「藍さんのように何かを与える立場に」 23歳西村優菜の責任感、ロープの向こう側から一人の少女に見せた背中

女子ゴルフの西村優菜【写真:Getty Images】

ワールドレディスサロンパス杯

国内凱旋した西村優菜(スターツ)が存在感を発揮した。2日から4日間、茨城GC東C(6665ヤード、パー72)で行われた女子ゴルフの国内ツアーメジャー大会・ワールドレディスサロンパス杯。米ツアーを主戦場とし、今季初の国内ツアー参戦となった今大会は、通算8オーバーの98位で予選落ちした。それでも、未来を担う子どもたちに与えた価値は大きかった。

今季初国内凱旋となった西村の初日に、平日から集まった大勢のギャラリーが大声援を送った。ロープで隔てられた大人たちの群衆のなかに、西村のグッズを身に着けた少女がいた。

小さな体でショットの行方を必死に探し、「ラフ?」と少し不安気に聞くと、西村の母・枝里子さんの「グリーンだよ」という言葉に笑顔が広がった。女の子の正体はジュニアゴルファーの小学4年生。枝里子さんが「日本の試合はいつも応援に来てくれる」と言う顔見知りで、久々の観戦で目を輝かせる姿が印象的だった。

23歳にして、今や子どもたちから憧れられる存在となった西村。国内ツアー6勝を誇り、2021年の同大会は優勝。昨季から米ツアーを主戦場にする人気プロだが、かつては自身も“ロープの向こう側”に心奪われた少女の一人。元世界ランキング1位の宮里藍さんに憧れた。

「ロープの中は凄くかっこよくて、キラキラして見えていた。藍さんや色々なプレーヤーのおかげでプロになろうと思った」

自身も憧れが原動力となり、トッププロに。「まだまだだと思うんですけど、子どもたちに見られている自覚もある。自分が藍さんを見て感じたように何かを与えられる立場にはあると思う。良いものを届けたい」。国内でプレーする機会が少ない今だからこそ、自身の背負う責任感や影響力もより自覚する。

大声援を受けた日本ツアーとは一転、米ツアーは観客が減り、静かな中でのプレーとなる。「上手くなって帰ってきたい」。今大会は納得のプレーには程遠かったが、与えた影響は絶大だった。若手が台頭し、活況を呈す日本女子ゴルフ。子どもたちの希望になるべく、さらに強くなって帰ってくる。

THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe

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