今日は絶対に1杯だけにするぞ! と心に決めていても、気づくと飲みすぎて大後悔……といった経験をしたことのある人は少なくないでしょう。実はこの現象、“意志の強さ・弱さ”は関係なく、医学的に原因があると、尾形哲医師はいいます。いったいどういうことか、尾形氏の著書『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)からみていきます。
今日は1杯だけって決めていたのに…気づけば2軒目!?
出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋 漫画:松本麻希 出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋 漫画:松本麻希
1杯で終わらないのは「ドーパミン」が原因!?
お酒を減らそうとしても、1杯飲んだらその後、コントロールできなくなることはありませんか? 飲んでしまったことを悔やみ、落ち込むこともあるかもしれません。ただ、これは意志の強さ・弱さではなく、アルコールが脳にとって、幸せというご褒美をくれる存在だということが根本にあります。
カギを握るのは脳内物質の「ドーパミン」です。ドーパミンは、中枢神経系に存在する神経伝達物質で、元気、やる気、幸せな気分をもたらす快楽物質です。アルコールはドーパミンを放出する脳の報酬系に作用しやすいため、飲酒は幸せにつながると脳に記憶されます。そして、飲酒経験を繰り返すことにより、この記憶はさらに深く脳に刷り込まれていくのです。
こうなると、シラフであっても「今日は飲むぞ!」と思っただけで、反射的にドーパミンが放出されるようになるのです。今日は1杯でやめると心に誓ったところで、あっさりその壁を超えてしまうのは、こうした理由があります。
事実、アルコールの報酬は脳にとって魅力的なもので、高い依存性からも裏付けられます。実験動物による研究では、アルコールの依存性の高さは、違法薬物であるモルヒネ、アンフェタミン(覚醒剤)、コカインに匹敵します。だから、脳をだましながら、少しずつ減らす工夫が必要なのです。
[図表1]飲酒は脳内の快楽物質を増やす 出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋
そもそも「酔う」ってどういうこと?
[図表2]アルコール血中濃度と酔いの状態 出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋
お酒を飲むと気分がよくなったり、フラフラしたりと、“酔った”状態になります。酔いにもレベルがありますが、アルコールは合理的な思考を司る大脳新皮質の働きを抑制します。普段言わないようなことを口にしたり、気が大きくなったりするのはそのためです。血中アルコール濃度が上がるにつれて脳への影響は大きく、感覚は鈍くなっていきます。
飲酒後、アルコールは何時間で分解される?
[図表3]飲酒量と代謝・分解時間の目安 出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』KADOKAWA)より抜粋
飲酒運転がいけないのは当然ですが、仮眠をとっても「酒気帯び運転」にならないわけではありません。
飲酒運転の基準は、呼気1L中に0.15mg以上のアルコールを検知した場合が該当します。通常、1時間で分解できる純アルコール量(g)は体重(kg)×0.1ほど。純アルコール量20gを分解するには、男性で3時間、女性で4時間ほどかかるのです。
尾形 哲
医師
一般社団法人日本NASH研究所 代表理事