高齢になると医療費の窓口負担が段階的に2割→1割に下がるので、年間の医療費は減りますか? 病院にはどのくらいかかるのでしょうか?

高齢世帯のほうが医療費は高い傾向にある

高齢者の医療費の窓口負担割合は、69歳までが3割、70~74歳までは原則2割、75歳以上は原則1割です。つまり、10割負担額が1万円必要な治療を受けた場合、69歳までは窓口負担額が3000円かかるのに対して、70~74歳は2000円、75歳以上は1000円で済み、1回当たりの会計額が少なくなります。

それでは、窓口負担割合が低くなる70歳以降では、69歳までと比べて、年間の医療費は減るのでしょうか。

総務省「2023年 家計調査」の結果によると、世帯主の年齢別で保健医療費の平均月額は、図表1のような結果になっています。

【図表1】

総務省「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 2023年」より筆者作成

図表1の結果からは、若い世代の世帯と比べて、高齢者世帯のほうが多くの医療費がかかる傾向が見て取れます。

また、厚生労働省「医療保険に関する基礎資料 ~令和3年度の医療費等の状況~」によると、高齢者の年齢階級別の1人当たり年間医療費と、自己負担額は図表2のとおりです。

【図表2】

厚生労働省「医療保険に関する基礎資料 ~令和3年度の医療費等の状況~」より筆者作成

高齢になるほど1人当たり医療費は高い傾向にあり、自己負担額も微増傾向です。しかし、医療費に対する自己負担額の割合は、年齢とともに下がっています。

年齢が上がるにつれて必要な年間医療費自体は増加する可能性があるものの、窓口負担の割合が下がることにより、受けた医療回数や内容に対する費用の負担感は下がることが推測されます。

高齢者の1人当たり外来受診回数は年間20~30回以上

厚生労働省「第154回 社会保障審議会医療保険部会 基礎資料」に掲載された資料によると、1人当たりの年間外来受診回数は、64歳まではいずれの年齢階級でも20回未満なのに対して、60代後半では約21回、70代前半は約25回、75歳以上ではいずれも30回を超えています。

年間の受診回数が約6回である20代前半と比べると、75歳以上では5倍もの回数が外来にかかっている計算です。1回当たりの会計負担は少なくても、回数を重ねることにより、結果的には若い世代と比較して高齢世代のほうが医療費は多くかかる結果につながっています。

高齢になると介護費用の負担も増える

高齢になると、医療費に加えて介護費用がかかることも、念頭に置いておく必要があります。

公益財団法人 生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」では、リフォームや介護用ベッドの購入などにかかる一時的な費用が月平均8万3000円という結果も出ています。年間にすると、99万6000円にもなります。

介護保険を利用できれば自己負担額をおさえられるとはいえ、利用額には上限があるため、ある程度の支出は想定しておきましょう。

高齢になると増加する医療や介護の費用負担に備えよう

後期高齢者になると、年齢に応じて医療費の窓口負担割合が2割、1割と下がっていきます。そのため、年間に必要な医療費の金額も下がるかというと、一概にそうとは言えません。

高齢になれば傷病のリスクも上がり、病院を受診する機会も増加します。支払いを重ねることで、若い世代と比べると多くの医療費を費やさなければならない可能性が高いのです。

加えて、介護にかかる費用も頭に置いておく必要があります。医療や介護の費用負担に備えて、しっかりと資金を用意しておきましょう。

出典

内閣府 後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?
総務省 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 2023年 表番号3-2
厚生労働省 医療保険に関する基礎資料 ~令和3年度の医療費等の状況~
厚生労働省 第154回社会保障審議会医療保険部会 基礎資料
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料
公益財団法人 生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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