【特集:最新SUV「絶対試乗!」主義⑥】新型ランドクルーザー250を70や300と比較試乗してみたら、タフな走りの理想形が見えてきた

国内有数のオフロードコースで、ランドクルーザーの新型車「250」をテストドライブ。国内に再び導入されることになる進化版「70」に加え、先代の150プラド、既存ラインナップの300と乗り比べることができた。250の悪路走破性は、果たしてどこまで本格的に仕上がっているのだろうか。(文:岡本幸一郎/写真:井上雅行)

機能優先で設計された「ランクル」らしさ

正式発表は、2024年4月18日。ランドクルーザーのシリーズに新たにラインアップされた250は、ランクルの中核モデルとして相応しく、原点に回帰することをコンセプトに開発された。ヘビーデューティな70系に乗用車の要素を与えて派生したライトデューティ系の「プラド(150)」が、世代を追うごとに当初の理念から外れて高級志向に傾倒していったことを受けた形だ。

国内向けランドクルーザーのラインナップ。左から300(510~800万円)、250(520~735万円)、70(480万円)のプライスタグがついている。ポジション的には250が中間となるが、意外に価格差は大きくない印象もある。

そんな開発テーマが、まずは見た目に表れている。プラドの後継ではないことをアピールしているとおり、上級ラインナップの「200」や300の弟分的雰囲気だった150プラドとは一変して、質実剛健を追求したことがよくわかる。

一方の70は、伝統を継承しながらデザインや走行性能、安全性能などをアップデートした上で、日本に再導入されるはこびとなった。

250は機構的には300にかなり近い。GA-Fプラットフォームを土台としており、ホイールベースも2850mmと共通する。これは、30年あまり前に「80」で最適値として導き出された数値の継承だ。寸法的には300に近いが、絞り込んだフロントフェイスやキャビンの形状により、だいぶ小さく見える。

特別仕様車ZX"First Edition"のインテリア。キックバックによるハンドル取られの低減や、すっきりとしたステアリングフィール、低速時の取り回し性を向上させた 「電動パワーステアリング(EPS)」など、オフロード/オンロード双方での性能向上を目指したシステムも用意される。
大型ディスプレイには「マルチテレインモニター」機能を備える。、車両周囲の状況確認を4つのカメラでサポート、アンダーフロアビュー/アンダーフロアビュー(後輪)に加え、後退時に後輪周辺をクローズアップして表示するバックアンダーフロアビュー(トヨタ初)も備える。

運転席からの眺めも、300とだいぶ雰違う。内外装とも水平基調でデザインされており、インテリアもあまり華美さはなく、機能最優先で設計されたことがうかがえる。

ダッシュやベルトラインが低くされているほか、中央を低くして両サイドを高くしたボンネット形状により見切りがよく、四隅の感覚が掴みやすい。コースに出て、そのありがたみをより実感できたことをあらかじめお伝えしておこう。

トラクションとともに接地性も最適制御

25070300の3モデルそれぞれの関係性について、開発関係者によると、前後リジッドアクスルとリーフスプリングを備えた70は、過酷な環境での使用を主体に、壊れることなく帰って来られるところに価値があるとしている。

駆動は、フルタイム4WD(トルセンLSD付トランスファー)。センターディファレンシャルにトルセンLSDを採用したことで、路面状況や走行状態に素早く反応して前後のトルク配分を最適化してくれる。下り坂からのタイトコーナーでも、安心して走ることができる。

300と250については、どんな道でも運転しやすく疲れない300に対し、250はどんな道でも誰でも扱いやすく楽しい、と微妙に差別化されている。250は扱いやすさと楽しさという要素で、勝っているのだという。

試乗場所として設定されたのは、愛知県にあるさなげアドベンチャーフィールド。全長750m、高低差32mのコースには比較的平和な林間コースに加え、クルマとドライバーの「性能差」がわかりやすいロックセクションが設定されている。

今回は3モデルを岩コースと林間コースで乗り比べたところ、まさしくそうした「差別化」の意味がよくわかった。

250でまず印象的だったのは、ランクル初となる電動パワステによるステアリングフィールのよさだ。操舵力が圧倒的に軽くスッキリとしていて、凹凸や轍でもキックバックが小さくハンドルが取られにくい。低速で小さく曲がる箇所でも、70はもちろん、300と比べても取り回し性はずっとよい。

