駆け抜けて軽トラ・餅田コシヒカリ「化け物を人間にしてくれた」“汚部屋”と“リボ払い”も仕事につなげる力

駆け抜けて軽トラ・餅田コシヒカリ 撮影/三浦龍司

フリーアナウンサー加藤綾子さんそっくりの顔に、タンクトップの裾からハミ出た鏡餅のようなお腹の肉を揺らすーーいちど見たら忘れられないギャップを持つ芸人、餅田コシヒカリさん。相方は、ネタ作成者にもかかわらず、究極の“じゃないほう”な存在感を発揮する小野島徹さん。男女コンビ、駆け抜けて軽トラのふたりに聞く、THE CHANGEとは。【第2回/全5回】

陽光が似合うさわやかな青いスウェットと黒色のロングスカートをかわいらしく着こなす、駆け抜けて軽トラの餅田コシヒカリさん。思わず「とてもかわいいですね!」と伝えると、相方の小野島徹さんが言う。「でもこの人、すごい汚部屋に住んでいたんですよ」、すると餅田さんも「最近はちゃんとキレイにしているから、そういう雰囲気が出ていなくてよかった」と笑う。

ーー汚部屋って、どんな汚部屋だったんでしょう。

小野島徹さん(以下、小野島)「めちゃくちゃくさい! 足の踏み場もないという感じで、とにかくゴミだらけ」

餅田コシヒカリさん(以下、餅田)「ゴミ! って感じですよね。捨てに行かないし」

小野島「世界のゴミが集まる浜辺みたいな。でも土足で入ろうとすると“やめてください!”と言うんです、一丁前に。”家じゃなくて外だ”と言いましたけどね。卵のパックがトイレに落ちていたりするんですけど、理由を聞いてもなんら納得のいくような返答は返ってこないんです」

餅田「自分でもわからないんですよ。そこにあるのが普通というか……」

小野島「ベランダに炊飯器が落ちていたりとか。中身、入ったままですよ?」

餅田「捨て方がわからなくて。とりあえずベランダに置いておいたんです」

小野島「部屋からベランダへの境目がなくて、窓が開けっ放しで地続きなんですよ。3階に住んでいたんですが、鳩がめっちゃ見に来てました。“ここ、住めるのかな?”みたいな顔をして」

餅田さんのあまりの部屋の汚さに驚愕

小野島さんが餅田さんの部屋に初めて足を踏み入れたのは、5年ほど前。これをネタにしない手はない、と放っておくことができず、YouTubeの企画にした。現時点で視聴回数77万回を記録している、2020年9月投稿動画「【閲覧注意】汚部屋系カトパン抜き打ち家宅捜索ルームツアー」では、さきほど小野島さんが表した「世界のゴミが集まる浜辺」然とした光景が広がっている。

なかでもインパクト大なのが浴室。なぜか浴槽に濡れた状態の敷布団が詰まっているのだ。餅田さんいわく「洗ってたんですよ。浴槽で」「なみなみ水を入れて洗って」「水を吸って重くて。持ち上げられなくなっちゃったので」、以来、放っておいているという。小野島さんは「そんな人いる!?」と驚くしかなかった。

餅田「小野島さんがそうやって、すべて肥やしにしてくれたんです。自分だったら隠すというか、汚部屋であることをテレビで出せていませんでした。でも小野島さんがそれを拾ってくれて、おもしろいポイントを見出してくださって。そこからテレビが決まったこともあったんです」

小野島「だってめっちゃおもしろかったから。“こんなところに住んでるの!?”という。一時期、“今日、家に帰りたくないから泊まっていいですか?”とか言う時期があって、意味がわからなくて」

餅田「家がめっちゃ汚かったから。マックス時期で、ゴミ集積場みたいになっていたんですよ。床は一切見えなかったし」

ゴミの隙間で就寝、でも「ゴミ箱にゴミ入ってない」

ーーどこで寝ていたんですか?

餅田「一応ベッドの台はあるんですけど、そこから布団がはみでていて。上も下も全部ゴミで、隙間で寝ていました」

小野島「でもゴミ箱はめっちゃキレイ。ゴミ箱にゴミ入ってない。部屋中が全部ゴミだから。それがめちゃくちゃおもしろかったんですよ」

ーーそこに才能を見出したんですね。

小野島「はい。これさえ映せばおもしろがってくれるだろうなと。餅田さんのよさって、よく伝わっていないと思っていて。それがもっと伝わればいいのになと思っていました」

餅田さんといえば、顔だけフリーアナウンサーの加藤綾子さんそっくりでギャップのあるふくよかボディを持つ、“顔はカトパン、下はパンパン”な姿が求められていた。だが、それだけではないのだと、いちばん近くにいた小野島さんは自信を持っていたのだ。

小野島「あと、コンビニ弁当をリボ払いしていたんですよ!」

ーーどういうことですか……?

餅田「ずっとカードで支払っていて、それがリボ払いになっていて。でもリボ払いの仕組みがわかっていなくて。そうしたら小野島さんが"それは借金なんだよ”って」

小野島「めっちゃわらいました。“それ、リボじゃん!”って」

「今月支払いが厳しい」リボ払いの仕組みを理解していなかった

駆け抜けて軽トラ(左から小野島徹、餅田コシヒカリ) 撮影/三浦龍司

ーーなぜ発覚したんですか?

小野島「“今月、マジで支払い厳しいです”と言っていたときがあって。“いつもは1万円って決まっていたのに、今月はミスして8万円にしちゃったんですよ”と。え? 毎月1万円? どういうこと……!? と、いろいろ聞いたらリボ払いで。“めっちゃリボじゃんおまえ! え!? リボでコンビニの飯食ってるの!? やばいじゃん!”とか言ったんですけど、それでもまだ気づかなくて」

餅田さんは、まっすぐな瞳で小野島さんにこう言ったという。

「そうやって自分に足枷のようなものをあえてつけていると、仕事がきついタイミングで大きな仕事が舞い込んでくるんです。これは私にとって絶対に必要なことで、芸人さんが自分の給料よりも高い家賃に住むのと、同じ感じなんです」

小野島「偉そうにリボを語るんですよ」

ーーリボ払いすることで、実際に仕事が舞い込んできたんですか?

餅田「グラビアの仕事とか、大きな仕事はリボで勝ち取りました。でもお金がないときも当然あったので、そういうときは小野島さんにごはんを作ってもらっていました」

小野島「僕もバイトしている身だったんですけど、"ごはん、食べさせてください”って言ってきましたね」

おもしろいから、のひとことでは説明がつかない深い情を、餅田さんにかけてきた小野島さん。餅田さんは実感を込めて言うのだった。

餅田「人間らしいこと、なにも知らなかったんです。そんな化け物を人間にしてくれた。小野島さんは、私を育ててくれたんですよね」

餅田さんのおもしろい部分を見つけて、芸人として活かす。小野島さんのセンスが、「駆け抜けて軽トラ」というコンビを形作っているのだろう。

駆け抜けて軽トラ(かけぬけてけいとら)
小野島徹(おのじま・とおる)。1987年9月16日生まれ、埼玉県出身。
餅田コシヒカリ(もちだ・こしひかり)。1994年4月18日、宮城県出身。
2017年にコンビを結成。餅田さんによる、フリーアナウンサー加藤綾子さんにそっくりな顔と、似ても似つかないボディのギャップで一躍人気に。2019年12月14日放送『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)内の『博士と助手~細かすぎて伝わらないモノマネ選手権~』で優勝。以降、同番組の常連。

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