「旦那は寿命が延びた」「最終的には面白いかどうか」 ペンションや芸術活動それぞれの動機で決断した岩手への移住 東京から雫石町、仙台市から遠野市で暮らす2組の家族

全国的に増加傾向にある移住者にスポットをあてます。新型コロナをきっかけに地方への関心が高まっていて、岩手県への移住相談件数も年々増加しています。県外からすでに岩手に移住した2組の家族を取材しました。

岩手山の中腹に位置し標高700メートル付近にある「ペンションHAIJI(ハイジ)」を経営する愛知県出身の上村聡さんと奥州市出身の美寿帆さん夫婦。そして小学4年生の天乃さんの3人です。

(上村聡さん)
「客室は2階になります」

ペンションの5つの客室がある2階には聡さんが移住当初に撮った写真が飾られています。

(上村聡さん)
「今から10年前、私たち引っ越してきたのが2013年11月なんですけど、その翌年も初めて目にする小岩井農場のサクラとか雫石川園地のサクラとかミズバショウとかそういったものを、観光客みたいな気分でずっと撮ってましたね」

それぞれの職場があった東京都内で出会って結婚した上村さん夫婦。二人は「いつかペンションをやりたい」という共通の夢を持っていました。子どもが欲しいと意識した2013年に東京から雫石町に引っ越してペンションの経営を始めました。

(上村聡さん)
「(当時)39歳で、まだうちの娘も生まれていなかったんですね。私と妻だけだったんで、妻の出身が岩手なのでこちらで探してみようということで来ました」
(上村美寿帆さん)
「(雫石のペンションの良さは)四季が感じられる所ですかね。雪いっぱい降ったねとかね。そういう事がいちいちうれしいですね。みんなにとって良かったんじゃないですか。旦那は寿命が延びたと思うので」

現在は大型連休などを除き土曜日を中心に宿泊客を受け入れています。聡さんはベッドメイクなどの客室を担当。美寿帆さんは県産食材を使った料理で宿泊客をもてなします。この日は夕食のデザートに使うチーズケーキを仕込みました。

(上村美寿帆さん)
「(味付けは)できるだけ調味料がそんなに多くないものを。シンプルなものを使うようにしてますね」

そのあと気泡を無くしオーブンで30分ほど焼いて完成です。上村さん一家はこれからも自然の中での暮らしを楽しみながらペンションとともに成長を続けます。

(上村美寿帆さん)
「(冬に宿泊で来た)おねえさんに雪遊び」
(上村聡さん)
「ね。ずっとそり遊びとか雪遊びしたりしたから、そういった人たちにここ自然が良いからね。来てほしいなって思いますよね」

「すみません、お待たせしました~」

宮城県出身で遠野市在住の画家・菅野麻衣子さんは2021年、秋田県出身の夫でデザイナーの阿部拓也さんと一緒に仙台市から遠野市へ移住してきました。移住したきっかけは遠野という土地が持つ不思議な魅力です。

(阿部拓也さん)
「遠野に行けば10年20年後に自分がどうなっているのか予想がつかない。そこに自分のなかで面白さを感じて、じゃあもう思い切って移住してしまおうと思ったのがありましたね」

(菅野麻衣子さん)
「そうだよね。決め手になった条件があるというよりかは最終的には面白いか面白くないかみたいな話をずっとしてた気がします」

もともと仙台市を拠点に画家とデザイナーとしてそれぞれで活動していた二人でしたが、新型コロナウイルスによる自粛や制限を受けた暮らしをきっかけに生活を見直しました。菅野さんが大学で美術を学んでいた頃から興味があったという「遠野物語」が根付く遠野市に移住し、作品制作に集中できる環境を整えました。

(菅野麻衣子さん)
「ずっと仙台にいる必要ってないのかもしれない。取材に行きたいんだったら、取材する対象の土地に住んでしまえばいいんじゃないかという話になって思い切ってこっちに引っ越そうと思ってという感じですかね」

移住から数年が経ち徐々に地域とのつながりも増えてきた菅野さん。どぶろくカクテルのデザインを夫婦で手掛けた縁で遠野で学び始めた土人形や絵画作品の展示会イベントが実現しました。菅野さん夫婦は今後、遠野の人たちがより気軽に芸術作品に触れる機会を増やしたいと考えています。

(菅野麻衣子さん)
「地域の人も美術を見るとかギャラリーに遊びに行くという感覚が普段の生活の中にない訳なので、そういった意味ではギャラリーの無い街で美術展を開くというハードルというか不安はありますね」

(阿部拓也さん)
「うーん自分たちは別に開拓者としてきたわけではないので、なんかほんとに自分が楽しくこの地域で暮らしていくためには自分が一体何ができるんだろうかというのは、なんかこう、こっちに来てから自然に考えるようになったし日に日にそういう思いが強くなっていくような感覚はあります」

地方の自然や文化に魅了されて都市部から移住する人たち。地域の活性化も含めて移住者が新天地で活躍できるまちづくりが求められています。

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