最新の「マルチテレインセレクト」と「マルチテレインモニター」によるオフロード走行支援も頼もしい。
オフロードユースを極めたモデルでありながら、操作系はモダンな印象。けっしてクルマ任せではなくドライバーが操る楽しさにも、しっかりここだわっていることがわかる。
「 マルチテレインセレクト」は、オフロード路面上に応じた走行支援を用意。ハイレンジ(H4)でも動作可能だ。

機能が拡充されたMTS(マルチテレインセレクト)は、基本AUTOモードのままで、アクセルさえ踏んでいれば、どこでも前に進んで行ける。刷新されたクロールコントロールを使うと、勾配のきつい場所もラクに走破できる。

モーグルや最大の難所である急勾配のガレ場では、基本性能の向上によりタイヤが浮き上がりにくくなったサスペンションに加えて、スイッチ操作でフロントスタビライザーをフリーにすることでサスペンションストロークが伸びて接地性が確保されるトヨタ初の機構であるSDM(スタビライザー ディスコネクション メカニズム)が役に立つ。

仮にスタックしてもアクセルペダルを踏み増せばMTSが最適に駆動力を制御してくれてよほどでなければ脱出できる。あるいはデフロックをONにすれば、いとも簡単に脱出できる。

悪路でのコントロール性に秀でた250

そのあたりは、路面や車両の状態からシステムが自動的に前後スタビライザーのロックorフリーを制御する「E-KDSS」を搭載する300も同様に優れていて、極悪路でも乗り心地が快適で、さすがのものを感じたわけだが、250のほうが自らの手で操っている感覚があり、心なしか走って楽しいように感じられた。

70ランドクルーザーは2.8Lディーゼルターボ×6速ATの、モノグレード展開。前後電動デフロック機構など、文字どおり「道を選ばない」走りを楽しませてくれた。

その点では、70はまったく別世界で、MTSのようなデバイスもなければスタビライザーの制御もなく、厳しい状況では厳しさがありのままに伝わってくるのだが、それを実感し克服するのもまた一興だ。デバイスはなくてもデフロックを駆使すればたいがいのところは走破できる。乗り心地についても、10年前の再販モデルに比べてずいぶん改善されたようだ。

250と70では同じ型式とスペックの2.8L 直4ディーゼルが搭載されるが、ATが8速か6速かという違いがある。初期のアクセルレスポンスがリニアで扱いやすく、ディーゼルとしては騒音や振動が小さく抑えられている点では共通している。250はギア比が細分化されているおかげで、悪路でもよりコントロールしやすい。

2754ccの直4ディーゼルターボエンジン(1GD型)は、「Direct Shift-8AT(8速AT)」とのコンビネーションで204ps、500Nmを発生。タンク容量は80L、WLTCモード燃費は11.0km/Lで、計算上の航続距離は880kmに達する。

車両周辺の状況を4つのカメラで捉える最新のマルチテレインモニターは、これから進みたい先の状況がよく見えないときに本当に頼りになる。

さらに、250を運転していて感じたのは、運転しながらスイッチ類の操作がとてもしやすいことだ。300も使いにくいことはなく大きな不満はないのだが、250では開発時により入念にテストを繰り返して検証したとのことで、その成果がしっかり表れている。

250がよくできているであろうことは十分に予想できたが、ここまでよくできているとは予想を超えていた。300と70のよさもあらためて確認することができた。オフロードコースを走り回って、ランクル群の進化と魅力をたっぷり感じた1日であった。

新型ランドクルーザー250シリーズ諸元表

トヨタ ランドクルーザーZX(7人乗り)主要諸元

●全長×全幅×全高:4925×1980×1935mm
●ホイールベース:2580mm
●車両重量:2410kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:2754cc
●最高出力:150kW(204ps)/3000〜3400rpm
●最大トルク:500Nm/1600〜2800rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油 ・80L
●WLTCモード燃費:11.0km/L
●タイヤサイズ:265/65R18
●車両価格(税込):735万円

トヨタ ランドクルーザーVX(7人乗り)ガソリン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4925×1980×1925mm
●ホイールベース:2580mm
●車両重量:2240kg
●エンジン:直4DOHC
●総排気量:2693cc
●最高出力:120kW(163ps)/5200rpm
●最大トルク:246Nm/3900rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー ・80L
●WLTCモード燃費:7.5km/L
●タイヤサイズ:265/65R18
●車両価格(税込):545万円

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