で『聞きたいこと』を伝えておくと、手続きに必要なものなども確認できスムーズです。申請に必要となる介護保険被保険者証は日頃から確認しておきましょう」

生活に不安を感じたら地域包括支援センターへ

介護は早い段階からの予防が肝心。足腰が弱ったり買い物が困難になったり、生活に不安を感じたら、要介護度のチェックを。

「地域包括支援センターでは、日常生活の『基本チェックリスト』で心身の機能の衰えをチェックします。その結果、人の手を借りる介護は必要ない(自立)と判定された場合は運動、低栄養、認知機能などの改善に向けた『介護予防・生活支援サービス事業』が利用できます」

取材・文/田﨑佳子

※この記事は「ゆうゆう」2023年11月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

※2023年10月14日に配信した記事を再編集しています。


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