ロピアは埼玉の上場スーパー「スーパーバリュー」買収で“変身”した(有森隆)

転機だったスーパーバリューの買収(C)日刊ゲンダイ

【企業深層研究】ロピア(下)

首都圏でディスカウントスーパーといえば、オーケー(横浜市)とロピア(川崎市)が双璧だ、といわれている。

東京都、神奈川県の郊外部を中心に店舗展開しているため、2023年10月にオーケーが銀座に出店して話題をさらうまでは、確かにマスコミなどでの出番が少なかった。オーケーの銀座の成功に刺激され、ロピアも首都圏進出に本腰を入れる。

ロピアは持ち株会社OICグループ(旧・ロピア・ホールディングス、川崎市)が運営する。持ち株会社が果敢にM&Aを仕掛けていく。

最大の転機となったのは22年、上場会社を買収したことだ。埼玉県などでスーパーとホームセンターを運営するスーパーバリュー(埼玉県上尾市、当時東証マザーズ、現東証スタンダード上場)を子会社に組み入れたことだ。

22年2月、スーパーバリューの主要株主から株式を譲渡された。当初、33.17%を取得し、第2位の株主となった。同8月、第三者割当増資で51.62%を支配し、親会社となった。

さらに23年2月、再び第三者割当増資を引き受け、保有比率を66.61%に高めた。既存店を改修し、調達する商品も一部見直すなどし、競争力を高めたはずなのに、成果ははかばかしいものではなかった。

スーパーバリューの24年2月期の売上高は前期比3.3%増の700億円と少し回復するが、最終損益は22億円の赤字となった。23年2月期の19億円の赤字から拡大した。

買収したスーパーバリューが上場会社だから、親会社、OICグループも財務内容を開示している。資本金1000万円で創業家の資産管理会社が100%保有。23年2月期の売上高は子会社からの店舗管理収入や手数料収入を中心に104億円、営業利益25億円、純利益26億円。長期借入金は61億円あるが自己資本が79億円、自己資本比率は26.4%と健全経営である。

■道場六三郎事務所、アキダイを買収

21年12月、テレビでお馴染みの“和の鉄人”こと道場六三郎氏の会社、和席・懐石料理、道場六三郎事務所を買収した。

23年3月、東京の青果物主力のローカルチェーン、アキダイを買収している。社長の秋葉弘道氏は毎日のようにテレビの報道番組で、その日に安い青果物を紹介してくれる人として有名で、アキダイに「日本一有名な八百屋」という名前がついた。

ロピアグループが傘下に組み入れたスーパーは、売り場を「エブリデーロープライス(EDLP)」仕様に転換して再生に取り組んでいる。

勤め帰りの主婦がEDLP形式の店で買い物をするのが都市圏の日常風景になった感がある。

異常な円安の進行で、皆物値上がりしている。消費者の買い控え志向が強まり、チャンス到来だ。ロピアは出店を加速させる。近畿、中部、東北、九州で猛烈な出店攻勢をかけている。まず、大手とタッグを組んで進出するケースがある。

ヨドバシカメラに相乗りして出店したのは、21年の京都ヨドバシ店が最初だ。甲府、福岡、仙台のヨドバシの出店に伴いロピアも店舗を構えた。

25年2月期は前期比3割増の20店を出す。3月に沖縄県那覇市に初出店を果たし、今年3月末時点の店舗数は、海外も含めて90店となった。

イトーヨーカ堂の店舗の買収を追い風にして、31年の目標を、「グループ100社、年商2兆円」とした。以前は「年商1兆円が目標」としていたのだから、売り上げ目標を倍増させたことになる。

ヨーカ堂の7店舗はどこと組んで大型商業施設に変身させるのか。快調にひた走るロピアグループにとって、初めての試練の時だ、としておく。

(有森隆/経済ジャーナリスト)

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