猫に人用の『かつお節』をあげ続けるのはダメ?考えられる3つのリスクと正しいあげ方

猫に人用かつお節をあげるリスク3つ

愛猫に毎食かつお節をあげ続けていると、健康を害するリスクがあります。

直接的なリスクもあれば、間接的なリスクもありますが、どのような理由でかつお節が危険なのか把握しておきましょう。

1.腎臓病

人用のかつお節には、塩分が含まれています。猫にかつお節をあげすぎるのは危険だと言われる要因のひとつです。一般的に塩分の摂りすぎは、腎臓への負担が大きくなり病気になるリスクが高くなります。

腎臓は、血液をフィルターのように通し、不要な物質や毒素を取り除いて水分とともに身体の外に排出します。これにより、体内の血液がキレイに保たれ、体の機能がスムーズに維持されているのです。

しかし、塩分を摂りすぎると血中ナトリウム濃度が上昇し、血液の浸透圧に変化します。その結果、腎臓の負荷が増加して過剰労働になってしまいます。長期に渡る腎臓の過剰労働は、腎不全への引き金となってしまうのです。

また、ナトリウムは血管内の圧力も上昇させるため、高血圧になる可能性も出てきます。高血圧は腎臓だけでなく、心臓や脳にも深刻な影響を及ぼします。

通常の製法で作られたかつお節を、健康な猫がごく少量食べる程度であれば問題にならない程度の塩分ですが、与えすぎには注意が必要です。また出汁パックなどのかつお節加工品は、塩分が添加されている可能性があるので注意が必要です。

2.尿石症

猫はもともと泌尿器系の病気に掛かりやすく、尿結石はどの猫でもなる可能性がある病気です。特に猫に多いストルバイト結石の原因のひとつは、リンとマグネシウムを多く含む食材といわれています。

かつお節には、リンやマグネシウムなどのミネラルが含まれているため、過剰にあげると体内のミネラルバランスが崩れ、尿結石のリスクが高くなる可能性があります。特にリンは泌尿器用の療法食に比べると多く含まれているため、尿石(尿結晶)や腎疾患がある猫では注意が必要です。

ミネラルは、筋肉の収縮や神経伝達、体液のバランスなどにはたらき、生きていくためには欠かせない成分ですが、これらを正常に機能するには、ミネラル群のバランスが重要です。

結石の発生を最小限にするには、生命の維持に必要なリンとマグネシウムを適切な比率と量で摂取することが望ましく、ミネラルを単純に減らせばよいというわけではありません。

更に最近の研究では、高ナトリウム食による結石形成のリスクに関しても示唆されています。

栄養の調整されたフード以外にかつお節をたくさんあげてしまうと、バランスが崩れて尿結石を誘発する可能性があるのです。

3.偏食を誘発する

かつお節をあげることで偏食を誘発するというのは、直接病気になるリスクではありません。しかし、かつお節を継続的にあげることによって、通常の食事では物足りなくなってしまい、きちんと食事をしなくなる可能性があります。

たとえば、毎食トッピングにかつお節を使っていたために、かつお節がないと食べ残してしまう、あるいはまったく食べなくなってしまうといったリスクです。

猫が偏食気味になれば、栄養のバランスが崩れ、健康問題を引き起こす可能性があります。

食べ残しが続き、十分に栄養を摂取しないと皮膚や毛並みの問題、体重の減少や免疫力低下などを引き起こすかもしれません。十分なエネルギーを摂取できないと肝臓を傷めるおそれもあります。

