ロシアによるゼレンスキー氏暗殺計画を阻止、「スパイ」2人逮捕=ウクライナ当局

ジェイムズ・ウォーターハウス(キーウ)、ラウラ・ゴッツィ、BBCニュース

ウクライナ保安庁(SBU)は7日、同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領と複数の高官を狙ったロシアの暗殺計画を阻止したと発表した。

SBUによると、これに絡んで国家警備局の大佐2人が逮捕された。ロシア連邦保安庁(FSB)の工作員ネットワークに加わっていたという。

2人はゼレンスキー氏のボディーガードの中から、同氏を誘拐・殺害する「実行犯」役を引き受ける人物を探していたという。

ロシアが2022年2月にウクライナ本格侵攻を開始し、直後に空挺部隊をキーウに送り込んでゼレンスキー氏の暗殺を試みて以来、多くの暗殺計画が存在してきたとされる。

ゼレンスキー氏は侵攻が始まった際、自らをロシアの「一番の標的」だとしていた。

しかし、今回の計画は他のものとは大きく異なる。公職者や組織を守る立場の現役大佐らが、スパイとして雇われていたとされるからだ。

SBUによると、今回の計画ではゼレンスキー氏のほか、ウクライナ国防省のキリロ・ブダノフ情報総局長やSBUのヴァシル・マリュク長官も狙われていたという。

ブダノフ氏に関しては、正教会の復活祭(今年は5月5日)の前に、今回と同じグループが殺害を狙った計画もあった。この計画に関わった者たちは、ブダノフ氏の居場所の情報をスパイから入手し、ロケット弾やドローン(無人機)、対戦車手投げ弾で攻撃する予定だったという。逮捕された当局者の一人は、ドローンと対人地雷を購入済みだったという。

SBUのマリュク長官は、今回の攻撃について、「大統領就任式を前にしたプーチンへの贈り物」になるはずだったと述べた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は7日、クレムリン(ロシア大統領府)で通算5期目の就任式に臨んだ。

マリュク長官は、今回の作戦はロシア特殊部隊の失敗に終わったと説明。「だが忘れてはならない。敵は強く、経験豊富で、侮ることはできない」と述べた。

逮捕されたSBUの大佐2人は、国家反逆とテロ行為準備の疑いで拘束されている。

SBUによると、FSBの職員3人が、今回の組織と攻撃を監督していたという。

そのうちの一人、ドミトロ・ペルリン氏は、ロシアがウクライナに本格侵攻する前からウクライナ政府内の「モグラ(内通者、協力者)」をリ)クルートしていたという。

別のFSB職員、オレクシー・コルネフ氏は、逮捕されたウクライナの大佐の1人と本格侵攻の前に「近隣の欧州諸国で」、「共謀に関する」会合をもっていたという。

公開された容疑者の一人に対する取り調べ内容からは、容疑者らが小包で直接的に、あるいは親族を通じて間接的に、数千ドルを受け取っていたと説明しているのがわかる。この容疑者が強要されて話したのかは定かではない。

捜査当局は、暗殺計画の関係者らを監視し続けていたと説明している。計画が実行にどれだけ迫っていたのかは不明。

戦時にあってゼレンスキー大統領は、常にリスクに直面している。

先月も、ゼレンスキー氏の暗殺を手助けするためにロシアの情報機関と協力することを計画したとして、ポーランド人男性が逮捕・起訴された。

先週末には、ゼレンスキー氏は不特定の容疑で、ロシア内務省の指名手配リストに載せられた。

この動きについてウクライナ外務省は、「ロシアの国家機構とプロパガンダがいかに必死か」示すものだと非難。プーチン大統領には国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ていると指摘した。

(英語記事 Russian plot to kill Zelensky foiled, Kyiv says

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