[石野純也の「スマホとお金」]楽天モバイルの「最強こどもプログラム」どれだけおトク? 他社の料金プランとの違いもチェック

by 石野 純也

楽天モバイルは、「最強家族プログラム」や「最強青春プログラム」に続く、新たな割引プログラムを発表しました。それが、「最強こどもプログラム」です。ターゲットは、12歳以下の子ども。生まれたての赤ちゃんや幼稚園児なども対象になりますが、事実上、小学生の獲得を狙ったプログラムと言えます。

仕組みは最強青春プログラムと同様、単純な料金割引ではなく、楽天ポイントでの還元です。Rakuten最強プランで3GB以下だった時の還元額を特に厚めにしており、他社の子ども用ケータイに対抗できるような施策に仕上げているのが特徴と言えます。

楽天モバイルは、こどもの日に合わせ、最強こどもプログラムを導入した。3GB以下のポイント還元を手厚くしているのが特徴だ

一方で、子ども用ケータイの料金プランは、他社もかなり割安に設定しており、Rakuten最強プラン以上に“最強”を名乗るハードルは高そうです。最強こどもプログラムは、本当に最強なのでしょうか。その料金体系などを比較してみました。

12歳以下、3GB以下で実質538円! 子ども向けケータイ料金に肉薄

12歳以下と対象年齢は異なりますが、最強こどもプログラムは、最強青春プログラムと基本は同じ。適用されるのはどちらか一方なので、0歳から12歳までは前者、13歳から22歳までは後者といった形でプログラムが枝分かれするようになったと考えれば、理解がしやすいでしょう。最強青春プログラムは一律110ポイントだったのに対し、最強こどもプログラムは3GB以下で料金が1078円だったときのみ、440ポイントが還元されます。

最強青春プログラムを拡張するような形で導入された。12歳以下でかつデータ使用量が3GB以下の時だけ、ポイント還元額が440ポイントにアップする

逆に言えば、3GBを超えると最強こどもプログラムは最強青春プログラムと同じになると言えます。データ使用量が少ない方がより多くのポイント還元を受けられるのは不思議なところですが、これは他社の子ども用ケータイに料金面で対抗するためと見ていいでしょう。440ポイント還元を加味した場合の実質価格は、638円になります。楽天モバイルは、ポイントを料金支払いに充当できるため、事実上の割引に近い施策です。

最強こどもプログラムは、最強家族ログラムとの併用も可能。この場合、料金そのものが110円割引になったうえで、データ使用量が3GBに収まっていれば、440ポイントの還元を受けられます。すべてを加味した実質価格は528円。スマホ用の3GBプランとして見ても破格の安さで、水準としてはMVNOの料金設定を下回っています。

3GB超のポイント還元額は、最強青春プログラムと同じ。そのため、3GB以下の実質料金が極端に安くなっている

ただし、これはあくまでスマホ用回線として見たときの話。先に述べたとおり、子ども用ケータイには専用の料金プランが設けられており、こことの比較では差が縮まります。例えば、ドコモの「キッズケータイ」には、月額550円の「キッズケータイプラン」が用意されています。家族への通話は無料。データ通信も無制限に設定されています。

金額的にはわずかに楽天モバイルの最強こどもプログラムの方が割安ですが、その差は小さいと言えるでしょう。また、金額などのディテールは異なりますが、auやソフトバンクにも、ほぼ同様のプランがあり、各社ともほぼワンコイン程度の価格で回線を持てるようになっています。

楽天モバイル自身が示していた比較表でも、子ども用ケータイ向け料金と大きな差がついていないことが分かる

必須のフィルタリングサービスが330円、料金に組み込むと……?

また、未成年のユーザーが有害なサイトなどにアクセスできないよう、法令でフィルタリングの適用が義務付けられています。保護者の判断で外すことは可能ですが、デフォルトで必須になっているため、比較にはこれを含めた方が実態に近くなりそうです。フィルタリングサービスは、ドコモ、au、ソフトバンクが無料で提供されている一方、楽天モバイルは有料。しかも、330円と結構な金額がかかります。

青少年インターネット環境整備法で、18歳未満のユーザーに対するフィルタリングが半ば義務化されている。4キャリアの中では、楽天モバイルのみ料金がかかる

このフィルタリングサービスを含めつつ、最強こどもプログラムと最強家族プログラムを適用した場合の料金は、3GB以下で実質858円に。先に挙げた子ども用ケータイに特化した料金プランと比較すると、どうしても割高になってしまいます。また、楽天モバイルの端末ラインナップには、こうした子ども用の携帯電話がなく、iPhoneやAndroidなど、一般的なスマホが選択肢になる点には注意が必要です。

