濃い黒色とマットな書き心地 服が鉛筆の芯に…縫製メーカーが驚きのアイデア 日々出る裁断くずを再利用 富山・小矢部市

繊維産業がさかんな富山県小矢部市で、ある縫製工場が意外な新商品を発売しました。新商品には、学校体操服をつくる工場ならではの子どもたちと環境への思いが込められています。

スポーツウェアを中心に年間100万着以上を製造する小矢部市の縫製メーカー、ミヤモリ。

宮森穂社長が新商品として見せてくれたのは。

ミヤモリ 宮森穂社長:「これはですね、まだ成型していない鉛筆の芯になります。これで1万5千本ぐらいあるんですけど」「この芯の20%に洋服が入っているということになります。これができた時は本当感動しましたね」

ミヤモリは、4月末、芯に洋服が入って

いるという鉛筆を自社の新商品として発売しました。その名も「服の鉛筆」です。

ミヤモリ 宮森穂社長:「ようやく2年半かけてサンプルができたんですけど、それからさらに1年ぐらいかかって量産ができてうれしく思っております」

体操服がアイデアの原点

芯に洋服が入っている「服の鉛筆」とはどんな鉛筆なのか。

「服の鉛筆」のアイデアの原点は、ミヤモリが創業時から手がける学校体操服です。

ミヤモリ 宮森穂社長:「たくさん出るんですよね、本当」「我々創業57年(当時)ですけど、まあずっとこれ出てるのでもったいなということで何とかしたいっていうので、みんな社員思ってましたよね」

型紙の取り方を工夫しても、使用する布の2割

程度は裁断くずとして出てしまい、焼却や埋め立て処分される裁断くずは年間20トン。

なんとか再利用したいと、長年、社員と試行錯誤する中でたどり着いたのが、裁断くずを炭にして鉛筆の芯をつくろうというプロジェクトでした。

しかし、化学繊維などが混じった裁断くずを炭として残すには、熱のあて方や温度管理など繊細な技術が必要で、鉛筆はおよそ2年半かけて完成。芯には20%の繊維の炭を入れることができました。

苦労して完成したサンプルは、まだ発売前にも関わらず、2023年、日本文具大賞で「サステナブル部門」の優秀賞に。

記者:「アイデア出た時いけるって?」

ミヤモリ 宮森穂社長:「いやまったくなくてですね、まさか量産するとも思ってなかったです」

濃い黒色とマットな書き心地が…

反響の大きさを受けて、「服の鉛筆」は先月末に一般販売が始まり、現在、県内の一部の店舗やミヤモリのオンラインストアで購入できるようになりました。

6本セットで1500円。黒の濃さとテカリのないマットな書き心地が特徴です。

ミヤモリ 宮森穂社長:「最初サンプル作った時は4Bの濃さで作ったんですけど、いろいろ調べてみますと、小学生って今2Bを使っているということで、今回4Bから2Bの濃さに変えた」「子どもたちに一番使ってもらって、環境に関してもっともっと考えてもらいたいなって思っています」

試算では、自社の裁断くずをすべて鉛筆に使うことができれば、二酸化炭素の排出量を9.3トン削減できることに。1本の木が1年に取り込む二酸化炭素の量に換算すると削減量は664本分にあたります。

そして、繊維の炭を使った「服の鉛筆」を開発できたことで、裁断くずの再利用にさらに大きな目標ができました。

ミヤモリ 宮森穂社長:「ほかの業者を合わせるともっともっと出るんですね。それをみんなできれば集めて繊維炭にしてそこから今鉛筆を作りましたけど、いろんなエネルギーとかの代替えに

ないかとかいうのを今から研究していく感じです」繊維由来の炭っていうものに可能性を見出したいと思っています」

裁断くずを資源として使う繊維業界の新しい循環の形を作ることができるのか、ミヤモリの挑戦は始まったばかりです。

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