夏はかき氷、冬は高級アイス。あなたの好み、季節で変わる?一番買っていたのはなんと70代!

5月9日はアイスクリームの日。

売れ行き好調なアイス市場を細かく分析すると、夏にダントツで強者となる「かき氷」に加え、近年高まる冬の「高級品」など面白い季節性が見えてきた。

また、10代から70代までのアイスの購入金額を比較すると、70代がトップとなったが、それぞれの年代で好むアイスにも顕著な違いがみられた。

増加率トップは高級品

アイスの市場規模は、2023年に前年比110%の5863億円となった。(インテージ小売店パネル調査「SRI+」より)

まずは、種類別に金額前年比を見てみよう。

199円以下の単品である通常品と200円以上の単品である高級品では、高級品の伸びの方が大きくなった。通常品ではかき氷が121%、高級品ではコーンやパフェなどの高級パーソナルが147%と大きく伸長した。

高級パーソナルでは、コンビニエンスストアのオリジナル商品が人気となっており、従来型のカップ入り以外でも商品が増えたことが市場を活性化しているとみられる。

好調なアイスだが、2023年の猛暑の影響で販売が伸びたのだろうか。

猛暑影響か?かき氷夏に平均の3倍超

2023年の1カ月あたりの平均購入金額を100とした場合の、購入金額指数の月別トレンドを見てみたい。(インテージ消費者パネル調査「SCI」より)

アイス計の購入金額指数は7月に162%、8月に163%と夏に伸びている。

その傾向が顕著なのがかき氷だ。6月に165%まで伸長したのち、7月347%、8月329%と真夏には月平均の3倍を超えた。

2023年は残暑が厳しかったことから、かき氷の購入金額指数は9月も124%と月平均を超えている。かき氷には、一口サイズにカットされた氷がカップに入った商品など持ち運びしやすい商品もあり、熱中症対策としても人気となったようだ。

猛暑の影響がかき氷の人気を高め、夏のアイス市場を引き上げていると見られる。

一方、高級品の購入金額指数は8月に128%と伸びたものの、それ以上に大きかったのが12月の137%。

12月末にかけて購入が伸びる傾向にあり、年末にいつもより高級なアイスを食べるプチ贅沢需要が見られた。一年間頑張った自分へのご褒美や、家族団らんの時のデザートとして人気となっていると考えられる。

12月の高級アイスの習慣は昔から?

猛暑だけではなく高級アイスのプチ贅沢需要も2023年のアイス市場を押し上げたことが分かった。

それでは、12月に高級品を食べる習慣は昔からあったのだろうか。

10年前の2014年の購入金額指数の月別トレンドと比較したい。

2014年時点では、8月の指数が159%と最大で12月の122%を上回っていた。以前は高級品も夏場が最需要期であったことが分かる。

冬場に高級アイスを食べるトレンドは近年強まってきているようだ。

寒い冬にこたつで暖まりつつ、アイスを食べることを贅沢と捉えるようになってきていると推察される。夏場に体を冷やそうと食べるかき氷とは異なり、高級品にはそこまで体を冷やさないクリーム系の商品が多いことも冬場に人気となっている要因ではないだろうか。

また、新型コロナの外出自粛を背景として、家でいつもよりちょっといいものを食べるプチ贅沢を楽しむ動きが見られた。2023年5月には新型コロナの5類移行があり、外出増が見られたものの、コロナ前と比べると依然として家で過ごす時間は多い。コロナをきっかけに注目されたプチ贅沢の1つの方法として、高級アイスを食べることが定着してきているのだろう。

シニアで活発なアイス消費

最後に、アイス市場を支えているのは、どういった年代なのかを確認したい。購入者の嗜好性をみるため、代理購買を除いた自分用または共用での購買に絞って、アイスの種類別・購入金額を年代ごとに比較した。

アイス計の購入金額・平均比を年代別にみると、40~70代はおよそ1.1倍と平均を上回っているのに対し、10・20代は0.63倍、30代は0.95倍と平均を下回った。夫や妻、子供と一緒に食べるなど共用での購買が多いことも40代以上の購入金額を伸ばしていると見て取れる。

購入金額が最も大きかった70代では、かき氷の購入金額・平均比が1.37倍と60代以下と比べて大きい。年代が上がるにつれてかき氷の購入金額が大きくなることから、加齢とともに体温調整機能が弱まるシニア層で、体を冷やすためのかき氷が重宝しているのかもしれない。

なじみのあるコーン・モナカやコスパのよいマルチの購入金額が大きい一方で、高級品の購入金額が小さいのも70代の特徴として挙げられる。

猛暑×プチ贅沢需要が市場の追い風に

猛暑とプチ贅沢需要で活況となったアイス市場。年代ごとの嗜好性の違いも見られた。猛暑のかき氷需要はシニア層にけん引される一方で、プチ贅沢需要は若年層を含む幅広い年代を取り込んでいるようだ。

気象庁から、2024年も猛暑となる見通しが発表された。背景には地球温暖化があることから、気温の上昇が続いていくのだろうか。

5類移行後に外出増の動きも続いている。

気温だけではなく、生活様式の変化などにも影響されるアイスの消費が、今後どのように変化していくのかを注目していきたい。

(執筆:インテージ市場アナリスト・木地利光)

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