「トイレにも自由に行けない」 職場にいる苦手な人、改善するテクニックは

仕事では苦手な人を避けられないことが…(写真はイメージ)【写真:写真AC】

スムーズに仕事を進めるには、コミュニケーションが欠かせません。ただ、さまざまな人が集まる職場では、苦手な人や相性の悪い人がいることも。仕事である以上、つきあいを避けられないケースが多いでしょう。そこで、「職場の苦手な人」に多くの人はどう対処しているのか、アンケートを実施。調査結果を基に、専門家にお話を聞きました。

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避けられない職場の人 「苦手な人を無理に好きになる必要はない」

アンケートは2024年4月22日に、全国の10代から60代以上のYahoo!JAPANユーザーの男女2000人を対象に実施されました(回答者の性別:男性65%、女性33%、性別を教えたくない2%/回答者の年齢構成:10代1%、20代4%、30代13%、40代30%、50代32%、60代以上19%、年齢を教えたくない1%)。

職場に「苦手な人」はいる?【画像:Hint-Pot編集部】

まず、「職場に『苦手な人』『なんとなく苦手な人』はいますか?」の問いに、83%が「はい」と回答。ほとんどの人が、苦手な人と一緒に働いている状況です。

元国際線の客室乗務員で、現在はコミュニケーションインストラクターとして活躍する瀬川文子さんは、価値観や考え方が違う相手を苦手と感じることがあるのはごく普通だといいます。

「支障がない相手なら、逃げるのも手です。ただ、職場の人間関係だと、そうできないことが多い。避けられない相手に限りませんが、苦手な人を無理に好きになる必要はないんです」

一緒に働く“仲間”だからといって、苦手な感情をコントロールしようとすると、さらに心に負担をかけてしまうと瀬川さんは指摘します。

苦手な相手との関係性は?【画像:Hint-Pot編集部】

「苦手と感じる相手」最多は「上司」 次いで「同じチームの同僚」

続いて、「苦手と感じる人との関係性は?(複数回答可)」を聞くと、「上司」が最多の43.7%、次いで「同じチームの同僚」35.9%。「その他」の記述回答には「年上の部下」や「上から目線の後輩」「常駐している外部スタッフ」といった意見も見られました。

年功序列が崩れ、多様な働き方が増えて、組織も変化しています。ただ、上司に従わざるを得ない構図は、基本的に変わりません。苦手な面を改善してほしくても、上司は指摘しにくい相手。下手をすると評価をはじめ、自分が不利になる可能性もあります。

また、瀬川さんは同じチームの同僚も「人間関係がこじれ、仕事がやりにくくなるのを懸念する人は多いはず。そのため上司と同様に、我慢しがちな相手かもしれません」と分析します。

苦手と感じる主な理由は?【画像:Hint-Pot編集部】

苦手に感じるのには明確な理由が… 最多は「態度が高圧的」

次に、「職場で『この人、苦手だな』と感じる主な理由はなんですか?(複数回答可)」を聞くと、「態度が高圧的」が半数近い47.5%、次いで「嫌なことをされた、言われた経験がある」33.3%。「なんとなく」ではなく、理由が明確なケースが多いようです。

さらに、「苦手な人と仕事をするうえで、とても困っていること、強くストレスを感じること」の記述回答では「人の意見を聞かない」「あいさつをしない」「嘘をつく」など、人間性の要素のほか、3つに分類できる意見が目立ちました。

○避けられないのがストレス
「ふたりきりになることがあり、困る」「プライベートに踏み込んでくる」「悪口が多く、相槌を打たないといけないのがつらい」

○仕事に支障がある
「意見対立を調整したくても相手が譲らず、うまく流せない」「コミュニケーションがうまく取れず仕事がはかどらない」

○心身の不調や退職につながる状況
「ちょっとのミスでも、いきなりヒートアップしてキレるので怖い」「トイレにも自由に行けない」

相手が聞く体勢になる前置き言葉で“対話の技術”を駆使

いずれもつらい状況ですが、「トイレにも自由に行けない」というのは健康に影響があり、とくに深刻です。ほかにも、苦手を超えたハラスメントを訴える声が見られました。瀬川さんは、そうした事態は早急な改善が必要で、場合によって人事や上席者などへ働きかけるべきと指摘。率直に言いにくい相手には、“対話の技術”を駆使して話を進めるのが有効とアドバイスします。

