メンタル最強・クロちゃんが語る「自己肯定感」を得るヒント「一人でできないことは群れの中でもしない」

クロちゃん 撮影/有坂政晴

唯一無二すぎるキャラクターで、いちどその魅力に気づくと目が離せなくなってしまう芸人、安田大サーカス・クロちゃん。近年は『水曜日のダウンタウン』(TBS系)などで芸人界屈指の「クズキャラ」として名を馳せている一方、人間らしい「喜怒哀楽まみれ」の姿に好感度もアップしている。そんな最低で最高な人間・クロちゃんの「THE CHANGE」とは。【第2回/全5回】

近年、育児において大きなキーワードとなっている「自己肯定感」。「ありのままの自分を肯定する感覚」という意味があり、自己肯定感の高い子どもに育てるべく、さまざまな育児法があふれている。
どんなに苦言を呈されても自分のスタイルを一切変えず、自身を肯定する姿を見せてくれる人間といえば、まっさきに思い浮かぶのはクロちゃんではないだろうか。

「僕、よく泣くじゃないですか。泣く男って“かっこ悪い”と言われるけど、僕は逆に“あぁ、自分にもこの感じがまだあったんだな、よかったな”と思います。むしろ、泣きたいときに泣けない人はかわいそうだなと思いますよ。そんなふうに昔から、自分のことを否定せずに肯定するほうでした」

いつも「自分を肯定するためにはどうすればいいのかな、と考えている」というクロちゃんの自己肯定感は、家庭で育まれたものではないのだろうか。そこに、育児に悩む親にとってのヒントがあるのかもしれないがーー。

「うーん、なんかあるかなあ? 昔から、自分が間違っていないと思ったら絶対に貫いていましたね。たとえば朝のあいさつ。小さいころから近所の人に“あいさつができていい子だね”と褒められていたから、これはいいことなんだと思って、誰彼構わずあいさつしてましたし。駐輪場で自転車が倒れていたら、自分が倒したわけじゃないのにひとりで全部直したり。ゴミが落ちていたら拾ったり。

……そんなことを過剰にやってしまったせいで、妹から“やめてくれ”と言われたり、学校に遅刻して先生に怒られたりもしましたが、“僕は困っている人のためにやっているんだから、まちがっていない”という信念をずっと持っていました」

ーー別にやらなくても何も言われないし、特に思春期のころなんかは、そんな真面目な行いが“カッコ悪い”ように感じてしまうこともありますよね。

「そうなんです。信号も、僕は絶対に守るタイプです。“車が通らないのになんで待つの?”と、守るほうを恥ずかしい感じにとらえる風潮もありますし、たしかに“ちょっと恥ずかしいな……”という気持ちになることもあるけど、“いやいや、ちがうちがう!”と自問自答はして、守っていました」

母親と3日間、口をきかなかった理由

ーー周囲に流されないんですね。

「そうですね、つるむことも好きじゃないんですが、それもやっぱり自問自答する。“俺は一匹狼としての牙をなくしてしまったのか?”と。Xにポストしたりもするんですけど、けっこう本気で思っていて。群れの中で調子に乗る人がイヤで、そんな人を見ると“一人のときも調子に乗れよ”と思うから、一人でできないことは群れの中でもしないでおこうと思っています」

ーー……かっこいいですね。

「そういうの、ダサいと思っちゃうんですよね」

クロちゃん 撮影/有坂政晴

信念を曲げず、けっして流されないクロちゃんだが、両親の姿に衝撃を受けたことがあるという。

「うちの親、夜中にけっこうケンカするんですよね。お互いにすごく怒っているのに、翌日の朝、母親は何事もなかったかのように普通にしているし、父親も普通にしている。僕だったら引きずるし、一生口を利かないくらいなのに。“あんなにケンカしたのに、なんなんだろう!?”と思って。それで母親に聞いたんです。そうしたら“次の日になったら、普通にしておきたいものだから”って」

ーー信念を曲げないクロちゃんには、あまりない感覚かもしれませんね。

「そうなんです。腹が立っているんだから、腹が立っていることには変わりないだろうに、どうしてそんなことができるんだろう? と」

ーーそんなご両親に影響を受けて、クロちゃんも切り替えられるようになったり?

「いや、僕はめちゃくちゃずっと怒っています。実家にいたころ、『週刊少年ジャンプ』のスクラップをしていたんですよ。『キン肉マン』だったら、そのページだけ抜き取ってまとめて。単行本も買っていましたが、それとは別にジャンプサイズの大きい1冊にしようと思って溜めていたんです。それを母親が勝手に捨てて、怒って3日くらい口を利かなかった」

ーー3日も!

「都合がいいことだけしゃべる、というわけじゃなく、本当に一切しゃべらなかったですからね」

頑なに怒り続けたクロちゃんが、4日目に口を開いた理由は、実にシンプルだった。母が「捨てた」と言っていた、お手製ジャンプサイズコミックスを作る予定のスクラップの束、それが実は倉庫に保管してあったのだ。

「“あ、よかったー”とホッとしました。まぁ、それで実際に本を作っていたわけではないから、ゴミだと思われたのもわかるんですけどね。でも、自分のなかで“本を作るんだ”という意志があったから、そこは曲げられなかったんですよ」

自分を信じ続けたクロちゃんを、両親はフラットに見守っていた――。それこそが、クロちゃんの自己肯定感が育まれる一因になったのかもしれない。

クロちゃん
1976年12月10日生まれ、広島県出身。2001年、団長安田、HIROとともにお笑いトリオ『安田大サーカス』を結成。コワモテフェイスとギャップのあるハイトーンボイスが特徴で、近年は『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で大ブレイクし、「愛すべきクズキャラ」として人気を集めている。アイドル好きとしても知られ、アイドルグループ『豆柴の大群』アドバイザーとしての顔や、アイドルフェスプロデューサーとしても才能を発揮している。

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