科学技術が従来型農業変革の原動力に 中国吉林省長春市

科学技術が従来型農業変革の原動力に 中国吉林省長春市

吉林省長春市農安県の黒土地帯塩・アルカリ退化モデル区で、ドローンに積まれた機器が採取したスペクトルカーブと航跡可視化インターフェース。(4月24日撮影、長春=新華社記者/周万鵬)

 【新華社長春5月8日】中国では農業の現代化が進むのに伴い、低コスト、高効率、高精度を特長とする精密農業モデルが盛んになっている。科学技術イノベーションの影響下で「新たな質の生産力」(科学技術イノベーションが主導し、質の高い発展を促す生産力)が農業の新業態を生み出す原動力となり、従来型の農業モデルは変化し続けている。

 中国東北部では4月から春の耕作シーズンを迎えており、吉林省長春市寛城区陳家店村では、職員が黒土の田畑や野原で土壌サンプルを採取して標本箱に入れ、車に積んであった黒い装置にセットすると、2分足らずでマグネシウム、カルシウム、セレンなど、黒土に含まれる微量栄養素のデータが得られた。

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吉林省長春市農安県の黒土地帯塩・アルカリ退化モデル区の、紫外線マルチスペクトルと可視光線ハイパースペクトルを組み合わせて黒土土壌に蓄積された有機炭素を逆解析した測量図。(2023年5月11日撮影、長春=新華社記者/周万鵬)

 中国科学院長春光学精密機械・物理研究所の精密農林業イノベーションチームに所属する許亮(きょ・りょう)氏によると、これはスペクトル分析器で、レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)によって黒土の微量元素が検出できる。耕作地の土壌の状態をしっかりと把握できるため、その後の科学的な施肥に役立つという。

 はるかな宇宙でも、人工衛星が精密農業を推進する上で大きな役割を果たしている。長春市に拠点を置く商用リモートセンシング衛星企業、長光衛星技術が運用する108基の「吉林1号」衛星コンステレーション(小型衛星群)は、宇宙から同省の耕地の基本情報を調査している。

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吉林省長春市寛城区陳家店村で、ドローンに搭載したハイパースペクトル黒土土壌情報感知器の測定前調整を行う中国科学院長春光学精密機械・物理研究所の職員。(4月24日撮影、長春=新華社記者/周万鵬)

 同社の農林業分野応用責任者、曲春梅(きょく・しゅんばい)氏は、同市農安県の衛星画像を示し、「昨年の衛星画像データと対比することで、農安県の耕地面積の変化状況を確認することができ、政府が関連の土地政策を策定する上で、裏付けとなる。衛星リモートセンシング画像の熱赤外波長帯域の反射率データは、耕作前の干ばつ・洪水予防対策や土壌の湿度調節にも重要な意義がある」と語った。

 東北部の広大な黒土地帯では、「星・空・地」(衛星・空中・地面)の立体観測総合試験、すなわち高度な計器を利用した、土壌表面の形態や土壌特性のサンプリング調査と立体的観測が実施されている。

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吉林省長春市農安県の黒土地帯塩・アルカリ退化モデル区で、黒土土壌情報感知器の測定前調整を行う中国科学院長春光学精密機械・物理研究所の職員。(4月24日撮影、長春=新華社記者/周万鵬)

 中国科学院東北地理・農業生態研究所の劉煥軍(りゅう・かんぐん)研究員によると、人が全面的な健康診断をするように、チームは土壌の理化学的性質や土壌表面の形態について全方位、全波長の診断を行い、今後の可変施肥、小流域治水、科学的栽培のためのデータを提供していくという。研究チームは現在、ビッグデータ収集作業を完成させようとしている。(記者/孟含琪、周万鵬)

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