「伝えにくい話の“対話の技術”で、大事なのは本題に入る際の前置き言葉。まず『聞いていただきたいことがあります』と、相手が聞く体勢になる言葉を選びましょう。その前に『お伝えしていいか、とても悩んだのですが』など、躊躇する様子を見せるのも効果的です。

よく使われる『お話があります』は、相手が“応戦しなければ”という心理になりやすいため、避けてください。また、話す際には主語を『あなた』にすると責める形になり、相手が話を受け入れられない気持ちになるので、あくまで『私が』つらいこと、困っている事実を伝えるのがポイント。難しい状況ほど“対話の技術”をうまく使ってほしいですね」

こうしたテクニックは苦手な相手に直接、改善を求めるときだけでなく、人事などに状況を伝える際にも有効だといいます。

苦手な人と接するとき、どうしている?【画像:Hint-Pot編集部】

過半数が「さりげなく距離を取る」対処法を選択

続いて「苦手な人と接する場合、基本的にどうしていますか?」と聞いたところ、過半数の51.6%が「さりげなく距離を取り、最低限の接触で済ませている」と回答。

「苦手と悟られないよう、我慢して接している」(15.9%)、「できるだけ接触せず、避けていると伝わるようにする」(9.9%)と、多くの人が苦手な人に我慢して対立を避けているようです。

瀬川さんによると、そうした苦手な人への我慢を軽減・改善する方法があるそう。「苦手に思う点を分析し、書き出すなど言語化すること。次に、なぜ相手が嫌なことをするのか、背景や要因がわかると“そんな理由か”と気持ちがゆるむほか、具体的な対処法が見えてきます」といい、苦手な人とは距離を取りつつ、興味を持って観察するのが第一歩だと話します。

「苦手な人と仲良くなった」経験者が多数

さらに、今回の調査では、かなり多くの人が“苦手だった相手と仲良くなった”実体験があると判明。「『苦手な人と仲良くなれた』など関係を改善できた経験があれば、きっかけや要因を教えてください」の記述回答では、4つのパターンで関係改善した意見が多く見られました。

○荒療治
「けんかして仲良くなった」「目の前でキレてみたら改善した」

○歩み寄って改善
「思い切って懐に飛び込んだら、かわいがってもらえるようになった」「腹を割って話してみたら、仲良くなれた」「共通の話題ができて、話しやすくなった」

○向き合ってみたら嫌な人じゃなかった
「ランチで話してみたら、意外と気が合った」「一緒に飲んだら、苦手意識が解消された」

○自分のアクションで相手が変わった
「“苦手と思わない”と自己暗示をかけ、優しく対応したら相手も優しくなった」「仕事のフォローをしたことで、相手の態度が変わった」「トラブルを一緒に乗り越え、打ち解けた」

瀬川さんは、「苦手に思うのは、主に第一印象でレッテルを貼って、“嫌な人”と思い込んでしまう場合も多い」と解説。共通の話題や相手の良い点が見つかると、意外に関係改善できることが多いそうです。

「さまざまな価値観や違う考えの人がいるから、仕事がうまく回り、より高い成果をあげられます。多様性の時代。お互いを尊重するなか、避けられない相手には“その人はその人”という心持ちで接しましょう。苦手な人とは距離を保って、自分の心と体を優先し、必要なときには関係を断つ方法を考えることも大切です」

※この記事は、「Hint-Pot」とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。

瀬川 文子(せがわ・ふみこ)
コミュニケーション・インストラクター。日本航空客室乗務員として14年間国際線勤務後、子育てをしながら米国のコミュニケーション訓練のプログラムの指導員をはじめ多くの資格を取得。コミュニケーションの大切さを講演、研修、著作で伝えることをライフワークとして活躍している。テレビや雑誌のインタビューに加え、主な著書に「聞く、話すあなたの心、わたしの気もち」(元就出版社)、「職場に活かすベストコミュニケーション」(日本規格協会)、「ママがおこるとかなしいの」(金の星社)ほか多数。

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