「配属ガチャ」「上司ガチャ」…「ガチャ」に翻弄される〈平均月収33万円〉日本の会社員、悲劇の実態

会社員であれば、思い通りにいかないシーンに直面することはしばしば。そんな事態を昨今は「OOガチャ」と表現することも多く、ときに、最悪の結果を招くことも。会社員が直面する「ガチャ」と、それにより起こりうる悲劇の実態をみていきます。

会社員であれば「ガチャ」は避けることができない

ゴールデンウィーク明け、誰もが仕事に億劫になっているところ、群馬県の地銀で、25歳の若手社員が自殺、労災認定されていたことが話題になっています。

自殺の原因は配置転換に伴う未経験業務への重圧、そして上司によるパワハラによる複合的なもの。異動からわずか2ヵ月で命が絶たれたことに、多くの人が何ともいえないやるせなさを感じました。そして今回、会社として当たり前とされている「配属ガチャ」と「上司ガチャ」による犠牲という声も。

昨今はスマホゲームでアイテムを引く「ガチャ」になぞらえた表現として「OOガチャ」という言葉がよく使われるようになりましたが、サラリーマンは、まさにガチャの連続。就職し、意気揚々としている新卒社員に待ち受けるのが「配属ガチャ」。これは新入社員が希望する勤務地や職種に配属されるか分からないことを指し、最近は異動による配属の際にも使われることがあるようです。

この配属ガチャ、多くがハズレを引きがち。企業側としては「色々な経験を積んでほしい」とか、「まずは営業として働き、会社というものを知ってほしい」などという思いで、本人の希望とは違う部署に配置。それに対し「希望と違う!」と明らかにモチベーションを下げ、配属1日目で退職を申し入れるケースも珍しくはありません。

また配属ガチャと同じタイミングで起こりがちなのが「上司ガチャ」。希望していない部署でも「上司がいい人だから頑張ろう!」と思えた、というのはよくある話。その反対だと……目も当てられなくなります。今回の不幸については、「土日に上司の家に呼び出され、急に仕事をさせられることもあった」と、友人に漏らしていたとか。「上司ガチャ」というには少々軽すぎるものですが、サラリーマンは上司を選ぶことができず、それにより会社人生が大きく変わることも。

同じように「同僚ガチャ」「部下ガチャ」という言葉も一般化。組織においては人は選ぶことができません。ハズレを引いてしまうのは、もはや運としか言いようがないのです。

会社員の「8割以上」が仕事で強い不安や悩み、ストレスを抱えている

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、会社員(正社員・兵器年齢42.7歳)の平均給与は、月収で33.6万円、賞与も含めた年収は544.8万円です。そんな日本の会社員が、過労自殺へと追い込まれる現状を、厚生労働省『令和5年版過労死等防止対策白書』で確認していきましょう。

2022年(令和4年)、勤務問題で自殺をしたのは2,968人。2021年の1,935人から50%強増加となりました。その内訳をみていくと、最多は「職場関係の人間関係」で26.5%。「仕事疲れ」24.4%、「職場環境の変化」19.8%、「仕事の失敗」11.8%と続きます。

*1:「職場の人間関係 (上司とのトラブル)」と「職場の人間関係(その他)」の合計

*2:「仕事疲れ(長時間労働)」と「仕事疲れ(その他)」の合計

*3:「職場環境の変化(役割・地位の変化等)」 と「職場環境の変化(その他)」の合計

また年齢別にみていくと、最多は「40~49歳」で27.5%。「50~59歳」25.1%、「30~39歳」が18.2%、「20~29歳」が17.4%と続きます。

仕事や職業生活に関することで強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合は、 2022年は82.2%。そのような状況に対して、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は 63.4%。令和9年までにメンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を80 以上とすることを目標としていますが、昨今、60%前後をいったりきたり、という状況から鑑みると、目標達成は難しいといわざるをえません。

職場で感じる強いストレス。起因となるもののひとつが、会社人であれば避けて通れない「OOガチャ」。ひと昔であれば「石の上にも三年」とされ、希望通りになくても我慢するのが当たり前でしたが、昨今は、自身が思い描いている方向性と異なるならさっさと会社を辞めればいい……そういう風潮は広がりつつあります。それでも「辞めたい、けど、辞められない」と八方塞がりになる人も珍しくはありません。

このような場合に有効なのが「退職代行サービス」。最近利用者が増加しているサービスです。

日本労働産業ユニオンが行った『退職代行利用者のアンケート』によると、利用者4,963名のうち最多は「20代」で2,951人。続いて「30代」が1,050人、40代が512人と続きます。利用者の雇用形態は「正社員」が4,113人と圧倒的。勤続年数別では「1年以内」が2,408人、「1~5年」が1,802人、「6~10年」が671人と続きます。

「退職代行サービス」を通して退職の意思が伝えられたとき……「最近の若者は」などと嘆いていては、いずれ、取り返しのつかない事態が起きる可能性も。「言いたいこともいえない組織風土」であることを、まずは自覚することが重要だといえそうです。

[参考資料]

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

厚生労働省『令和5年版過労死等防止対策白書』

日本労働産業ユニオン『退職代行利用者のアンケート』

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