「偽造マイナカード」で知らぬ間に携帯の機種変更 225万円のロレックス購入される 「最後一息ついとる。コーヒー飲んでる、腹立つわ」と被害受けた市議

知らぬ間に携帯の機種変更をされた上に、勝手に高級時計のロレックス購入も。 これを可能にしたのは、「偽造マイナンバーカード」だった。

■携帯がある日突然「圏外」に

八尾市 松田憲幸市議:最初は何が起きてるんかなと、全然、状況が理解できなかった。

被害にあったのは、大阪府八尾市の松田憲幸市議会議員(43)。4月30日、松田市議がビラ配りをしていたときに、スマートフォンに異変が起きたことが始まりだった。

八尾市 松田憲幸市議:スマホで時間を見ようと思ったら、(電波が)立ってない。電波障害かなと思って、電源を消したりしたけど、変わらなくて。

突然、スマートフォンに「圏外」の表示が出て、通信できなくなった。

■キャッシュレス決済で17万円 「コーヒーで一服」まで

近くのソフトバンクショップを訪れ、契約状況を調べてもらったところ、驚くべきことを告げられた。

八尾市のソフトバンクショップ店員:松田さん、名古屋市の店舗で、機種変更していますよ。

八尾市 松田憲幸市議:全く身に覚えのない所だし、名古屋の店ってどこかも分からないし。

名古屋市の店舗に問い合わせると、何者かが松田市議のふりをして、偽造マイナンバーカードを提示し、勝手にスマートフォンの機種変更をしていたことが分かった。つまり、契約情報の紐づけが、松田市議の手元にあるスマートフォンではなく、犯人の手元にあるスマートフォンに変わってしまったのだ。

八尾市 松田憲幸市議:名古屋でタクシーとか使っている。いろいろ支払いもしてる。

スマートフォンで使っていたキャッシュレス決済で、約17万円分が悪用された。

八尾市 松田憲幸市議:最後(名古屋のコンビニで)一息ついとるんですよ、348円。コーヒーとか飲んでるんですよ、腹立つわ。

■さらに225万のロレックス購入 未遂含めると400万超える被害

松田市議は、すぐにスマートフォンとそれに紐づけていたクレジットカードを止め、「これで大丈夫」と思いきや…。犯人は、松田市議のショッピングサイトのIDやパスワードを使い、クレジットカードが不要のローンを組んで、“225万円のロレックス”を受け取っていた。

メールやショートメッセージも全て盗まれている状態のため、セキュリティが効かず、まさに「やりたい放題」。その他の高級時計の購入などは、未遂に終わったが、買われていたら400万円を超える被害になるところだった。

八尾市 松田憲幸市議:携帯は乗っ取られるわ、チャージは勝手にされるわ、ショッピングで高額のもの買われ、想定していなかったことが一気に起きた。

■偽造マイナカード 携帯ショップで「目視では見破れない」

犯人はどうやって松田市議の偽造マイナンバーカードを作ったのだろうか。

八尾市 松田憲幸市議:(HPに)住所・名前・生年月日・携帯電話・固定電話も全部載せていた。市民の声を聞く立場なのに、連絡先を書いていないのは、どうなんだというふうになりますから。

松田市議が、市民の声を聞くためにオープンにしていた情報が悪用されてしまったとみられる。

■携帯ショップで偽造マイナンバーカードを見破るのは難しいという

携帯ショップで偽造マイナンバーカードを見抜くことはできないのか。大手携帯ショップの店員に聞いてみると…

大手携帯ショップの店員:(確認方法は)目視ですね。どのキャリアも一緒です。マイナンバーも免許証も精巧に作られると、やはり見破れないのかなと。

松田市議は、偽造マイナンバーカードによる被害の拡大を危惧している。

八尾市 松田憲幸市議:名前と住所と生年月日を目視するだけだったら、偽造カードって何百枚と作られていると思うんで、この事象は今すぐにでも起きる可能性がある。議員は仕事柄(個人情報を開示することは)仕方ないけど、一般の方は伏せる方がいい。これだけ簡単にされるので。

今回の事案についてソフトバンクは、「最新の詐欺の手口に対応した、強化対策を順次導入していく」とコメントしている。

■被害にあったら、携帯だけでなくカードや銀行口座も直ちに止める

松田議員はマイナンバーカードを偽造され、勝手に機種変更され、さらにお金を使いこまれるという被害に遭った。私たちの携帯電話には、キャッシュレス決済機能、銀行口座、クレジットカード、ネットショッピング、のデータやアプリが入っていて、それが紐づいているため、機種変更されると被害が大きくなる。

私たち誰でも被害に遭う可能性があるが、被害を防ぐ対策を専門家に聞いた。詐欺や悪徳商法に詳しい多田文明さんは、「わずかな時間でも、スマホの中の情報は知られる、携帯を止めても、Wi-Fiなどでネットにつないで物を買われる」と指摘している。

対策として、
・個人情報をさらさない。
・フィッシングメールに引っかからない。
・被害にあったら、携帯だけでなくカードや銀行口座も直ちに止める。
このようなことが必要になるそうだ。

関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:きっかけはマイナンバーカードが偽造されたことで、こういった被害につながっていったということですけれども、今はマイナンバーカードが本人確認書類として使われるケースがいろんな場面で増えてきました。例えばオンラインで手続きできるようなケースだと、逆にオンラインの方が安全性が高くて、(マイナカードを)携帯に乗せて個人情報をちゃんと照合してから、提出することができるので国も推奨しています。
問題は今回みたいな窓口です。窓口で偽造されたものを見せられた時に、本来であればそれを機械にかざして偽造されたものかどうか、確認できればいいんですけど、まだそういったところが追いついていないと、目視だけで見抜くことがなかなかできないというところが問題。

■マイナンバーカード 普及を目指すならインフラ整備も

関西テレビ「newsランナー」コメンテーターでジャーナリストの鈴木哲夫さんは、マイナンバーカードでの本人確認について問題点を次のように話す。

ジャーナリスト 鈴木哲夫さん:一言で言うとセキュリティ。今回はマイナンバーカードそのものが偽造したものが使われたわけだけど、結局はマイナンバーカードが全ての証明になる、それにともなう社会のインフラが整っていないわけです。だから目視でやっちゃったり、機械がまだそろえられてなかったりする。マイナンバーカードは今回のようなことがあると、余計に『もう作らない』『危ないよね、これ』となるでしょうね。政府はここでしっかりともう1回、説明をする。マイナンバーカードは、こういう意義があるんですよと。

ジャーナリスト 鈴木哲夫さん:つまり政策を告知して、1枚のカードでいろんなことが見えるわけだから、政策が全部1つに見えるとか、セキュリティがこうですよとか。それからインフラの整備ができていない所には、補助を出すとか。マイナ保険証もそうですよ。その機械が買えないお医者さんもいっぱいあるわけで、そういうインフラ整備なんかも、全部セットで政府がやっていかなきゃいけないという、1つの反省材料ですね。

マイナンバーカードが社会に浸透していくには、まだまだ課題がある中で、個人情報の取り扱いについて、私たちもしっかりと気をつけなくてはいけない。

(関西テレビ「newsランナー」2024年5月8日放送)

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