NewJeans「Bubble Gum」はすべてが“曖昧” ミュージックビデオの随所に隠された仕掛けを読み解く

NewJeansが4月27日、新曲「Bubble Gum」のMVを公開した。5月24日にリリースされる新譜『How Sweet』からのプレリリースソングで、日本で現在放送中のメンバー本人が出演しているシャンプーのCMソングとして使用されている。

「Bubble Gum」はタイトルの通り、泡のようにエアリーでライトな雰囲気のポップソングだ。メインのメロディの部分は先月リリースされたばかりのヒット曲であるサブリナ・カーペンターの「Espresso」を思わせるキャッチーさがある。「Espresso」はリリースしてすぐにアメリカ billboard HOT100で7位にチャートインし、現在もヒット中だが、レトロなMVが表現するように80~90年代にヒットしたヌーディスコやジャジーファンクといった要素を取り入れた、今人気の耳に馴染みやすく聴きやすい楽曲という共通点がある。

また、Shakatak「Easier Said Than Done」をリファレンスしたようなサビのリズムは、Travis Japan「Just Dance」、Midas Hutch「In Touch" Ft. Charli Taft & Daul」などでも取り入れられている要素だが、ShakatakをCMで耳にする機会が多かった日本のリスナーには特に耳馴染みがあるのではないだろうか。今作の編曲もNewJeansの楽曲ではお馴染みの250とGigiが担当しているが、ユースカルチャーにおいて世界的な流行となったシティポップの元ネタ的な要素をさらに解体して韓国のプロデューサー的な感性でアウトプットしたような、「懐かしさと新しさ」を同時に感じる仕上がりになっている。

今回のMVは、過去に「NewJeans」のMVなども撮影しているOGG VISUALのディレクターであるイ・ヨンウムが担当。韓国・済州島の自然を舞台にメンバー達が自然な姿でシャボン玉(bubble)を吹いたりバブルガムをふくらましてレトロなおもちゃで遊んでいるさわやかなビジュアルで、メンバー達が指示なく自然に戯れているような姿と「演技」の部分が曖昧なまま混ざり合って溶け込んでいる。

画面の向こうからヘインが語りかけてくる冒頭では、一般的に使われる「教えてあげる」を意味する「가르쳐 줄게」ではなく「아르켜 줄게」という子供しか使わない言い回しが使われることでリアル以上のあどけなさが表現されており、見る物に今ではない昔の子供時代・あるいはなかった過去を思い起こさせるようだ。カメラの正面をじっとみているヘインもまたビデオカメラを手にしており、「撮る側」「撮られる側」の感覚も曖昧だ。

ヘインの持つデジタルムービーカメラは2011年ごろに発売されたパナソニック HX-WA1であり、彼女が画像を見ているパソコンは2000年代のiMacだ。一方で、夜に花火をする場面ではスマートフォンが登場しており、彼女たちのいる時代も今なのか過去なのかがあえて曖昧になっているようだ。見るものの年代のよっては思い起こされるものが異なりそうだが、共通の「自分がそこにいるような錯覚」「経験していないはずのノスタルジー」を感じられるような仕掛けが随所にあり、これは2022年12月にリリースされた「Ditto」での撮り方を想起させる。「冬のDitto、夏のBubble Gum」という感じだろうか。

「Bubble Gum」はタイトル曲ではないが、現在公開されている新譜『How Sweet』のアルバムパッケージはLPを模しており80年代を模したようなビジュアルが使われている。キャラクターが使われたパッケージでも、色褪せたようなアンティークな色合いが使われており、今までの作品の中で最もノスタルジックなイメージが直接的に使われているようだ。今後リリースされるアルバムの全体像が垣間見えるようなプレリリース楽曲と言えるのではないだろうか。

(文=DJ泡沫)

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