フィルタリングサービスまで加味すると、楽天モバイルの最強こどもプログラムは858円に

iPhone、Androidともに、いわゆるペアレンタルコントロールの機能は搭載されており、これを利用すれば子ども用のケータイに近いレベルにまで制限はかけられますが、親側にそれなりの知識が必要で、手間もかかります。また、ガチガチに制限をかけてしまうのであれば、あえてスマホを選ぶ必要性は薄くなります。最初から機能に制約があり、サイズ感も子どもの手のひらに合った端末を使えば済むからです。

逆に、子ども用のケータイを卒業するタイミングになると、最強こどもプログラムのスマホ用料金プランという特徴が有利に働きます。上記の子ども用ケータイ向けの料金プランは、端末を限定することで料金を抑えており、一般的なスマホにSIMカードを差し替えて使うといったことはできません。

小学校高学年から、スマホ所有率の割合が高まる。最強こどもプログラムが強みを発揮するのも、こうした年齢からだ

初めてスマホを持つユーザーを対象にした料金プランなどは利用できますが、子ども用ケータイ向けのプランと比較すると、料金は跳ね上がります。例えばドコモが15歳以下の向けのユーザーに用意している「U15はじめてスマホプラン」は、「dカードお支払割」を適用しても1628円。データ容量は5GBでRakuten最強プランの1段階目より多く使うことができるものの、金額自体は上がってしまいます。

ドコモのU15はじめてスマホプランは、15歳以下が対象。料金は5GBで1628円だが、1年目は1078円まで下がる。3GBを超えなければ、フィルタリング込みでも楽天モバイルの最強こどもプランの方が安い

こうした点を踏まえると、最強こどもプログラムはスマホの利用が増える、小学校高学年に向けた料金プランと言えそうです。他社の場合、スマホになるともう少し対象年齢が上がってしまい、データ容量が増える代わりに、料金も高くなる傾向があります。最強こどもプログラムは、この穴を埋めるような料金プランになるでしょう。逆に、子ども用ケータイや見守りGPS端末を持つことが多い小学校低学年向けの料金プランとしては、必ずしも“最強”とは言えません。

子どもの使い過ぎには要注意、使い勝手の改善も必要か

小学生に向けたスマホの料金としては割安な最強こどもプログラムですが、Rakuten最強プランをベースにしているだけに、やや機能的に物足りない部分もあります。保護者側が特に注意しなければならないのが、子どもがデータ通信を使いすぎること。最強こどもプログラムは、1段階目のポイント還元を厚くしているため、3GBを超えると料金が一気に上がってしまうからです。

3GB超20GBまでと、20GB超の無制限に関しては、いずれも110ポイントの還元にとどまっています。3GBを超えると料金も1958円になり、先に挙げたドコモのU15はじめてスマホプランを上回ってしまいます。料金の安さを売りにしていた楽天モバイルですが、特定の層に対してはその優位性を発揮しきれていないことが分かります。

最強こどもプログラムは、3GBを超えるとやや割高になる。容量によっては他社の方がお得なことも

また、楽天モバイルには、データ使用量の上限を設定し、料金を抑えるような仕組みがありません。自分ならまだしも、子どもが使うスマホのデータ使用量を管理するのはかなりハードルが高いと言えるでしょう。ストッパーを設けられないため、日々データ使用量をチェックしていかなければならず、少々面倒。Rakuten最強プランをベースにしているためか、子ども利用の実態と乖離している部分があるようにも感じます。

あくまで簡易的な対策にはなりますが、Androidの場合、毎月のデータ容量に上限を設けることができます。これを使えば、より簡単にデータ使用量を抑えられます。ただし、データ量はあくまで端末側で測定しているため、楽天モバイル側の数値とはズレが生じる可能性はあります。また、子どもにデータ使用量制限の設定を変更されてしまうこともあります。そもそもiPhoneには同様の機能がないので、保護者側が取れる手は限られています。

Androidはデータ使用量に上限を設けて、通信を止めてしまうことが可能。ただし、集計がキャリア側と異なることもあるため、注意が必要だ

実質価格を500円台まで抑えてきたのは魅力的な一方で、子ども向けをうたうのであれば、それに合わせた機能も必要になってくるのではないでしょうか。他社と同様フィルタリングを無料にしたり、データ使用量に上限を設けられるようにしたりと、できることはほかにもあるはずです。金額だけではない、“最強”の使い勝手を実現してくれることにも期待したいところです。

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