また、かつお節に慣れてしまうことで、それ以上においしいおやつのようなものばかりを食べて、肥満や栄養失調が進行してしまうことも大きなリスクと考えられます。

猫にかつお節を与えるには

かつお節はリスクばかりではありません。

食事制限のない健康的な猫であれば、たまにあげるご褒美で猫の食生活を豊かにしてあげることができます。

そのためにも、猫にかつお節をあげるときの正しい方法を学びましょう。

猫用の「無塩かつお節」を与える

人用のかつお節製品の中には、作る工程で塩分を添加していることがあります。かつお節の乾燥時に醤油などで味付けをしているものもあるのです。

かつお節のうまみ成分に加えて、醤油の香りや塩味を加えることで、よりいっそう美味しさを感じるように作られているのです。

もちろん猫は、まず嗅覚で食欲を感じます。さらに、人より味覚に対しての感度は高くないとはいえ、うまみも塩味も感じることができます。そのため、人用のかつお節をあげてしまうとハマッてしまい、だんだん塩分の多いものを欲するようになる可能性があるのです。

ただし、猫用かつお節の中には、人用として商品化できないものをリパックしているだけのものもあります。購入時には、原材料をよく見てから購入しましょう。

量と頻度を控える

どんなに安全なかつお節でも、量や頻度に関しては、節度を持ってあげるようにしましょう。

一般的に売られている小分けの使い切り用削り節は、1パックの量はだいたい1.5~3gくらいです。業務用のだし取り用花かつおの大パックでも100gくらいです。

文科省のデータベースによると、かつお節のナトリウム量は100gあたり130mg、かつお節1gに換算するとナトリウムは1.3mgです。ただし、製品によってはさらにナトリウム含有量が多い可能性もあります。

また、AAFCO(米国飼料検査官協会)によると、猫用ドライフードに含むべきナトリウムは0.2%(乾物1gあたり2mg)が最小量と基準化されており、最大量の基準はありません。

総合栄養食なら、栄養基準の最小量は守られていますが、上限がないので商品によって実際のナトリウム含有量が異なります。そのため、さらにかつお節をあげることで、摂取量が大きく上回ってしまう可能性があるのです。

もし猫にかつお節をあげるなら、1~2gのかつお節を数回にわけてあげ、普段から食欲があるのであれば、頻度もたまにご褒美としてあげるくらいに留めましょう。

一般的にかつお節自体のナトリウム量は多くはありませんが、食事と別になれば追加要素となってしまうことに留意しましょう。

また、心疾患や腎臓疾患のある猫は、あげる前に必ずかかりつけ獣医師に相談しましょう。ナトリウム摂取量に制限が必要な場合があります。

あげ方を工夫する

市販のかつお節パックは、鉛筆を削ったようなヒラヒラと薄い形状をしています。そのままの状態で猫にあげると、まるで綿菓子を食べたように口の中で消えてしまい、猫は食べた気がしないため、よりたくさん食べたがってしまいます。

そのため、猫にかつお節をあげるときには、すこし形状を変えてあげましょう。そうすれば、ミネラルの過剰摂取を防げます。

たとえば、かつお節をパックごとよく揉んで粉末状にします。これを食事のトッピングにすると、少量でも全体にいきわたるため、そのままあげるのと比べて使う量はごくわずかで済みます。

また、お茶や出汁用のパックにかつお節を入れてドライフードの中に一緒に保存することで、いつものフードにかつお節のおいしい香りづけをすることができます。猫の食欲は香りに大きく影響されますので、食事内容に制限がある場合は有効な方法です。

このようにあげ方を工夫することで、猫の健康に配慮することができます。

まとめ

多くの猫が大好きなかつお節ですが、今回は人用のかつお節を猫にあげるリスクについて解説してきました。

猫に人用かつお節を過剰にあげ続けてしまうと、塩分やミネラルなどにより、泌尿器系の病気になってしまうリスクが考えられます。また、嗜好性の高さから、偏食を招く可能性も指摘しました。

かつお節に含まれるミネラル量は、思いのほか、多くはありません。しかし、ふだんの食事以外で食べさせることを考慮すると、必要以上に摂取してしまう可能性は十分に考えられます。

持病がない健康な猫の場合は量や回数を抑えて、たまにトッピングしてあげるくらいなら大丈夫です。

猫にあげるかつお節には「無塩タイプ」を選び、基礎疾患がある猫には、基本的にはあげないなど、おいしさと安全性のバランスを考慮するようにしましょう。

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