【解説】中国・習近平国家主席がセルビア到着 フランスで夫人と“チャーム外交”も 「異例の歓迎」の狙いは

7日、中国の習近平国家主席がフランス訪問を終え、セルビアに到着した。
中国は、ヨーロッパでの影響力を拡大したい考えで、フランス訪問では習主席の「チャーム外交」が注目された。
また、マクロン大統領との首脳会談では良好な関係がアピールされた。

ヨーロッパ訪問中の習主席

7日、フランスの訪問を終えた中国の習主席は、2つ目の訪問先となるセルビアの首都・ベオグラードに到着し、ブチッチ大統領らの歓迎を受けた。

セルビアは、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」に参加する一方、EU(欧州連合)には加盟しておらず、習主席は訪問を前に、「国際情勢がどう変化しようとも、両国は友人で良きパートナーだ」などとコメントした。

中国としては、アメリカによる中国包囲網を分断し、ヨーロッパでの影響力を拡大させたい考えで、習主席はこのあと、同じく一帯一路に参加しているハンガリーを訪れる予定だ。

夫人単独での“夫人外交”も活発

5年ぶりにヨーロッパ訪問中の中国の習主席は、フランスでは「異例の歓迎」も受けたというが、双方の狙いは何なのだろうか。

BBCはフランス訪問での習主席の様子を、チャーム・オフェンシブ=魅力攻勢、つまり「政治家が相手の心をつかむために意図的に親切に接すること」と表現しており、さまざまな場面でマクロン大統領と習主席の良い関係がアピールされた。

6日、大統領官邸であるパリ中心部のエリゼ宮で首脳会談を行ったあと、7日にマクロン大統領は、自分が子ども時代におばあさんと過ごしたピレネー山脈の田舎の村に、習主席と彭麗媛夫人を招待した。

ツールドフランスでも名物となっている「トゥールマレー」という峠に誘ったが、頂上はこの季節に異例ともいえる雨や雪で風も強く、残念ながら美しい景色はまったく見えなかった。
ただ、陽気な村人が伝統舞踊で出迎え、レストランの中で名産品のハムやブルーベリーパイなどでもてなした。

そして、今回の訪問に同行している彭麗媛夫人も、チーズやワインを堪能する様子がとらえられている。

フランスでは、このような家族ぐるみでの歓迎を「異例の歓迎」とも報じられているが、訪問中は、彭麗媛夫人の単独での“夫人外交”も活発だった。

6日、彭麗媛夫人は、マクロン大統領夫人のブリジットさんとパリのオルセー美術館を訪問し、モネやルノワールなどフランスの印象派の絵画などを楽しみ、中国語を学んでいる学生らとも交流。
そして、パリにあるユネスコ本部なども訪問した。

彭麗媛夫人は1987年に習主席と結婚したが、当時は軍所属の国民的な歌手で、かつては習主席より中国内では有名な人物だった。

大舞台に慣れており、今回のフランス訪問でもプレゼンの手腕が生かされ、好意的にとらえられている。

EU内にくさびを打つ

まさに夫人も含めた「魅力攻勢」を展開しているが、中国がここまでフランスに接近する目的は何なのだろうか。

EUはアメリカに続いて、中国への態度を硬化させていて、中国への経済や技術面での依存を減らす政策に傾きつつあるが、EU内も一枚岩ではなく、フランスやドイツとでは温度差がある。

そのため習主席は、独自の路線をとるフランスとの関係を良好にすることで、EU内にくさびを打ちたい意向がある。

一方で、マクロン大統領も経済を活性化させたいとの狙いがあり、中国との結びつきを模索しており、双方の利益が一致した形だ。

首脳会談でも、2人の良好な関係がアピールされた。

習主席とマクロン大統領は一緒にフランスの名産品を堪能したが、習主席はフランス産のチーズやワインなどの輸入を増やすと表明し、「魅力的なお土産」をマクロン大統領に贈ることで、今後の関係を強化していきたい狙いだ。

フランスが、アメリカ、EUと距離を置いて、“親中国”になるという可能性もあるのだろうか。

ただ、電気自動車の分野などで、中国の生産過剰というのが問題になっていて話題になっている。

今回このような会談にはなったが、個別の貿易の問題などを見ていくと、さまざまな温度差がこれから浮上してくるものとも思われる。

マクロン大統領はパリオリンピックも控えていて、世界中の皆さんをもてなす立場でもあり、友好関係を見せようとしていると思われれる。
また、2021年にドイツのメルケル首相が退任してから、マクロン大統領がEUのリーダーになり、そのリーダー格として外交策に一生懸命取り組んでいる。

フランスは、ウクライナ戦争にフランスも派遣しかねないという強固な姿勢を見せている一方で、そのロシアの後ろ盾となっている中国を引きつけており、どういう狙いなのかは最後まで見てみないとわからないが、何かいい方向に利用してほしい。
(「イット!」 5月8日放送より)

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