『くる恋』生見愛瑠のピンチを救った瀬戸康史の言葉 良い意味で際立つ朝日の素朴な一面

私たちは、毎日の食事すら「何を食べたいか」を選んで生活している。パンか米か、朝食のメニューを選ぶのは簡単だ。しかし、仕事や恋人のように人生に大きく関わることになると、私たちは迷う。何かを選ぶということは、他の全てを捨てるということでもあるからだ。

例えば、誰かと一緒にいることを選ぶことは、別の誰かとの時間を捨てることとも言える。ドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』第5話(TBS系)では、記憶をなくす前のまこと(生見愛瑠)が母親の言う通りに過ごす中で、本当の気持ちを心の中に秘めて“捨ててきたもの”が描かれていた。

母の日が近づく中、まことは伊豆に住む母・百合子(坂井真紀)に会いに行くべきか悩んでいた。これまでのやりとりから絶妙に母親との距離を感じていたことから、母親に自分が記憶喪失だと告げることができずにいたまこと。しかし、自分のことを知るためにも、意を決して母親に会いに行く。医師には文句を言い合えるくらい「親しい誰かと行く」ことを勧められるも、なかなかその“誰か”が見つからず、まことは頭を悩ませる。

今回もやはり、公太郎(瀬戸康史)がまことと一緒に行動するのかと思いきや、今回公太郎は遠くからそっとまことを見守る展開に。母の日キャンペーンの「おまけ」としてついてきた、“困った時に空けろ”と書かれた公太郎のメモからは、いつもの彼らしい不器用な優しさが伝わってくる。

1人で実家に帰るまことについて行ったのは、朝日(神尾楓珠)だ。これまで律(宮世琉弥)や公太郎と比べて、なかなか友達ポジションを抜け出せなかった朝日だからこそ、「今回こそは大逆転なるか!」と視聴者の期待も高まったのではないか。

「心配だからついて行く」と聞かない朝日と共についに実家へと到着すると、彼を見た百合子は「そういうことなら先に言ってよ!」と結婚報告かと盛大な勘違いを始めてしまう。しかしせっかく帰ってきても、今の自分を「まことらしい賢明な選択」をできていないとするような母親の振る舞いに、どこか居心地が悪そうなまこと。同室で寝ることになった朝日に、まことは「実家に来たら、何か思い出すかと思ったんだけど。ずっと人の家にいるみたいで」と打ち明ける。

そんなまことに、「もしもこのまま思い出せなかったとしても、俺は今の緒方のこと好きだから」と優しく告げた朝日は、やはり“やればできる男”なのだ。最初は神尾楓珠の爽やかなルックスも相まって、バリバリ働く“会社員系王子”のように見えた朝日だが、今や友達として同じ目線に立ってくれる素朴な一面が良い意味で際立つ。まことには、なかなかストレートに想いが伝わっていないところも絶妙に惜しく、つい応援したくなってしまう。

第5話では、「人生は選択の連続」と言葉をこぼす母親の発言から、8歳の頃に両親が離婚したこと、母親がその経験からまことには手堅い人生を送って欲しいと願っていることが明らかになった。ついに、母親に記憶喪失であることを打ち明けたまことだが、幼少期の辛い記憶が蘇り、暗い気持ちに飲み込まれてしまう。

そんな時に公太郎の箱を開けると、「カーネーションは食べられる」というメッセージが(このままではカーネーションを食べる瀬戸康史のファンが続出しそうである)。朝日のことを思うと少し切ないが、ピンチの時、やはりまことを笑顔にするのは公太郎の言葉なのか。「お客様にいつか好きな花ができたら贈らせてください」という公太郎の言葉に、まことの心は温かくなる。

一方、同じく母の日に律は公太郎と会っていた。「1年で一番忙しい日なんだけど」と怪訝そうにする公太郎に、律は「嘘臭い元彼には負ける気しないんで」と宣戦布告。指輪の人が出てくる前に、自分のことを好きにさせれば良いと自信満々な律。世田谷中央公園でのお花見の写真では、なぜか“人に見られたくない事情”があったようで着ぐるみを着ていた彼だが、まことを含む4人にあの日何があったのだろう。律についても、毎週漂う怪しさが増していく。

さらに次週は、まことの高校生の頃の様子が明らかになるようだ。最後にまことのラインに登場した隼人は、指輪の人なのかどうかも気になるところ。人生の岐路に立ったとき、私たちは迷う。選択肢は無数にあり、どれを選んでも後悔は付きものだ。過去と現在が交錯する中、まことの選択は“彼ら”の人生をどのように変えていくのだろう。

(文=すなくじら)

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