井上尚弥に〝階級の壁〟なし!論客・細川バレンタイン氏はフェザー級転向「全然大丈夫」と断言

笑顔で一夜明け会見に臨んだ井上尚弥

モンスターに〝階級の壁〟はあるのか――。ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)が6日の防衛戦(東京ドーム)で、WBC同級1位ルイス・ネリ(29=メキシコ)に6ラウンド(R)TKO勝ち。この試合をボクシング界きっての論客である元日本王者・細川バレンタイン氏(43)が読み解き、今から期待されるフェザー級転向の可能性を占った。

井上は1Rにネリの左フックでまさかのプロ初ダウンを喫したが、2Rにダウンを取り返す。そのまま試合を支配して5、6Rにもダウンを奪い、TKO勝ちで王座を防衛した。公式ユーチューブチャンネル「前向き教室」で発信も行っている細川氏は「いつもと変わらないですが、攻撃力があるな、と。何がすごいって(ダウンした後に)気を取り直して『しっかりしたボクシングをやろう』となってから、ネリは何もできなかったですよね」と振り返った。

一方で、バンタム級以下と現階級での戦いに〝変化〟も見えた。「やっぱりバンタム級とスーパーバンタム級は違うなって。スーパーバンタム級では急所に当てて精度のいいボクシングをしないとダメージを与えられないと感じました」

また、試合開始前に井上が見せたカメラへのガッツポーズや表情にも硬さがうかがえたという。「プレッシャーがあったのか、立ち上がりはスピードが遅くて力んでいました。バンタム級までならそういう状態でも普通に勝てたと思う。だけど、今は一瞬気を抜くとああいうこと(初ダウン)になる階級なんです。井上選手も『やっぱり慎重にならないといけないな』と思ったと思います」と分析した。

そんな中、フェザー級に上げてさらなる快挙達成を期待する声も高まっている。この日に見せた井上の〝現在地〟から、その可能性を細川氏はどう見たのか。「今すぐフェザー級に上がってもいいと思います。通用しないなんてことは一切ないと思う。ハッキリ言って、僕から見たらすぐ上げてほしい。スーパーバンタム級のトップ・オブ・ザ・トップたちをこんな差で倒せるなら全然大丈夫です」と断言する。

ただし「みんなが考えているように、今までと同じ感じで〝無双〟するかというと『ちょっと話が違うよ』っていうところです。実際、現在のフェザー級の世界王者は全員ネリを無双できると思いますから」とも付け加えた。

今すぐ階級を上げればこれまでのような「向かうところ敵なし」ではなくなると見ているわけだ。その理由を「スーパーバンタムが、そもそもの適正階級だと思う。バンタム以下では井上選手は〝大きい選手〟だったんです。フェザー級では〝少し小さい選手〟になります」と解説。その上で「過去の発言から考えて、彼は〝適正階級で最高のボクシングを見せたい〟のであって〝適正じゃないところに挑戦したい〟という気持ちはないと思います。だからスーパーバンタムで体がキツいくらいになったら上げたいんだと思います」と推察した。

まだ当分の間は、現在の階級で〝無双〟し続けるモンスターを堪能することができそうだ。

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