松山英樹のパッティングの進化 練習中の“レーザー”は何のため?

レーザーを早藤キャディの足に当ててアドレスの向きチェック(撮影/服部謙二郎)

◇米国男子◇ウェルズファーゴ選手権 事前(8日)◇クエイルホロークラブ(ノースカロライナ州)◇7558yd(パー71)

2024年の松山英樹が前半戦で優勝1回、トップ10が2回の好成績を残せた要因はいくつか考えられる。体の状態が良くなって練習をしっかりできていること。トレーニングができるようになり、ヘッドスピードが戻ってショットも復調したことが挙がるだろう。チップインの回数も多く、アプローチに磨きがかかっていることも考えられる。

だが、それ以上に大きいのはパッティングの進化ではないか。優勝した「ジェネシス招待」では、ストロークゲインドパッティング(パットのスコア貢献度)はフィールド3位。シーズンでは全体151位(-0.395)と低調だが、パッティングでスコアをまとめる日も増えている。

ストロークが少しタップ式っぽくなった(撮影/服部謙二郎)

復調は黒宮幹仁コーチとの取り組みが実を結んできたからに他ならない。練習で機材を使ってボールの転がりのデータを取り、ストロークを解析するなど試行錯誤してウィークポイントを克服してきた。スタンスを狭くしたり、前傾を浅くしたり、見た目でも分かるほどストロークは変化している。

今週、クエイルホローのパッティンググリーンで球を打つ松山のストロークはまた違った。以前はスーッと流れるようにフォローを出して打っていたのが、インパクトでパチンと打って止めるタップ式のようなイメージになっていたのだ。タイガー・ウッズのストロークをほうふつとさせる打ち方。実際にどんな意図がその背景にあるのかは分からないが、さらなる進化を求めた上での取り組みに違いない。

意図のない一打はほとんどなかった(撮影/服部謙二郎)

プロアマ戦前の練習グリーンでも、試行錯誤が垣間見られた。まずは昨年から続けているシャフトにレーザーを取り付けた練習。これにはシャフトをねじらないように動かす矯正の意味がある。シャフトが真っすぐ動けば、レーザー光線も真っすぐ動く仕組みだ。

次にエイム(向き)のチェック。松山がアドレスした後、黒宮コーチはフェース面にレーザーを取り付け、光線が正しくターゲットを指しているかを確認していた。アドレス時点でフェースが正しく目標を向けていないと、インパクトでもフェースを狙った方向に向けられないからだ。

長年使うペルツという練習器具はパット練習のおなじみ(撮影/服部謙二郎)

一連のチェックが終わった後に、次は早藤将太キャディがセットした練習器具(ペルツ)で球を繰り返し打つ。ヘッドの幅にティが刺さっていて、ストロークが正しい軌道から極端に外れると、ティに当たってしまう。また、打ち出したボールの方向がズレると、すぐに小さな球体の障害物に当たる。軌道とフェース向き、そして出球の管理を同時に行えるドリルというわけだ。時折、「ストロークの矯正になると思って」(松山)と今週投入した長いスラントネックパターに持ち替えて球を打つシーンも見られた。フェースが開閉しやすく、ヘッドを真っすぐ動かし過ぎる悪い癖を矯正できるという。朝の練習はざっと30分ほど、一打たりとも意図のない球はないように見えた。

プロアマ戦から上がってきた松山は、パッティンググリーンに直行し、再び球を転がし始めた。その横ではマシュー・フィッツパトリック(イングランド)や、ザンダー・シャウフェレといったトップ選手たちも黙々と練習していたが、単純に球をカップに入れる練習をしている選手は少なく、意図のあるドリルをやっている選手がほとんど。「成長するのをあきらめた瞬間にそのエリートフィールドから蹴落とされる」。そんな無言のプレッシャーがひしひしと伝わってきた。5月とは思えない強い日差しが照り付ける中、松山は汗をぬぐいながらひたすら球を転がし続けた。(ノースカロライナ州シャーロット/服部謙二郎)

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