[社説]ガザの休戦交渉 合意へ国際圧力強めよ

 交渉の重要な局面である。国際社会が一致して後押しし、なんとしても休戦を実現させなければならない。

 イスラム組織ハマスが、パレスチナ自治区ガザの戦闘休止と人質解放を巡る間接交渉で仲介国が示した3段階の休戦案を受け入れると表明した。

 第1段階でハマスとイスラエルの双方が軍事作戦を停止し人質を交換する。第2段階でイスラエル軍が撤収し、ハマスが男性兵士らを解放。第3段階で国連などの監視下でガザ再建を進めるなどと定めている。

 しかし、戦闘終結の定義について提示していた「持続可能な平穏の回復」が、「軍事・敵対活動の恒久的停止」とされるなど内容が異なるとしてイスラエル側は拒否。ガザ最南部のラファ東部での地上作戦を一部強行した。

 ラファには約120万人のパレスチナ人が避難し、全面的な侵攻になればさらに多くの犠牲者が出る。互いの妥協点を見つけ、休戦交渉を前に進める必要がある。

 ガザを巡っては昨年10月に戦闘が始まり7カ月が過ぎた。ガザ側の死者は3万4千人を超えている。戦闘はハマスの奇襲がきっかけとはいえ、これほどの民間人の命を奪ったイスラエル側の過剰な攻撃も批判を免れない。

 交渉は長い間、膠(こう)着(ちゃく)状態だった。ハマスの休戦案受け入れは一筋の光であり、この機会を逃してはならない。

 イスラエルとハマスは政治的な駆け引きをやめ、再開した交渉に真(しん)摯(し)に向き合うべきだ。仲介国のエジプトやカタールも合意に向け、これまで以上に力を尽くしてほしい。

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 米国の対応も鍵を握る。米国の報道機関は、バイデン米政権がイスラエルに対し、武器2種の提供を遅らせていると報じた。

 ラファへの全面侵攻に反対した措置という。事態が切迫していることを考えれば、全面的な武器提供の停止にも踏み切るべきだろう。

 米国の大学では、イスラエルの軍需に関わる企業への投資の見直しを求める学生たちのデモが相次いで起きている。批判の矛先はイスラエルを擁護し続けるバイデン政権にも向けられている。

 約50カ国を対象にした2024年版調査「民主主義認識指数」によると、イスラム教徒の多い国で米国の評価が大幅に低下していることが明らかになった。ガザで多くのイスラム教徒が犠牲になっていることが背景にある。

 米国はガザの惨状に、重い責任を負っていると認識しなければならない。

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 イスラエルはラファ検問所の掌握を表明した。ハマスに対する「限定的な地上作戦」とするが、人道支援の物資搬入や住民の退避に影響が出ている。

 戦闘の長期化により、ガザでは深刻な栄養不足や感染症も流行している。軍はラファの地上作戦に当たり住民10万人に退避を要求したが、行く場所はほとんど残されていない状況だ。

 もはや一刻の猶予もない。人道危機の解消へ国際社会が力を合わせるべきだ。

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