アジア王者に王手の横浜。水沼宏太は「必死にもがいてきた」歩みに胸を張る。指揮官の選手目線のアプローチに感謝も

横浜F・マリノスは5月11日、横浜国際総合競技場で行なわれるアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の決勝・第1レグで、UAEのアル・アインと対戦する。

自身5度目のACLを戦う水沼宏太は、チームが決勝に進めた要因をこう語る。

「予選では同じチームに2敗してしまって、自分たちの弱さもありましたけど、その反省を踏まえて、しっかり自分たち(のサッカー)を体現しながら“勝ちたい”“諦めない”っていうところで必死にもがいてきたから、ここまで来れたと思います。

組み合わせとか、それこそ準々決勝の山東(泰山/中国)は予選でも勝っていたので、やりやすい相手だったのかもしれないですけど、ノックアウトステージで戦ったら、また別のチームだと思いましたし、それぞれのチームの懸ける想いを感じました。それを上回ることができたのも、一つの要因だと思います」

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アンジェ・ポステコグルー監督(現・トッテナム)がアタッキングフットボールの礎を築き、それを継承・進化させたケヴィン・マスカット監督(現・上海海港)が今大会のグループステージ突破までチームを率いた。また、角田涼太朗(現・コルトレイク/ベルギー)や西村拓真(現・セルベッテ/スイス)、一森純(現・G大阪)など、今は別のチームで活躍している選手たちの貢献があったからこその決勝進出でもある。

水沼も「プレミアで活躍しているアンジェに、アジアのタイトルを獲れたニュースを送ることができれば、誇らしく思ってくれるはずです。ケヴィンだけじゃなくて、去年はいたけど今年はいない選手もいるし、今年から加わった選手もいる。いろんな仲間が携わった決勝だと思うので、去年からいる身としては気持ちが強い」と話す。

24年シーズンからはハリー・キューウェル監督が指揮を執る。そのマネジメントについては、こう言及する。

「これまでの監督と同様に、歴史を変えるため、チームにタイトルをもたらすために何をしなければいけないかは一緒です。ただ、ハリーは指導者目線というより選手目線で声をかけてくれる。現役時代にチャンピオンズリーグを獲っていることもあって、『(大舞台は)楽しい大会なんだ』『楽しむことが一番だ』というアプローチをしてくれる。それはアンジェともケヴィンとも違う」

オーストラリア人指揮官の言葉が、選手たちの背中を押しているという。

「リーグ戦とACLを並行して戦うのは大変ですけど、それは強いチームしか経験できないこと。蔚山とのPK戦は緊迫感がありながらも、楽しむ気持ちがあったと思いますし、センターサークルで肩を組んで並んでいる時、相手のほうがこわばっている感じもした。それは監督のアプローチがあったからだと思う。楽しもうと言われたことで、僕自身は楽しめた」

泣いても笑っても、あと2試合。水沼だけでなくチーム全員が「楽しむ」を体現できれば、クラブ初のアジアのタイトルに近づくはずだ。

取材・文●金子徹(サッカーダイジェスト編集部)

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