「交渉は簡単ではありません」パリ五輪の海外組招集に森保監督が持論展開「東京五輪で我々がラッキーだったのは…」

パリ五輪出場を決めた大岩ジャパン。目下、気になる話題は「18枠は誰になるか」、「オーバーエイジの候補者は?」などである。ただ、そもそも海外組をどこまで呼べるのか。

ワールドカップと異なり、五輪は選手の招集に強制力がない大会だ。2016年のリオ五輪開幕直前、FWの久保裕也(当時ヤングボーイズ)がクラブの都合で本大会に参加できなかった例を覚えているファン・サポーターは多いはずだ。

一方、自国開催の東京五輪では日本代表メンバー22人のうち9人(五輪で過去最多)が海外組だった。具体的には、吉田麻也(サンプドリア)、中山雄太(PECズヴォーレ)、板倉滉(マンチェスター・シティ)、冨安健洋(ボローニャ)、橋岡大樹(シント=トロイデン)、遠藤航(シュツットガルト)、久保建英(レアル・マドリー)、三好康児(ロイヤル・アントワープ)、田中碧(デュッセルドルフ)である(当時のクラブで、在籍クラブはJFA発表のものに合わせた)。

なぜ、ここまで海外組を呼べたのか。そのカラクリについて、東京五輪代表を率いた森保一氏は次のように説明した。

「1、2年前から選手たちの移籍などの動きを本人たちに聞きながら、常にチェックしながら、オリンピックに出られる状況を作っていきました。所属先のクラブ、移籍先のクラブ、代理人さんと連携しながら早め、早めの動きをしたことで、本大会に選手を招集できたと思います」

五輪予選免除の恩恵により、早めに準備できた点が大きかった。そして森保監督は「我々がラッキーだったのは…」と持論を展開した。

「東京五輪が自国開催だった点です。他国でやる五輪より選手も出たいだろうと各クラブがそこに理解を示してくれたところはあったと思います」

東京五輪はいわば例外。パリ五輪本大会に向け、今から海外の各クラブと交渉をするのはタフな作業だ。森保監督は言う。

「五輪はIW(インターナショナル・ウインドー)の開催とは違うので、選手の招集はかなり難しい。移籍が絡むケースは予測がたっていれば交渉できますが、移籍先が分からない状態だとなかなか…。オーバーエイジを含め最強チームを作っていくと大岩(剛)監督は考えると思いますが、その交渉は簡単ではありません。日本の総力を上げての交渉が必要です」

海外組招集の壁は決して低くない。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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